触れられても怖くない変わり者のハーフエルフ
少しずつ広がっていく世界と、
シルフィーの「人との距離感」をお楽しみください。
<フィオサイド:変わっててもいい?>
ぎゅうううう
「ねぇパパ。あつい」
「あ、ごめんね。シルフィー」
なでなでなでなで
「おいシルフィー。嫌なら言ってもいいんだぞ」
「ねぇパパ。なでなでよりおんぶのほうがいい」
ガサ
シルフィーが僕の背中に乗った。
「100年後も、こうなる気がしてきたぞ」
「違うよ。500年だよ?」
「なんで増えてるんだ」
オリヴィアの顔を見ると感情が消えていた気がする。
まぁ、気のせいだよね。
「それはそうとフィオ。どこへシルフィーを連れて行くんだ?」
「職場だよ」
「なるほど、子供に人気だからな」
「それもあるけど……チルカに会わせようと思うんだ。彼女ならきっとシルフィーの助けになってくれるよ」
「チルカ……だと?大丈夫なのか?いや、その……」
「分かるよ。彼女はあんなんだけど、シルフィーは僕のコレクションに興味津々なんだ。骨含め。きっと気が合うと思う。だから僕を信じて」
ぎゅ
シルフィーの僕を掴む手と足が、少し強張った気がする。
彼女は背中から降りて、オリヴィアの裾を掴んだ。
「こわいひとなの?」
「そんなことはない。その……明るいやつだ」
ごめん。シルフィー。
怖がらせるつもりはなかったんだ。
彼女はすっと視線を下に落とした。
やっぱり、人が怖いの?
「シルフィー。行くのやめる?」
僕は彼女の目線に合わせ、膝を折って聞いた。
彼女は迷う。でも、表情が熱を湛えた。
「行ってみる」
意外だった。
もしかして彼女は成長してるのかもしれない。
嬉しいようで……悲しいな……
これでは500年計画が……。その時はその時かな。
気持ちを切り替えて僕たちは外に出た。
<シルフィーサイド:初めて触れる他人>
「あと少しだね」
「そうだな」
僕は母に抱えられていた。
高い……
母の身長は高い。周りを見渡してあまり母より高い人はいない。
そこから見る景色は新鮮で……意外と楽しい。
だが、突如母に向かって走る人影がいた。
「オリヴィア様。お休み中に申し訳ありません。お耳に入れたいことが」
え?どういうこと?
僕は母に降ろされた。
「そうか。すぐ行く」
今日は3人じゃないの?
何が起こってるの?
「すまんな。急用ができた。すぐに戻る」
そう言って母はどこかへ行ってしまった。
「残念だね。シルフィー、先に行こうか」
僕は父と手を繋いだ。
案内されるがままに、歩いて行った。
◆
「シルフィー。ここは僕の職場なんだ!」
ここが⁉︎
父に連れて来てもらったのは……博物館?
広い……
あっちこっちに植物や動物の模型がある。
ちょっと好きかも?
「あっ、フィオ先輩いらしたんですね!」
話しかけてきたのは銀髪でオレンジ色の瞳の……少女?
父や僕と同じで耳が長くて尖っている。
……て先輩って何?
「やぁチルカ。2年ぶりくらいだね。シルフィー。この子は僕の後輩のチルカだよ。いい?勘違いしないでね。僕が、この僕が年上だからね?」
一緒に暮らしていて分かったことがある。
父はかなり身長を気にしている。
よく彼は子供に間違われるのだが、そのたびに威厳を示そうとする。
「シルフィーちゃん。だまされないでください。彼は62歳で、私は122歳です」
「逆だよ!嘘吹き込まないでよ!」
彼女はなんの悪びれもなく、腹を抱えて笑っていた。
「紹介するよ。この子はシルフィー」
「あ、わかってますよ。職場体験の方ですね」
「……。でねこの子は僕の娘で1年と10か月になるんだ」
「ちょっと無視しないでくださいよ!」
本当にやりたい放題だね。彼女。
こんな大人もいるんだ。
なんだろう?この感覚?いつもと心臓が……違う?
「シルフィーです」
さすがに礼儀くらいわかるよ?
「そうでちゅか。ほっぺがかわいいでちゅね」
ぷにぷに
「あう」
かがんだ彼女がほっぺを人差し指でつんつんしてきた。
「こら!僕の娘に何するんだ!」
「すみませんつい可愛くて。さすが先輩の御子でございます」
「えへへ。そんなぁ」
何ほだされてるの?
娘がぷにぷにされてるのに?
父は明らかに笑顔だった。
「では私がシルフィーちゃんを案内してあげましょう。可愛い後輩が一肌脱ぐんですよ。言う事あるんじゃないですか?」
どうやら博物館ガイドをしてくれるらしい。
僕は模型とかわからないから、ありがたいね。
態度が気になるけど……
「あ、ありがとう」
素直だね。パパは。
・5分後・
なぜか僕は彼女に抱っこされていた。
すぐ隣で解説のパレードがどんどん続く。
……
面白い。なんで?
嘘吹き込むような人じゃん⁉︎
チルカさんの解説は饒舌かつ分かりやすい。
彼女が動物や生き物について話す時は、
さっきと違った笑顔があった。
もしかしてこれが、愛?(生き物への)
完璧だ……この人。
音量以外は。
「それでですね……この樹は世界一大きくて……」
「うる……さい」
どうしよう?口に出ちゃった。
怒られる?
よく前の母にも言ってしまった言葉。
そのたびに母は激高し喧嘩になる。
何も変わってない。
僕がだめなんだ。
耐えられない僕が。
今回も……
「あ、すみません。シルフィーちゃん。ついいつもの癖で。てへへ」
「チルカ。エルフは耳がいいんだよ。このミス40回目くらいだよ?もうそろそろ慣れようね」
なんで許されるの?
遠回しに言わないとだめなんじゃないの?こういう時は。
たぶん子供だから?
気を付けないと……
完璧じゃないと。だめだから。
「シルフィーちゃんはお返ししますね」
さっき急に僕を抱えたいと言い出したチルカさん。
僕を受け取った父は僕をぎゅっと抱きしめ、頭をさすってくれた。
僕が悪いのに……
でも不思議。
心臓はいつも通りに戻っていた。
・5分後・
「どうですかこの展示?」
僕たちは広場に来た。
真ん中にあるのは、巨大な化石?
「これはすごいね。オリヴィアにも見せたかったなぁ」
「ほう。これはすごいな。すまないフィオ、シルフィー。遅くなった」
「オリヴィア!」
お母さま。
結構早かったね。
「オリヴィアお姉ちゃんお久しぶりです!」
「ああ久しぶり――って誰がお姉ちゃんだ」
なぜだろう?
こんなに踏み込んでくるのに……
怖くない?
「チルカ……さん?」
「チルカでいいですよ」
「チルカ……もう一回……その……抱っこしてほしいな」
ごめん。本当はどっちでもいい。
だけど、なんか申し訳なかったから。
それと……もうちょっと近くで話したいな。
彼女には笑顔が灯った。
その笑顔をみても僕の心臓はいつも通りだった。
僕はチルカの上で博物館を見て回った。
◆
「ねぇオリヴィアさん」
「どうしたチルカ?」
「フレイアちゃんは元気ですか?」
フレイア……?
だれ?それ。
……なんで、少しだけ引っかかるの?
次回。姉登場。




