公爵令嬢の誕生日パーティー(巨大リボン付き)
戦って、ぶつかって、そしてようやく友達になれた二人。
「年齢も立場も違うのに、どうしてこんなに距離が縮まるんだろう?」
そんな“不思議な縁”が少し見えるかも。
そして今回はミルフィーの誕生日パーティー。
シルフィーの人生がまた静かに動き始める。
「ではお嬢様方。ごゆっくり。」
「さぁ入りますわよ、シルフィー様。」
僕たちは二人でお風呂に入ることになった。
正直言う。
家族以外に生まれたままの姿を見せるのは緊張する。
でもこれを前世で口に出したら白い目で見られたので堂々と見せるしかないのか……
「うーん。よいしょ。」
「何してらっしゃるの?」
堂々としたつもりだったんだけど、ミスったかな?
「準備……運動?」
「ここはプールではないのですわ。」
あ、やっちゃった。また白い目で?
「それが強さの秘訣ですの?」
「その……そうじゃなくて、初めて一緒に入るから緊張しちゃって……」
「あら?そうでしたの。いいのですわシルフィー様。私に敵意はありませんことよ。それどころかあなたと仲良くなりたいと思っていますわ。」
え?そんなこと今まで一言も……
「とりあえず入りませんの?湯船が沸いていますわよ。」
ちゃぷん
「温かいですわ。冷え切っていたから沁みますわ。」
「そうだね。気持ちいい。」
「よく私の激流魔法を切り裂いたものですわ。感服いたしましたわ。」
と言っても僕は母の言うとおりにしただけで……
もし一人の力でなら、決着は違ったかもしれない。
「嬉しいですの。誰も私と遊べなかったのですから。これからも遊んでほしいのですわ。シルフィー様。」
「僕で良ければ……」
「やったのですわー!」
ぎゅううううう
ちょっといきなり恥ずかしいよ。
初めての同年代による抱擁に、視線があちこちさまよってしまう。
よく周りにハグしあう女の子いたけど……実際されるとこんなに違うの?
「これで私たちもお友達ですわね。」
うれしいよ。その言葉。
でも僕は彼女の期待に応えられるのかな?
もし、彼女が僕より強くなったら?
僕が母の助言ありでしか勝てなかったら?
「僕、弱くなるかもしれないよ?」
「私より年下なのに何言ってますの?それに、私がいつか勝つのは自然なことですわ!私は公爵家のミルフィーユ・ブランシュであり、あなたのライバルですもの。」
ライバル?
確かにそれなら……
「いいねそれ!このシルフィー・アリウスは、ミルフィーの友達でありライバルだよ。」
「その意気ですわ、シルフィー様。」
「あの、シルフィーでいいよ。僕に勝つんでしょ?」
「でも、あなたはオリヴィア様の娘で、私は負けましたし。」
「母は母、僕は僕だよ。」
ちょっと様付けははずかしいよ。彼女年上だし……
あ、でも対等になったら失敗する?やっぱり――
「分かりましたわ。シルフィー。ご立派な心意気ですこと。よろしくお願いいたしますわ。」
友達の正解なんてわからない。
それでも僕はこれがいい。友達でいられるよう、僕は静かに気合を入れるのであった。
・2時間後・
「今日は私の誕生日パーティーですの。1時間後から始まりますの。ドレスはありますの?」
やっぱりいるんだ。
お母さまはすごいな。
「これ。」
「これは。貴重な宝石があしらわれた高級ドレスではありませんの。」
え?そうなの?
歴史の遺物の次は、庶民に手が出せない高級ドレス!?
どっちも僕が着ていいものじゃないよ!
