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望まれぬ血筋

ついに決着。

シルフィーに待つのは称賛?嘲笑?それとも別の何か?


事態は思わぬ方向へ。

<ミルフィーユサイド:勝者に許されぬ血筋>


「お姉さま。爆風が。」

「大丈夫だ。ミルフィー。私が守っている。」

 さっきシルフィーが放った魔子大砲が鉄球に激突した。

 その衝撃波は凄まじい。

 何があればここまで変わるんですの?


 爆風が止み、玉を見ると、驚くべきことが発覚する。

 最初に口にしたのは主催者の一人であるキャラメリゼだった。

「なん……ですって。190cmくらい?魔力強化もなしで?」

「いいえ?」

 誰が見てもキャラメリゼの目算は明らかだろう。

 なのにそれに口を挟む貴族がいた。

 吸血鬼界隈で知らぬものはいないほどの有名人。シャルロッテーヌ・シュガー様。

 でもどういうことですの?間違っては――


 ゴロ。ゴゴゴゴ。


 え?うそ?

 なんで止まっていた玉がまた動きますの?

 爆音の残響がまだ天井に張りついている中、鉄球だけが鈍く床を鳴らす。

「やめるのです!それ以上動いたら。」


 ゴ……ゴォォン。


 玉は半周くらい再びころがり、本当の静寂を迎えた。

 でもどうして?

 しかしそれに誰も答えず、ただ先を行く影があった。

「誰も確認なさらないようなので私が見ますわね?」

「シャルロッテーヌ!やめるのですわ。」

 メモリを見ようとするシャルロッテーヌとそれを止めようとするキャラメリゼ。しかし止まるはずもなかった。

「あらら。」

 ざわめき立つ会場。

 誰もが固唾を呑んだ。

「326cmですわね。」

 誰もがその数字に耳を疑った。


 しかし……

 ある貴族が「今からでも囲い込めるか?あれは使える」と発言したのだ。

 それを皮切りに貴族達はささやき始める。

「いや、ぜひ我が家に。」

「男爵家のあなた方には相応しくないでしょう。子爵家の我が家に。」

 不快ですわ。

 シルフィーをまるで道具のように。

 


 さっきまでシルフィーを蔑んでいた目が、今度は別の意味でぎらついて見えた。

 私としてはこのまま何も起こらないでほしいものですの。


 誰もがシルフィーの価値を認め始める中、そこに異を唱える者がいた。

 キャラメリゼだ。

「おかしいですの!なんで止まったものが再び。」

「いいえ、キャラメリゼ。鉄球をよく見るのですわ。」

 キャラメリゼが玉に近寄り、確認すると。

「け、削れてる……。」

「鉄球を壊してはいけないというルールはございませんからね。」

 重心がずれた……の?

 そうだとしても初級魔法より下位の魔法であの硬い鉄球を?

 まるで当然のことのように語るシャルロッテーヌ、そして結果を受け入れられず反論するキャラメリゼ。

 どちらに理があるかは明らかですわ。

 だが……

「認めませんわ。この記録。貴女……壊したとおっしゃいましたわね?」

「ええ、それが何か?」

 そんな、いくら主催者だからって記録を自由には――

「建物を壊してはいけないといったはずですわ。」

 キャラメリゼはさらに続ける。

「あれだけ大きな爆発が起きていれば少しくらい――」

「壊れておりませんわよ。あら?お気づきにならなかったの?あの子、魔法の練度が素晴らしかったのですわ。ですから私は、彼女をお家に招待したのです。」

 

 その言葉は会場を黙らせる。

 誰もがその言葉に半信半疑。

 

 確かにそうですわ。

 あれだけの魔法で床が壊れてないなんて。

 そんなことあるのですの?

