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◇神司◇熱血〜似てない娘は神殿の媛〜

砂久弥の神司仲間と云うか、神司仲間の娘の話です。

眠っ。

取り敢えず二時間ばかり寝なければならぬと思います。



☆☆☆


 女神リルーラの神司は、性格に難がある者が多い。神司と云えば神の愛し子。既に人間を超えて神の末端に名を列ねる存在でもある。人間を名乗るのは当人の希望でしか無いだろう。

 リア・リルーラの神司の中でも、特に仲が悪くて特に似通った二人の神司が存在する。

 その二人…または二柱の神司は、美しい少年の姿を持ち、毒舌を持ち、大概の神司と大概の神に嫌われると云う共通点を持つ。

 光の剣を奮い断罪の天使とも呼ばれる、蒼月の梨夜。

 月光魔法の遣い方としては異例の幻影術で、下位に属するなら神さえも惑わす幻夢の天使とも呼ばれるいばらの王子。

 月よりも闇が似合うと呼ばれる神司二人は、同族嫌悪か非常に仲が悪かった。


 彼らと対局を成す、熱血と呼ばれる神司が居る。彼はそう呼ばれると怒る。莫迦にされていると理解するからだ。

 しかし、怒れば更に愚弄される。


「莫迦にされている事くらいは判るんだね?」


 と蒼月そうげつの梨夜が嗤い。


「失礼だよ。蒼の。本当の事を口にするなんて、貴族とは思えない無礼をするものだね?ウィドマーク家では礼儀作法の教師を雇わないのかい?」


 いばらの王子ルゥイリアが、無差別攻撃をした。

 そして砂久弥以外の神司がクスリと嗤う。

 ルゥイリアは基本的に嫌われ者だが、それ以上に忌避されるのが梨夜であり、暑苦しい程の「熱血」もまた鬱陶しい。

 熱血は特に嫌厭こそされなかったが、素直で真っ直ぐな気性と情熱に満ちた気概は神司たちの苛立ちを誘う存在だった。



 そんな熱血が恋をしたの相手は、セリカの媛だった。

 媛とは何者か?それは聖女である。媛のチカラは巫覡の能力でも有るが、その存在は寧ろ神司に近い。

 巫覡は単に神の声を聞き取り人との通詞を果たすが、それは人間でしかなく、実際通訳以外の役目は無い。

 清浄なのは間違い無いが、神の声を聴く以外に何の能力も無いのだ。

 対して『媛』は魅了のチカラを有する。

 神さえも魅了して、使役するのが媛の最たるチカラだろう。

 無論、そこ迄のチカラの持ち主は滅多に見られず、大概は人を魅了し、神の愛し子と呼ばれるくらいが精々では有る。

 とは云え、媛であると云うだけで、充分に身分と生活は保障されるのが当然では有った。


 熱血が愛した娘は、微弱なチカラを持つ媛だった。

 最大最強のチカラを誇り、後に最高神の寵愛まで獲得するに至る、硝紫黎蘭花媛の信頼厚い女官でも有った。


 彼女は、セリカ皇族の血を引く媛でもあった。

 隠された血筋では有ったのだが。

 そして、秘められた血筋故に、その事件は起きて。

 熱血は媛に嫌われた。




 その筈だった。

 神司仲間たちは、熱血の失敗と落胆を、楽しく見物した。

 まさかその恋が叶う等とは誰一人考えなかった。

 しかし大方の予想を裏切り、熱血の恋は実り、二人は結婚に至り、娘を儲ける。


 その娘は最強の媛が認めるチカラを有し、直接の導きにより………大層性質の悪い、いや性格に難が有る……良くも悪くも紫蘭花媛の弟子らしき媛と成った。


 彼女に対する評価は賛否両論。ただ、どんな評価が下されようと、父親に似ていると云う者は不在である。


☆☆☆


 東国最大の国土と富を誇る、絢爛な国クハニ。その若き王に、女神リルーラを祀る大神殿に仕える媛宮が嫁いだ。

