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地位よりも家族がほしい

名誉は人を照らす。

でも、家族は心をあたためる。

ガンガンガンガン


 突如彼の後ろに鎧騎士の大群が現れる。

 終わった……(詰み)

 あの数ずる過ぎるよ。姉上いったい何したの?

「あの、えっと、ひ、人違いじゃないかの?」

 いや絶対当人じゃん。

 この動揺がその証拠じゃん。

「貴様45年の付き合いの相手にそんな言い分が通じると思ったのか?しゃべり方やごまかし方が何も変わっておらんな。」

「ふむ。では証拠はあるのかのぅ?」

 急に冷静に勝ち誇ったような表情をする姉。

 最初からそうすればごまかせたじゃん。

「貴様年齢を言え」

「ふむ。女性に、じゃなくて、少女に年齢を聞くとは作法がなっておらぬのぅ。17歳じゃ(嘘)」

「ということは高等教育学校の2年生か3年生といったところか。 」

「そうなのじゃ」

「高等教育学校は25年前に廃止されたのにか?」

 あ、これやばくない?

 完全に言い負かされてるじゃん。

 て、なんでそんな重大なニュース知らないの?新聞読まないの?それとも……

「しまった。30年間帰ってきてないのがあだとなったのぅ」

 やっぱりそういう事じゃん。

 あと、どうしてこっち見ながら言うの?

「おまえら、やれ。」

「「「は!!!!」」」

 彼の号令と共に大群が構える。ある者は剣をこちらに向け、ある者は手綱を強く握る。

(めっちゃ怖いんですけど。せっかく落ち着く家族に巡り合えたのに……姉上たすけて)

 前世があるのに。2歳じゃないのに。

 見た目相応の事をしてしまった。情けなくもあり、罪悪感がこみ上げるが、こらえきれなかった。それが僕であり、罪なのだ。弱くてごめんなさい。

「シルフィー。」

「やっと戦う気になったか。」

 姉上が立ち上がる。彼女は構えていない。

 騎士団が突っ込んでくる。姉上。だめだよ。逃げて。

「このごみクズ共め。」 


 バキン


 金属が潰されるような嫌な音。何が起こったのかはわからない。

 ただ、あたりからは悲鳴が聞こえる。でも僕にはその理由がわからない。だってとびっきり温かいんだもん。

「やつらでは相手にならんか」

「妹を怖がらせたお前は絶対に許さないのじゃ。ワタシがあれを断った理由は覚えておろうな?」

「許さないのはこちらだ。貴様のせいで王家の信頼が傾いたのだからな。」

 男が剣を姉上に振り下ろす。

 なんで姉上は刀を抜かないの?


 ぐぐぐ


 まるでせまい空間にガラクタをつめこんだような鈍い音が響く。

「貴様なめているのか?」

 彼女は剣を手で受け止める。

 痛くないの?

「お前は一発殴らなければ気が済まぬのじゃ。せぇい!」

 彼女の一撃が奴の鎧に直撃する。

 しかもそれは鎧を貫通した。

「ぐぅぅぅあああ」

 鎧はくだけ、彼は血を口から吐き出す。

 初めて見る吐血に、すこし具合が悪くなる。

「少しは腕をあげたな。まだまだ。」

 姉上は刀を抜き真剣勝負に臨むようだ。

 はじめてみる真剣同士の打ち合いに一回一回の金属音が心臓を揺さぶる。


「シルフィー。大丈夫?怪我はない?」

「パパ?」

 なんで父がここに? 

 彼の温かい体温が僕をやさしく包む。

 もう目を背けたい。

 こんな怖さから。すがっていいの?ダメなの?誰か教えてよ。

「シルフィー。もう大丈夫だ。」

「お母さん……」

 護られるって。こんなに優しいんだ。

 心の縄がほどかれた気がした。

「お母さん。姉上たたかいやめれないの?」


 バキン。ギシギシ。

 スパ。

「くッ。」

 姉の巫女服の袖が大きく傷つく。よく見えないけど血も出ているのだろう。


「すまぬ。」

 母からの言葉は、己の無力さをのんだ、重い一言に感じた。

「あの壮年はね。王族なんだ。フレイアとは昔……」


 

<王家三光>


 私はフレイア。現在高等教育学校の2年生。17歳だ。

 今日は大事な選抜があるとかいうので、国王の城に来ているんだ。

 いったい何の用事だろう?

