古き者たち
「魔子大砲!」
ドゴォォォォン
轟音とともに、砂煙が庭に広がる。
その向こうで、ガラークさんは微動だにしていなかった。
この試練で、シャルロッテーヌさんとの関係が変わる。
だから真剣になった。はじめてかも?この世界に来てから。
「ほぅ。シャルロッテーヌの言っていた通り凄まじい。あの弱小魔法がこうも化けるとは」
どうやら第一印象は良好のようだ。
だけど試練は終わりではないようだ。
「お前は魔法の練度が優れていると聞いた。それを試す」
練度……つまり精巧さ、そして、いかに使いこなせているかを試すのかな?
「ケーキを用意した」
なんでケーキが出てくるの?
もしかして甘いもの好き?
なわけないか。ろうそくが付いている。誰か誕生日なのかな?
「いいか。魔法は威力さえあればいいわけじゃない。時には壊さない力も必要になる。この環状に並べた周りの蝋燭を消さずに、真ん中に刺した一本だけを消してみろ」
僕は魔子大砲を、ターゲット以外を傷つけずに撃つことができる。
でも……遠くない?
「距離はそうだな……。15mくらいで良いか」
遠いよ。パーティで撃った鉄球までの距離の3、4倍はあるじゃん!
「細かいルールはケーキを傷つけるな。制限時間は10分だ」
短いよ。
数打てば当たる作戦が潰えた。
「では開始だ」
とりあえず狙い撃ちしてみる?ここは広範囲じゃなくて、狭い範囲を狙える魔法がいいね。
「エアリアル・ショット!」
すっ
当たるわけないじゃん。しかもちょっと消しちゃいけないやつに当たりそうだった。
こういう時はどうすれば……
強い魔法だと、誤って周りの火まで消してしまう。でも弱い魔法では、真ん中の火が消えない。
……待てよ?
「一撃で消せ」とは言われてない。
「ふぅー」
集中だ集中。
ちょっと久しぶりに使うな。これ。
僕が使うのは本来魔子砲の次に弱い魔子魔法!
「魔気放出」
すぅぅぅ
思った通り消えるわけがない!
ケーキにあたっても傷つかないのでは?
でもね、この魔法は継続して放てるんだ。まるでビームだよ。
で、このビームを少しずつずらして……
「出力アップ……からのダウン」
ぼっ
一瞬の出力上げで消して、その余波で周りの火を消さないように威力を下げる作戦!
結果は……
「ふん。そう来たか。本当は一撃で射抜いてほしかったが……頭脳に関しては評価しよう」
……微妙だ。
よかったのこれ?
「では俺は休むとしよう。このケーキでも食べながらな」
あなたが食べるんだ。
試験のためだけにろうそく刺してたの⁉︎
ちなみに合否は?
「おい待てガラーク。言うことがあるだろう」
お母さま!
ありがとう聞いてくれて。
「そうだな。まだまだ粗い。だが、シャルロッテーヌが気に入る理由は分かった……とだけ言おう」
そう言うと彼はシャルロッテーヌさんに近づき、肩に手を乗せる。
「シャルロッテーヌ。お前は俺の誇りだ(ぼそり)」
聞こえてるよ……
でも、その言葉を聞いて、何かが変わった気がした。
久しぶりだなぁ。
シャルロッテーヌさんの底知れない笑顔は。
もう心配いらないのかもしれない。
◆
「シルフィー……ありがとう」
シャルロッテーヌさん!
見た目は変わらない。
でも、その瞳は、まるで時を飛ばしたようだった。
「私……ずっと、認めてもらえなかったのです」
「え?そんな。意味が分からないよ」
彼女はあんなに強いのに?
「いや、奴なら有り得る。頑なな所は相変わらずだ。だがシャルロッテーヌ。いちいちやつの基準に従う必要はないぞ」
「私は完璧でなければいけないのです」
「見捨てられるから?」
「そうかもしれない……ですわね」
同じだ。
僕と同じだ。
でも……
「皆さまお久しぶりですわ!」
ミルフィー⁉
あ、そうか。
今日はみんな集まるんだった。
彼女以外に、クリムさんと、ティラミス、そして……誰?
パーティーでは見かけなかった女性だ。
でも明らかに吸血鬼。もしかしてミルフィーの家族?
彼女が口を開く。
その視線の先には母がいた。
「オリヴィアちゃん!」
ぎゅ
え?何が起こってるの?
彼女が母に抱きついたよ。
しかも聞いたことのない呼び名が聞こえたよ?
「やめろシエラ。こんな年にもなって、こんなことする年じゃないだろう」
「くんくん……。あら?オリヴィア。貴女だってそこの二人を抱きしめてるじゃない」
「く……。これだから吸血鬼は……」
母が言いくるめられてる所なんて初めて見たよ。
しかもあまりいないよ?呼び捨てにする人。
「シルフィー。こいつは」
「いいのいいの。アタシからするわ。アタシはフランシエラ・ブランシュ。ティラミスの曽祖母なの」
曾祖母⁉
うそじゃん。
そんなわけないよ。
言動が最近の人じゃん。
何より……似てな――
ティラミスの言葉が流れ込んでくる。
「うちの娘と遊んでくれたら診てやってもいいぞ」
「似てる。ティラミスさんにそっくりですね」
「あらやだ。この娘、ひ孫にそっくりなんてアタシうれしい」
ほっぺに両手を当ててよろこぶ彼女。
似てるとは言え、やっぱりティラミスの曾祖母とは信じられない。
こうなったら――
「ねぇミルフィー。フランシエラさんのことなんて呼んでるの?」
「おばあ様ですわよ」
わからないじゃん。
彼女の正体は僕の中で迷宮入りとなった。
そんな彼女は同じ調子で母に続ける。
「ところで貴女に子供ができるなんてね」
「もう60年前だぞ」
「その娘は60歳なの⁉」
「まだ4歳だが?」
そのことを聞くと、僕に近づく。
彼女は手を僕の頭にのせ話す。
「ミルフィーと仲良くしてくれてるの?ありがとうね」
だから。
何?その、笑顔。
僕は分からないよ。肯定された時の言葉なんて。
「ええ」
なでなで
手触りが、優しいだけじゃない。
温かい。
もしかしたら……本当に彼女はミルフィーの――
「クリム君久しぶり!」
「そうだねフィオ」
今度は何?
――って
クリム君⁉
振り向くと父とクリムさんが話していた。
満点の笑顔と共に。
え?知り合い?
同じことを思ったのか母が困惑の表情をして聞く。
「おい、フィオ。なんで知ってるんだ?クリムのこと」
「だって僕たち研究者仲間だもん。100年くらい前から知ってたよ?」
「「「ええ⁉」」」
彼らを知っているほぼすべての人が感嘆した。
みんな知らなかったの?
「うふふ。100年程度気づかないのは変じゃないわよ」
「お前と一緒にするな」
目新しいことばかりだ。
でもみんな、楽しいね!