 セリカの皇族の血筋にして、神司灼熱のヒュウガの娘。太宰東是王梨燕夜の妻にして、世界最大最強の媛宮紫蘭花の愛弟子。

 如何に大国であろうとも、腰を低く持して迎えるのが当然の、尊くも重き血を引く媛宮である。


「……人が多い。」


 ズラリと臣下貴族が居並ぶ光景に、媛宮はフラリと目眩を起こした。

 侍女代わりの巫女たちが、人の欲望に満ちた俗世に酔った媛宮を支えた。


「ああ、お労しや媛宮。」

「やはり媛さまには俗世は無理ですわ!」

「聖なる媛宮に人混みを見せるなんて!」


 騒ぐ巫女の発言に、クハニの貴族たちは慌てふためく。

 何とか宥め、人を下がらせ、媛宮を奥宮の離れにと休ませた。

 因みに、後宮では無い。

 後宮に案内した途端。


「此処の空気は苦しい。」


 と、媛宮がフラリと目眩を起こし、巫女達がやはり神殿に帰ろうと騒いだからだ。

 クハニの王宮には、正妃、皇后のみが許される独立した奥宮が存在する。

 この時は前王の皇后が奥宮に座していたのだが、直ぐに移動して媛宮に明け渡された。


「何だか、目がチカチカしますわ。」


 クハニの文化は絢爛。セリカの洗練された文化とはまた違う。そこに国としての自負が介在しない訳も無かったが、媛宮が望むなら些細な事である。

 早急に調度品の入れ替えが成された。





「………今のところ、どれくらいかしら?」


 漸く落ち着いて寝椅子に横たわった媛宮が、おっとりと嗤った。

 媛宮が嫁ぐにおいて付き人として入国した神官が、女神の愛し子である媛宮に跪拝して告げた。


「財務大臣より二度ばかり。公爵が一家。侯爵が二家。他14家の貴族から、寄進のお申し出をお受け致しました。」


 その言葉に、巫女たちがさざめくように笑って、媛宮も満足そうに頷いた。


「流石、富を誇るクハニ。まだまだ搾り取れそうですわね。」


 清浄な媛宮の笑みを浮かべた唇から、その笑みに似合わない台詞が零れだす。


「流石ですわ媛宮。」

「素晴らしいですわ媛宮。」


 巫女たちが讃え、神官も感心しきりと媛を仰ぎ見る。


「お母さまを捨てた国ですもの。搾るだけ搾って、ボロボロにして差し上げますわ。」


 クスクスと。

 紫蘭花媛直伝の技術を駆使して、クハニ一国を傾けんとする媛宮が清らかに微笑んだ。




 媛宮の母親は、クハニの後宮で生を受けた。

 その母親、つまり媛の祖母はセリカの皇室から嫁した妾妃だった。セリカの正室の姫ならばともかく、彼女は側室腹でさえなく、侍女から生まれ正式に認められた姫でさえ無かった。故に妾妃の位でさえ、クハニは大盤振る舞いした積もりだったし、王に愛された妾妃を虐める正妃に遠慮は無かった。

 だが、妾妃はそれなりにセリカの皇室で愛されていたのだ。そして、娘の命を守る為に、彼女は兄王に頼った。セリカの皇室に娘を逃がした。


 その娘が、僅か乍ら媛のチカラを持っていた。セリカの紫蘭花媛に仕える事となり。

 神司ヒュウガに出逢い、恋をした。


 そう。そのセリカの皇室に匿われた娘こそ、媛宮の母親だったのだ。

 母親は小さなチカラしか持たなかったが、媛宮は違う。

 歴代最強と謳われる紫蘭花媛に次ぐチカラを有する。


 昔クハニが侮った妾妃の娘とも知らず。

 大国クハニが膝を屈し、その意向を測り気を遣い右往左往する。


 媛宮はうっすらと笑みを浮かべて心に誓う。

 それは自らを傾国と自覚する微笑だった。





 美しい媛宮の怒りを受けた国は、滅びるのが必定。

 それはお伽噺の様に、いつしか語られる出来事となる。



☆☆☆



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