 ま、王様にも久しぶりに会いたいし。

 

「フレイア様よくぞお越しくださいました。」

「あ、ドルフさん。本日もお疲れ様です!」

 彼は執事のドルフさん。

 彼とは結構顔なじみ。話が通っている彼は、私を王の間に案内する。

 

(なに?この人だかりは?)

 王の間に近づくほど、妙に人が増えている気がする。しかも鎧など戦闘用の格好をしている人が多いような。

 ついに扉の前にたどり着く。


 ギィィィ


「え?なにこれ?」

 王の間の両翼にはいつもとは比べ物にならないほどの集団が。

 みんな上流階級のような服装と立ち振る舞いに見える。

 実際中には国のなかで有名な貴族も。


 ガンガンガン


 私に続いて入城してくる人たち。彼らはさっきの?

 よく見ると王族もいる。いったい何が始まるの?


 ――


 突如静まり返る王の間。

 

 パチパチパチパチ


 拍手によって迎えられたのはこの国の王。エドリウス・カルディオンだ。彼とは何度か話したことがある。母が王国騎士団で偉い人やってるんだ。

 王子のなかにも知り合いはいるけど、あまり馬が合わない。よくワタシは目の敵にされる。


本日皆みなに集まってもらったのは他でもない。王家三光のことだ。皆存じていると思うが、現在三光には欠員が出ている。そこで今回は三光候補を集めた。そして彼らには貴族の前で力を披露してもらい、三光にふさわしい実力があるかを示してもらう。」

 三光?

 三光ってあの、国の代表みたいなやつ?

 確かもうエルフと竜人の三光がいて、一人分埋まってないんだっけ。

 あれ?

 でもその席は人間(只人)……しかも基本的に王族じゃないとだめじゃなかった?

 そのせいか、両翼の貴族たちからざわめきが聞こえる。

「国王。三光候補の中にエルフが混じっているのはどのようなご意向でしょうか?」

 やっぱり気になってたんだ。

 私も気になる。

「彼女は王族でなく、純粋な只人ではない。しかし高等教育学校にて類稀なる成績を残したため推薦した。なお父がハーフエルフのため只人の血も継いでおる。特例ではあるが、皆に彼女の実力を見てもらいたい。」

 そんな特例聞いたことないよ。

 貴族の皆さんはどう思っているんだろう?

「素晴らしいお考えです。」

「国王万歳」

「なるほど。素晴らしい慧眼をお持ちで。」

 反対はあまり目立たないように思える。

 とりあえず推薦されたんだから全力でやってみないとね。エド王のためにも。


・1時間後・


 なんで私が最後なのかな?

 ちょっとプレッシャーひどいよ。

 元は人間枠なんだから人間で締めくくりなよ。

 ここまで1時間ほど。

 ほかの候補者は自らの魔法を披露してきた。ある者は的を用意しそれを破壊したり、ある者は魔力を実体化させ魔力を示したり。

 何すればいいだろう?

 あ、そうだ。

 私の家系魔法を使おう。

 ハイエルフのお母さんの血が教えてくれる魔法。

「空間魔法を使います」

 

 ざわざわ

 ぼそぼそ


 みんなどうしたんだろう?

 空間魔法を聞いてからやけに様子がおかしい。


「空間魔法ってなんだ?」

「聞いたこともない」

「いや、どこかで聞いたような……」

 そんなに知名度の低い魔法なの?

「静まれ。さぁフレイア。続けよ。」


 とりあえず的を用意してもらった。

 さぁ。やりますか!

「ふぅ。はあああああ」


 ガガガ

 ググ

 ゴゴゴゴ


「なんだこの圧は?」

「魔力量が常軌を逸している。」

「ほかの三光にも引けを取らないんじゃ。」


 私の魔法は空間を湾曲する。

 とりあえず的に……えい。


 バキン

 バキバキバキバキ


 順調に的が圧縮される。どんどん豆粒みたいに小さくなる的。

 そして―― 


 ゴォォォ


 圧縮熱で爆炎が出現する。

 まぁ。こんなものかな?

 あれ?みんな固まってどうしたの?

 さっきのみんなに対する「ふむふむ」みたいな頷きはどこいったの?


 シュゥゥゥゥ

 燃え朽ちる的と共に口を開いた貴族がいた。


「彼女は別格です。彼女を採用で良いのではないでしょうか?」

「むしろ彼女以外ありえません。」

「王よ。ご決断を。」


「フレイア。皆もこう言っている。三光としてお主の力ふるってみんか?」

 三光か。

 なったら家族は喜んでくれるかな?