 

 キャラメリゼは自ら現場に赴き、床をくまなく調べる。

 家人も加わったのだが……

「そんな……どういうことですの?」

 彼女は膝をつき、俯く。

 だがそれを他の貴族たちは見逃さない。


「やれやれ。ノワール家は見る目がないですな。」

「ハハハ。結果は日の目を見るより明らかですのに。」

 嘲る貴族。

 それを聞いたキャラメリゼの赤い瞳が黒く染まる。

「なんですって?さっきまで貴方たちは彼女を忌み――んんん。」

 血相を変えて彼女の口を押さえる彼女の父。

 彼は表面に笑顔を作り述べる。

「いやぁ。皆様は慧眼をお持ちで。素晴らしいお方ですな。シルフィー様は。私達の催しでそれを見つけられた事を誇りに思いますぞ。本日はお楽しみいただきありがとうございました。」

「さすがノワール伯爵。娘とは大違いですな。」

「んんんん。」

 今こそ怒りを放たんと暴れるキャラメリゼ。

 だが父は何かを彼女にささやきなだめる。


「では、私は失礼しますわ。マドレーヌ公爵。お部屋お借りしてよろしいですか?この子を休ませたいのです。」

「ええ。ではご案内します。」

 二人が会場を後にするようだ。

 私も行こうと声をかけようとしたが、先を越したものがいた。

「お待ちください。シュガー嬢。彼女を置いて行ってください。」

 突如降りかかる声。

 その声の主は、行く手を阻む。

「それはなりません。彼女は気絶しております。今すぐ休ませるべきですわ。」

「魔力枯渇も起こしていないではありませんか。」

「それでも彼女には手当てが必要ですわ。これ以上はご容赦を。では失礼します。」

 あ、二人がいってしまいますわ。

 手当て……魔力譲渡ですの?

 そういえばお父様が言ってましたわね。

 結果を聞いておいて良かったですわ。

「お待ちください、シャルロッテーヌ様。シルフィーはLA型ですわ!」

「ミルフィーユ様!それはここでは……」


 ざわざわ

 ゴソゴソ


 え?なんですの?この音。

 つい先ほどまでの称賛混じりのざわめきが、急に冷たく耳に刺さった。

「LA型?あいつ人間の血が混ざっているのか?汚らわしい。」

 一人の吸血鬼貴族が口にする。

 

 待つのです。

 この国では差別は禁止されているのですよ。

 

「貴様。我ら人間を侮辱する気か?」

 人間の貴族は目の色を変えた。

「い、いいえ。ただ、人間の血が混ざっているエルフでは我らと子をなせないと考えただけで……」

 たしかにエルフと吸血鬼は子供ができるが、人間の血が混ざると話は変わる。

 しかしさっきの発言を見逃す貴族ではなかった。

「汚らわしいといっただろ?それに知っているぞ。卿の家人採用で人間とその混血の志望者を全員落としたことを。」

 種族で家人を決める。

 貴族では珍しいことではありませんわ。

 ですが、やはり聞いていて気分の良いものではありませんの。

「吸血鬼族は只人族よりはるかに優れている。だから採用したまでの事だ。」

「おいふざけるな。すべての種族で最強の個体を生み出しているのはいつも人間だぞ。」

「砂漠の中の砂一粒の話だろう。その個体でもないお前が粋がるな。」

「お前のことは以前から気に食わなかったんだよ。」

 これは、大丈夫ですの?

 まさか私のせいで?


「ミルフィー。今すぐシルフィーとシャルロッテーヌ殿と一緒に避難しろ。私が何とかする」

「はいお姉様。」

 これはまずいですわね。

 私はシャルロッテーヌを先導し、急いで扉をくぐった。


 ◆


 私達は走っていた。

 とりあえず別館を目指しますわ。

 そこなら安全でしょう。

 

 でも、私は人を救おうとしただけなのに……

 こんなことになるなんて……

 どうしましょう。

 胸が苦しくてたまりませんわ。

 シルフィー。ごめんなさいですわ。

「ミルフィーユ様。大丈夫です。姉君が何とかしてくれます。私に魔力型を教えていただきありがとうございました。」

「シャルロッテーヌ様……」

 そんなわけないですわ。

 私が、吸血鬼貴族についてもっと知っていれば。

「大丈夫ですわ。手は打ってあります。案内お願いしますわ。」

「シャルロッテーヌ様。わかりましたわ。こちらを昇りますの!」

 

 失敗は取り消せない。

 だからこそ、そのたびに償うのですわ。

 お願いですわ。シルフィーを、私の友達を助けてほしいのです。


 だから私は走る。

 友達を守るために。もう、失いたくないのですわ。

一触即発の会場。

シルフィー達は無事に抜け出せるのか。

そして、少女たちの関係はどこへ向かうのか。


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