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第10話 馬鹿とハサミは使いよう

 セリアは王都を脱出し、合流地点――アズーロ王国との関所で煇を待っていた。


「あっ!」

 近づいてくる煇の姿を見てセリアは声を上げた。


「あれ?」

 あいつの姿が見えない。どうしたんだろうか。


「悪い。ヘマしてあいつを見失っちまった」

 セリアは複雑な心境だ。もう呪いはないから気にかける必要なんてないが、数日間とはいえ苦楽、いや一方的に苦を味わった仲間であるのには違いない。


「あの魔族だらけの中で大丈夫なんでしょうか?」

「今はあいつの悪運の良さを信じるしかないな」


 あの敵の数では2人で到底対抗できそうにない。煇たちはイロイ共和国に向かい、仲間を集めることにした。


 少し遠回りになるが、アズーロ王国を経由しイロイ共和国へ1日かけて到着した。

 街中は何か騒がしい。どうやら魔族復活の話がもう広まっているようだ。


「やはり情報が早いな。そうなると……」

 煇が奴隷商に渡した手紙はイロイ宛のものだった。そこには数日以内に魔族が復活することや、王国が他国へ侵略する可能性について書かれていた。もちろん今の事態を見越して戦力を集めておくようにも書いてあった。


「光の勇者、戻ってきたか。でもその感じは復活してしまったんだな?」

 初老の勇者が煇に話しかけた。


「そうです。あとその呼び方はやめてください。頭おかしい人だと思われるので」

「でもお前さんの能力を誰も知らんし、そう呼ぶしかないじゃねえか」

「今はその話はいいです。戦力はどのくらい用意できそうですか?」

「どうだろうな〜。こっちの方でも魔族が出現してて、そこに人を取られてんだ。その魔族の生き残りが何か仕込んでたんじゃねえか?」

「それはどうだろうな。そこまで手が回っていたとは思えない」

「そんなわけで、今集められるのはこんぐらいだ」


 男は両手を開いてアピールした。


「勇者10人か、相手の底が見えないが、やってみるしかないだろう」

「呼んでも全員来てくれるかは分からないけどな〜」

「コウジさんは来てくれますよね?」

「しょうがねえな〜」


 セリアは2人の会話をなんだか和やかに見守っていた。

 3人で残りの9人の勇者の元を回り、なんとか7人協力してもらえることになった。


* * *


 一方、黎人はというと、瓦礫の中で気を失っていた。


「なんかこの辺臭いっすね」

 小さい魔族が呟く。


「オレニハナニモニオワナイ」

 デカい魔族はそう返し、瓦礫を持ち上げた。


「ナンダコイツ?ナカマカ?」

「こいつは勇者ですよ。ズマルが言ってたじゃないですか」

「ソウカ、コロシテイイ?」

「ダメですよ、ムーウ様に引き渡しましょう」


 2匹の魔族は黎人を引きずりあげ、ムーウと呼ばれる魔族の元へ連れて行った。


「ムーウ様、ズマルが言っていた勇者を見つけました」

 ムーウと呼ばれた魔族が暗幕の中から姿を現した。


「これが例の無能勇者か」

 ムーウは長い爪で黎人の顎をくいっと持ち上げた。

 黎人の4、5倍はありそうな長身で、背中には3対の羽が生えている。意識を取り戻した黎人はあまりの恐ろしさに目を瞑ってしまった。


「ステータスが全部0?面白い。どこまでやれるか見てみようか」

 ムーウは自分の体から何かドス黒い物体を取り出し、黎人の体に突っ込んだ。


「いい感じだ。見込んだ通り、彼の欲望と憎悪は素晴らしい」

 黎人の顔は青ざめていき、生気がなくなったように見えた。


「このままズマルのところへ連れて行け。面白いものが観れると思うぞ」

「承知いたしました」


 2匹は少し重くなった勇者を担いで玉座の間へ連れて行った。


「オデ……」

「お前何か言ったか?」

 大きい方の魔族は首を横に振った。


「てことはこいつか。喋れないって話だったが」

「ココドコ……アノコドコ……」

 何かぶつぶつ言っているみたいだったが気にせず2匹は進んでいった。


 玉座の間には、玉座に座るズマルと部屋の片隅で縮こまっている王が居た。


「なんだ?勇者を見つけたのか?」

「ああ、見つけたぜ。ズマル様」


 小さい方の魔族は、黎人の体を正し、まっすぐ立たせた。


「コイツ、ワルイヤツ、オデノコトイジメタ、ユルサナイ」

「なんだこいつ!喋れるようになったのか?」

「オラヲアンナトコトジコメタ」「ワルイコトシテナイノニ」「オンナノコスグコナクナッタ」「オマエノセイ」


 羽虫のように騒ぐ黎人にズマルが怒りを露わにする。


「訳のわからないことを言うな!全部お前のせいだろ!無能なのが悪い!」

「こいつはもう用済みだ!殺してしまえ!」


 ズマルは小虫を殺すかの如く、火炎魔法を黎人に放った。しかしドス黒い何かによって完全に防がれてしまった。


「ステータス0なのに!なぜこれで死なない!まさか!」

 そう叫んだ瞬間、黎人の体が膨れ上がった。ズマルは必死に魔法を放つもほとんど効いていない。


「オマエユルサナイ」

 黎人はその大きくなった拳でズマルをペシャンコにしてやった。


「ひえっ」

 王は怯えている。側にいた従者もろとも黎人は踏み潰した。

 観ていた魔族2匹は拍手をする。


「いいものが観れましたね」

 大きい魔族も腕を組んで頷き、満足している。


「勇者様、これで終わりではないですよね」

 黎人は後ろを振り返り、2匹に主張する。

「オデハワルクナイ」「ゼンブアイツラガワルイ」「ホカノヤツモユルサナイ」「ツブス」


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