 でも……

「三光ですか。」

 視線が地面に傾いてしまう。

「うーん。それは遠慮しておきます!」

 ざわめきが走るが、私はそれに気づかない。

「国の光になるより、家族と明かりを共有したいんです!」

 あの時の私はなんて未熟だったんだろう。


「「「ハハハハハ」」」

 突如湧き上がる笑い。

 私なにか変なこと言った?

 どこかエド王にも焦りが見える。

「そうであるか。だが。卒業までまだ時間もある。お主のために籍は残しておく。気が変わったらいつでも申し出るが良い。」


「フレイアに及ばない人間に三光を任せるのもなぁ。」

「やはり三光にはあれくらいの実力がないと。」

「国は任せられぬな。」


 

 この日以降パラダイムシフトが起こった。

 私の実力に及ばない人間に三光の座は任せない。そういう風潮が生まれた。

 そして……


「貴様のせいで我ら王族は嘲笑の的だ。なんだあの王を馬鹿にするような発言は。」

「ごめんエドリック。そんなつもりじゃ。」

 

 私は王族に命を狙われるようになった。

 なんでも私を倒せば三光になれるという解釈も生まれてしまったからだ。


「このしゃべり方がいけないんだ。いや、いけないのじゃ。ワタシはもう。だれにもワタシを見せぬ。」


<シルフィーサイド:名誉と家族>


 キィィン

 ガキン


 二つの金属のぶつかりは時間と共に深く、そして大きな衝撃を生むようになっていく。

 心臓がまるで直接押されているようだ。


 二人とも出血をしている。

 いやだよ。僕は家族を失うの?僕と仲良くなった人は消えてしまうの。

 そんな。

 嫉妬とか名誉とか、そんなものであの人は家族を奪うの?

 どうかしてるよ。


「さっさと空間魔法とやらを使え。それともなにか?また俺らを愚弄する気か?」

「くそぅ。それほどの実力があれば三光にも恥じぬじゃろうに。」

「だまれ。貴様を倒さねば意味はない。王族の威厳は回復しない。」

 姉上の目が遠くなった気がした。

 それはまるで僕達から……

「だめだよ!死んじゃ。」

 市民と王族?

 反逆罪に問われる?

 そんなことはどうでもよかった。

 気づけば口が動いていた。


 私はそれでも。家族が欲しい。そしてずっと一緒にいてほしい。

 お願い……


「エドリック……」

「いまさら軽々しく呼ぶな。この王家を侮辱した反逆者が……。ッ!?」

 突如転倒するエドリック。

 いったいなぜだろう?


 ズバッッ


 地面に姉上の刀が突き刺される。

「勝負ありじゃ。地面に空間魔法を使われるとは思っていなかったようじゃのぅ。ワタシに勝てば威厳が……か。」


 バサッッ


 何やってるの?姉上が突如その長い髪を切り落とす。

 そしてそれを体にこすりつけて――


「ほれ。ワタシの血のついた髪、そしてこの刀もやる。好きに報告するが良い。ワタシはもう二度とこの国に足を踏み入れん。さらばじゃ。エドリック」

  

 ◆


「心労をかけたのぅ。父上。母上。」

「フレイア。よかったよお。」

「フレイア……」

 母はそういい、姉上を抱きしめる。

「二度と命を捨てようとするな」

「申し訳ありません。母上。」

 やはりあの時、姉上は……

 お願い。

 やめてよ。もう死のうとしないでよ。

 出会って間もないけど。

 話した時間も少ないけど。

 それでも生きていてほしいのが家族なのかもしれない。


 パカラッ パカラッ


 さきほどの騎士団の物とは違う大きな馬車だ。

 騎士とは違った威圧感を感じる。

 その馬車が近くで止まり、そこから出てきたのは……


「遅かったか……」

「エドガル国王陛下」

 そういうと母上は彼に向けて跪く。

 周りの住民も同様のようだ。

「陛下。娘が」

 彼は手で母を制す。

「家族を選んだ者を、いまさら光に縛るつもりはない。本件は王家の不始末だ。エドリックの処分は城で決める。」

 すると彼はフレイアのほうを向く。

「フレイア。其方と家族には、正式に謝罪の場を設けよう。」

  

家族と名誉。

あなたなら、どちらを選びますか。

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家族と名誉…選ぶなら家族だね!
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