僕にはできないこと
<シルフィーサイド:なんで二人は?>
「なんで二人は永く生きられるの?」
僕は父の背中にいた。
ゆりかごのように優しく揺れるその小さな背中は、まるで僕に命を与えるようだった。
それが怖かった。
僕は……10年がやっとだよ。
……それ以上は、苦しくて無理だと思う。
そんな疑問に母が答える。
「それは私たちは、エルフだからだ」
母はそう言った。
そして続ける。
「時間の流れが、人間とは違う」
「なら僕も?」
「お前は混血だ。たしか……フィオ、説明を頼む」
「えっとね。たしか君の場合はオリヴィアと同じ時間になると思うよ」
お母さまは二千年を生きるハイエルフらしい。
でも僕が聞きたかったことは違う。
「あの……そうじゃなくて……その……」
「どうした?シルフィー。なんでも聞くといい。私たちはお前のことが知りたい」
「そうだよ。それに君と話すの楽しいからね!」
そんな、僕の話なんて……
わからないよそんなの。
「なんで二人は生きてられるの?辛くないの?」
「なるほど……心の話か」
「うーん。辛くないかな」
「そうなのか?フィオ。仕事の……ってそうか、お前は育休中だったな」
「仕事中も辛くなかったよ」
「なんだと⁉︎」
え?
仕事ってストレスフルじゃないの?
どんな仕事してるの?
「館長はちょっとめんどくさいけど、変な後輩もいるしね」
ストレス抱えてるじゃん!
「なにより、オリヴィアがいるからね。人生辛くないよ」
「フィオ……。たしかにな、よく部下は問題起こすわ、あちこちたらい回しにされるが……」
「それは数十年に一度じゃん」
「私にとっては短いんだ。とにかくお前がいれば私も辛くないぞ」
そうなんだ。
人と一緒なら辛くないんだ。
……僕にはわからないな。
「じゃあ結婚する前は?」
まず父が答える。
「僕にはお母さんがいてね、彼女と一緒だと、胸がふわっとなって、ずっと生きていられたんだ」
お母さん……か。
僕は母に視線を移す。
「ど、どうした?シルフィー」
「お母さまの大切な人って?」
返事はすぐ返ってこなかった。
母は、視線を宙に浮かし、あちらこちらを見る。
そして口がやっと開く。
「まぁ、妹だな」
「あ、彼女だね」
「やっぱり大切な人が近くにいることが大事なの?」
「まぁ……フィオと結婚する前はあまり帰っていなかったがな。それでも違うんだ。あいつが生きてくれているだけで」
どうしよう……
僕はだれとも、繋がれていないよ……
「お母さま、パパ、僕、ながいきできないかも……」
母は僕の頭に手を置き、話す。
「今は無理でも構わん。お前は私たちのところにいろ」
……
頭が、うまく動かない。
気づけば、顔が下を向いていた。
「辛くなっても大丈夫だよ。僕の膝の永住権が獲得できるからね。ま、君ならいつでも住み放題だけどね」
「なんだその変な権利は?」
「ねぇオリヴィア。君の膝の永住権ちょうだい?」
「お前が甘える流れじゃなかっただろう?」
「シルフィーが甘えるんだよ?永住権は二人分だから」
「フィオ、お前――」
ぎゅ
父は母の膝に座った。
スペースを開けて。
「さぁ、おいでシルフィー。一緒に暮らそう」
「私は建物じゃないぞ」
「じゃあオリヴィアも一緒に」
「どうやって私が私に住めと言うんだ」
もう……
とりあえず僕も母の膝に座った。
そこは、思った以上に温かかった。
読んでいただきありがとうございます。
続きもゆっくり書いていきます。




