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第20話 アイツは何度でも繰り返す

 黎人は手にしたMPhoneで動画撮影を始めた。まず、馬小屋で自撮り動画を撮影した。

  

「どうも!勇者ナイリムでぇええええええす!」

「わたくし、わたしが3年前の魔族を倒した最強の勇者でぇえええええす!」

「でも、どうしてでしょうね。だれもわたくしの言うことを信じてくれませんでした」

「それで、いまはこんなところに閉じ込められております」

「これが最強の勇者に対する仕打ちか?おれはお前たちを許さない!」

 

 1本目の動画はこれで終わった。魔族を倒した者は表向き不明となっていた。3年前は黎人以外にも自分が倒したと主張する者はいたものの、同様に相手にされなかった。彼の風貌と撮影場所の汚さから注目を集めたが、すぐにアンチコメントばかりになった。


「汚え部屋だな」

「チビでブサイク。こんなのが勇者ですか?」

「本当に勇者なの?」

「魔族もこいつの醜悪さに逃げ出したのかもなwwwww」

「きたない」「よわそう」

「この人知ってるよ。セナン王国に召喚された勇者でしょ?ステータス全部0でスキル0の」

「よわい(確信)」

「そんなのが魔族倒せるわけないじゃん。馬鹿にしてんだろwwwwwww」

「どうみても弱そう。そのへんのゴブリン見て小便漏らしてそう」


 頭に来た黎人は批判のコメントを一掃し、称賛と皮肉交じりのコメントだけが残った。ごく一部の人たちは彼の言い分を信じ、同情していた。


 しかし、自分の言い分が肯定されて当然だと思っていた黎人はファンの存在に見向きもせず、アンチに対する怒りでいっぱいだった。

「どうして誰も信じないんだ!」

「おれが魔族を倒したのに!こいつらは見る目がない!終わってる!」


 次は馬小屋の外で集落の中を歩きながら動画を撮影した。


「どうも!(以下略)」

「わたしがね、魔族なんて倒せるわけがないと、そういうコメントがあったんですけどね。全て削除してやりました」

「アンチは無視してコメント削除。わたしについてこれる人だけ見ればいいんです。わたしには倒せないと、そうおっしゃるのであれば、あなたがたが魔族を倒してみろと、わたしはそう言いたい」


 2つ目の動画が上がった。もちろんコメント欄は荒れた。そして都合の悪いコメントは全て粛清された。


「アンチ無視できてなくて草」

「こいつ、遠回しな批判や皮肉は消さないんだな。理解できないんだな」

「応援してるようなコメントも消してないか?文章が読めてない?」

「こいつ、うちの村にいるよ。最近昼間から外うろついて撮影してて迷惑」


 外部の掲示板では彼に関するスレッドが立ち上がり盛り上がりを見せ始めていた。一方、黎人は肯定的なコメントをしてくれた女性と思われるアカウントにダイレクトメッセージを送り始めたのだった。


「こいつからなんかDM来たんだけど……」

「え?何?」

「会えませんか?って」

「出会い厨かよ。お前女?」

「違うで。アイコンは女の人のにしてたけど」

「なんか擁護するようなコメントでもした?」

「誰も信用してくれないなんて酷いですねって書いただけだぞ」


 他にもDMを受けたと話す人達が増え始め、中には会話をしているうちに性的な発言まで受けたものまでいた。そして彼の動画は不自然なネカマによる持ち上げコメントが増え始めた。


 黎人は次々と動画を上げていくが、よくわからない集落の背景を背にいつも同じようなことを言っているだけだった。再生数が減っていく一方、増えていくアンチコメントに嫌気がさしていた。しかし女性とのセクハラDMは楽しんでいた。ネットリテラシーなんてない現地民の女性は彼でも簡単に騙すことができた。


 近くの村に住む女性にターゲットを絞った黎人は彼女と会うことにした。もちろん相手の女性にこちらへ来てもらう形で。


「あなたが勇者様ですか?」


「そそそ、そうだよ。惚れなおしちゃった?」


「本当に魔族を倒したんですか?そうは見えませんが」


「うるさい!お前までおれを疑うのか!」


 黎人はか細い腕で女性の手を掴んで引いた。


「なにするの!」


 しかし、それはいとも簡単に振り払われた。


「おまえはなにしにきたんじゃ!」


「わたし帰ります!」


 黎人に会いにきた女性は走って帰っていった。


「なんだあいつは!ぜったいに許さない!」


 その後、その女性は彼とのメッセージのやり取りを掲示板に晒した。すぐさま性別、年齢、住んでいる場所を聞いてきた。そのあとはファンになっちゃった?とか惚れた?なんて言ってた。調子をあわせていたら、経験はあるの?下着の色は?胸の大きさは?なんて聞いてきていた。掲示板は盛り上がった。他の女性やネカマも彼から同様の被害にあっていることがわかった。


 黎人の動画を上げるペースが落ちてきていた。飽きてきてしまったのだろうか。数少ないファンは動画を待ち望んでいたが、彼は女性ファンとのDMとアンチの相手で必死だったのだ。

 

 そしてその数少ないファンの中にアズーロで呼び出された勇者ショウヘイの姿もあった。

 

「こいつ、おもろいな!」

「こんなんでも勇者できるんか?ちょっと応援したろ!」


* * *


 黎人についての掲示板が盛り上がる中、こんなニュースが煇のもとへと流れてきた。

 

『ゼロの勇者、自分が魔族を倒したと動画で主張』


「あいつ、こんなことをやっているのか……」


 動画を見てみるが、怪しい様子はない。いつもの通りの黎人がそこに映っていた。


「この感じだと白だな。しかしそうなると一体誰が……」


 煇のMPhoneが鳴る。大統領からだ。


「もしもし」


「わたしだ。ゼロの勇者の居場所はわかったかな?」


「ああ、ヤツは白だ」


「そうか、それはなにより。となると攫った犯人は本物の魔族かもしれないな」


「手掛かりがなさすぎるな。一体どうすれば」


「ちょうどいい。新しく召喚された勇者が君の話を聞きたいらしい。もしかしたら協力してくれるかもよ?」


 そう大統領から言われた彼は、その新しい勇者に会うことを決めたのだった。

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