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4-2 元凶

 焚火の元に戻ればセフィが炭の上に鍋を乗せて湯を沸かしているところだった。

 先ほど割った焼いた芋を貰ってかじりながらも俺もそれを囲んだ。芋は普通に食べられるし、うまい? かもしれない?


「そういえば、どこに向かうんですか?」

「ケインは話してなかったのか」


 質問に対し質問で返せば、目を伏せて黙ってしまった。

 今のは完全に俺が悪いと、セフィの反応を見てから悟った。口に出す前に気づかなければならないだろうに。


「……死の砂漠へ向かうつもりだった」

「砂漠の地下都市、ですか?」


 やはり『都市』なのか。しかも地下?

 俺の反応が不思議だったのかセフィはゆっくりと首を傾げた。


「どうかしましたか?」

「地下?」

「あ」


 失言に気づいたという様子でセフィは口元を押さえた。

 それは知られてはまずいこと、なのだろうか?


「詳細は、行けばわかるので、説明は、ごめんなさい」

「ああ」

「あの、大変言いにくいのですが……」


 珍しく動揺した様子を見せてセフィは自分の手を握り締めて続けた。


「私、故郷を出たことなかったので」

「ああ」

「その、無事にたどり着けるかどうか」


 駄目だろう! それは本当に!

 俯くしかない。もう何も言えない。

 出鼻をくじかれるとはこういうことか。


「……多分、何とかできそうな、気はします」


 信憑性がない。

 絶望的だ。

 一体どうするのが正解なんだ?


「砂漠の民の故郷がどうなっているのか確認したいとケインは言っていた。本当に滅んだのか、家族はどうなったのか。もう一人の妹のことも確かめたいと」

「……あの時、〈虫〉が扉から解放されて出てきて、それで、都市全体を……覆い尽くしていま、した……」

「……見ていたのか?」

「〈虫〉が封印されていた、扉を、開いたの……わ、私たち、なん、です……」


 は?


「都市の中に、突然、扉が現れた、んです。何もなかった、場所に、……それで妹、が……。私、見ていたのに、止められなく……て、だから」


 砂漠の民の故郷の中に、見慣れぬ扉が現れて、正体を知らないままに開けてしまった、と。

 しどろもどろなセフィの言葉をまとめればそういうことになるのだろう。

 同時にだからか、と納得してしまった。〈虫〉の消滅を最優先させている理由は、あれを世界に放ってしまったのを原因になってしまっているからか。


 〈虫〉の存在を知らない人間が、〈虫〉の封印された扉を開けてしまったことが果たして罪になるのだろうか。


「妹は、悪くないです……、知らなかったから。嫌な予感がしたのに、止められなかった、私の方が――」

「あれを世界に放ったのは」

「妹じゃないです! 妹だけが、悪いわけじゃない!」


 俺の言葉を止めるようにセフィはそう叫んで、大きく息を吐き、頭を押さえた。

 こんなに感情的になるとは思わなかった。

 そうやって自分の罪として抱え込んできたのか。


「セフィ」

「違う、んです、咎めも謗りも、全部、私が受けます。だから妹は――」

「その妹は、今はどこに?」

「……〈虫〉に飲まれました」


 既に亡き者ということか。

 ということは、〈虫〉が解放されたその瞬間を知っているのはセフィだけということになるのか。

 だが、このセフィも魂の半分以上は既に〈虫〉に食われている。


「レミー――妹には生まれた時から不思議な力が……ありました。……今思うと、あれは〈虫〉と戦うための……力、だったの、かも……しれません」

「不思議な力?」

「手を使わずに物を移動させたり……とか、物を一瞬で……分解させたり……とか」


 セフィの言葉がだんだん力が失せていっていることには気づいていた。そろそろ限界か。

 感情を爆発させたせいかもしれない。


「本当は、妹が、……助かるべき、……だったん、です……」

「わかった。もう休んでくれ」

「私じゃなくて、……妹が、残れば……もう少し、楽ができた、はず……なんです」


 そこまで言って、セフィはその場に倒れ伏した。

 やはり限界だったか。

 小さく寝息を立てる彼女を見下ろして、何度目かわからないため息を漏らした。


 一体どうしたらいいんだこの状態。

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