と言ってもこれしか着るものがないので着替えてきた。
「神々しいですわ!プラチナブロンドの髪に、白銀のドレスの対比、まるで宝石そのものですわ!」
だって宝石ついてるもん。
「あ、そうですわ。あれが似合うと思いますわ。マカロン。」
「はい。お嬢様。ご用意いたします。」
マカロンと呼ばれた吸血鬼のメイドは部屋を出ると、何かを持って出てきた。
「え?大きくない?」
「私は似合うと思いますの。是非お召しになってくださらない?」
用意されたのは赤いリボン。
だけど僕の頭のサイズの倍はあるよ。王家に行くとき、父が大きな髪飾りを付けてた気がするけどそれより大きそう。
……
「はぁぁぁ。最高ですわよシルフィー。素晴らしいのですわ。」
すりすり、すりすりすり
「あ~やめてミルフィー。目が回るよ。」
「あ、ごめんあそばせ。つい可愛くてほっぺすりすりしてしまいましたわ。これで今日の主役間違いなしですわね。」
主役はあなたですけど?
「お嬢様。もうそろそろお時間です。会場へ参りましょう。」
ちょっと。まだリボン付けるかは決まって――
「さぁ行きますわよシルフィー。私の晴れ舞台をとくとご覧あれなのだわ。」
彼女に手を引かれ、僕はどこかへ連れていかれた。
<誕生日パーティー>
ざわざわ
「おい。もうそろそろ時間だぞ。」
「そうだな。いったいどんなお姿で降臨なさるか。」
「ビュッフェがあんなに、早く始めぬか。」
……
「人多くない?」
「当たり前ですの。家は公爵ですのよ。私と縁を結びたい貴族が国中から押し寄せますの。」
そっか。これは社交の場なんだ。
貴族は誕生日も気が抜けないのか。ちょっとかわいそう。
「皆の者。本日は妹のため集まってくれたことに感謝する。本日は皆のため、専属の料理人たちがその腕を振るい、作った一流の料理を用意した。是非とも本日は楽しんでくれ。」
銀髪赤眼の女性が演説している。どうやら成人した吸血鬼のようだ。
静かな佇まいなのに、その場の空気が自然と引き締まる。
……もしかして?
「あれはマドレーヌお姉様ですわ。現当主でもありますの。」
「年離れてるの?」
「そうですわね。200歳程度でしたわね。」
「200歳⁉」
家の姉どころか、父より離れてるじゃん。
でも、これが吸血鬼ではふつうなのかな?
「おや、その子は?」
「あ、クリムお兄様。本日はご足労いただきありがとうございます。こちらは……」
「シルフィー・アリウスです。」
「アリウス?もしかして君は……」
彼の目がわずかに見開かれた。
「そうですの。あのオリヴィア様のご息女でございますわ。とても強くて尊敬していますの。」
現れたのはマドレーヌやミルフィーユと同じ髪・目の色をした吸血鬼の青年。
穏やかな笑みを浮かべており、その柔らかな雰囲気に自然と肩の力が抜ける。
三人とも仲良いのかな?
「そう。家の妹がお世話になります。お転婆な妹だけど、仲良くしてくれると嬉しいな。」
「はい。仲良くします。」
ちょっと緊張しちゃったけど、これでいいかな?
「ちょっとお兄様?お転婆は余計。」
「ははは。悪かったね。」
「では時間となりましたので、本日の主役、ミルフィーユ・ブランシュの入場となります。」
マドレーヌからの声がかかり、辺りのざわめきが消える。
「では行ってきますの、お兄様、シルフィー。」
パチパチパチパチ
彼女の立ち姿はまるでカリスマ。
その風格は彼女を知らぬものにさえ、一線を画す存在であると感じさせる。
銀の髪が灯りを受けて静かにきらめく。
その姿に、自然と人の視線が集まっていた。
「ただいまご紹介に預かりました。ミルフィーユ・ブランシュと申します。以後、お見知りおきを。本日は私のためにお集まりいただいたことに感謝いたしますわ。ささやかなもてなしですが、お楽しみいただけると幸いですの。」
パチパチパチパチ
「さすが、ミルフィーユ様。ご立派ですな。」
「ええ。ブランシュ家は名門。その名に恥じないご尊顔を拝見でき、嘉悦の至りですな。」
「是非とも今後もお付き合いしたい。」
彼女の挨拶は盛況に終わったようだ。
そして彼女は大きな椅子に座る。するとそこに貴族が群がり列をなす。
え?
これ……全員、挨拶する感じ?
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回、ついにパーティー本格始動となります。
大勢の貴族の中で、シルフィーの運命はどうなるのか?
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