力をくれるパパの体操着
ついにやってきたミルフィーとの魔法決闘の日。
理不尽なほどにシルフィーにプレッシャーがのしかかる。
果たして彼女は勝てるのか?
そしてミルフィーとシルフィーの関係はどうなるのか?
「ねぇお母さま。本当にこれで勝てるの?」
「大丈夫だ。私を信じろ。魔法というのはな……」
・ミルフィーユ主催パーティー当日・
僕は頭に?を浮かべながら歩いていた。
「お母さま。本当にこの服着て戦うの?」
「そうだ。」
「体操着じゃん。」
その、もっとこう、魔女が着るようなローブとかじゃないの?魔法対決って。
「それがいいんだ。本当は新しく買ってやろうと思ってたが、フィオが持ってたから貰ってきた。」
「ええ?これパパのなの?」
疑問の濁流をどう解決すれば良いんだ?
「ねぇお母さま。僕が、パパのお古なんて着たくないって言うとか考えなかったの?」
「思うわけがないだろう。毎日あれだけべったりしておいてよく言うなシルフィー。むしろ喜ぶと思ってたぞ。」
僕、そんなふうに思われてたの⁉︎
まぁ、でも……
(これでまたパパに近づけたね。シルフィー。)
満更でもない自分がいた。
「これパパがいくつの時のやつ?」
「確か4、5歳くらいだったはずだ。」
よく捨てなかったね。
どうやって120年も保管したの?
というかこれ歴史の遺物じゃない?
プレッシャーが増えた……
「着いたぞ。」
「ええ?おかしいよこれ。平民の家じゃないよ!」
「だってあいつ公爵家の出だし。ちなみに家督はミルフィーユの姉が継いでいる。」
公爵⁉︎
王の次に偉いってこと。
「あの人が公爵の時、よく国が滅ばなかったね。」
「私もそう思う。」
ピクッ
母の耳が跳ねた。
えー。
何か起こるの?僕も構えないとダメ?
「覚悟なさいですわ!」
「わぁぁぁ!?」
え!?何?
「甘い。」
「よけないでくだ――あっ、ギブ、ギブ!ギブですわ!」
どこからか湧いてきたミルフィーが母へ飛びかかる。しかし母は当然のように彼女を避け、彼女を後ろから両腕を掴み拘束した。勝負あったようだ。
しかし……
「さぁ、シルフィーと戦うなら今やるといい。まだ時間があるのでな。見ておいてやろう。」
あれに勝てと?
一目見てわかった。
身体能力負けてるじゃん……。
しかも彼女と違い僕は初級魔法しか使えない……
詰んでない?
でも……やるしかないの?
「さぁ、さっさと始めますわよ!て、あなた、そんな格好で戦いますの?」
やっぱり浮いてるじゃん。
彼女はフリルのついた白く清潔なシャツに、黒いパンツでコントラスト醸し出してるし……
体操着で戦うような人じゃない!
「……面白い服ですわね。そんなボロボロで低性能な服で私に挑むとは……愚かさを教えてやりますわ!」
「なんだって。この服を悪く言うことは許さないぞ!君は今から僕の足元に這いつくばるんだ!」
何言ってるんだ僕。
つい感情に任せて喋っちゃった。でも……地べたはわからないけど、悪くは言ったことは後悔させてやる!
「フッ。やはりフィオの服は効果覿面だな(ボソ……)。」
「いくぞ、ミルフィー!」
「来いですわ!シルフィー!」
「ウォーター・ジェット!」
「ウォーター・ストリームですわ。」
すとりぃむ?何それ?
習ってないよ!
僕の発射した水が小さな川とするなら、彼女の放ったそれはまさに”激流”だった。
「聞いてないよぉぉぉひやぁぁぁ。」
「うぉ。良く避けたなあの娘。」
「お嬢様のあの技をかわすとはやりますのね。」
僕の魔法は哀れに飲み込まれた。彼女のそれが僕を襲った。ギリで回避したことに沸き立つギャラリー……
見せ物じゃないよ!
――追撃が来る!
「アイス・マシンガン――100連発ですわ。」
「ちょっと、まだ立ててないのに酷すぎるよ!」
・1分後・
「すばしっこいですわね……」
はぁ、危なかった。
なんとかなったけど息が上がって動けないよ。
「ならばその速さを消してやりますわ。スノー・ブリザード!」
「さすがお嬢様。あれであの娘は動けまい。」
「なにこれ?寒い。」
一瞬だった。
気づけば辺りはホワイトアウト状態だ。さらに寒くて身動きが取れない。
「やっととまりましたわね。これで止めですわ!アイス・ナックルですわ。」
最後拳で殴るの?
「やれー!お嬢様!」
「これで決まったな。」
だけど僕は彼女が走り出す一瞬の隙を見逃さなかった。
「アイス・フロアー(ぼそっ)」
「ぺぎゃん!?」
彼女の足元に氷床をつくり転ばせる。あとは習った通りに……
「アイス・ハンマーを……」
「え?何しますの⁉︎やめ……」
「横にドン!」
パキ……パキパキ……!
氷床にヒビが入る。
本来なら「だから?」で済むが今回は効果覿面だった。
「あ、ああ。」
「そこまで。シルフィーの勝ちだ。」
「そ、そんな……私が……」
「お嬢様が……負けた?」
「そんな。あの娘はまだ4歳かそこらでは?」
やったー!
なんとかなったぞ!
結構氷の弾は焦ったけどなんとかなったね!
これで僕も解放……
「認めませんわ。こんな小細工での勝利なんて……。ウォーター・ストリーム!」
「やれ。シルフィー。」
母は彼女の負けん気を見抜いていた。
彼女はあらかじめ、こうなった時の対処法を僕に仕込んでいたのだ。
手で急いで魔分子を合成して……
「ウォーター・ジェット!」
「そんな下位互換魔法で私の中級魔法には敵いませんわ!」
「そうだ。あんな魔法なんかで……」
ドン
二つの流れがぶつかると、まるで固体同士の激突のような鈍い音が鳴る。
そして周囲からざわめきが消えた。
「裂けろ……滝切り!」
「そんなことができるわけ……て、え?嘘ですわ。なんで私のウォーター・ストリームが?そんな……」
ざぶーん
大量の水が彼女にかかる。僕にはかからない。僕は激流を切り裂いたのだ。母の言う通りにやったため、ミルフィーには傷一つない。ただずぶ濡れなだけ。
「あ〜。目が回るのですわ。なんであんな魔法に……」
芝に横たわる彼女に、母が近づき優しい口調で語りかける。
「それはだなミルフィーユ。魔法の威力はかける魔力量、そして練度にも作用されるからだ。シルフィーは初級魔法を……さっきの水魔法を徹底的に研鑽した。その結果だ……」
「知らなかった……ですわ。」
・5分後・
「それじゃあ私はいくから。仲良くな。あと、お前達。早く風呂にでもはいれ。」
「ありがとうございましたわ!オリヴィア様。また、夜ぜひきてくださいまし。」
母は仕事に行ってしまった。
残されたのは僕とミルフィーのみ。
どう話せば……
「シルフィ……」
「どうしたの?」
「いや、シルフィー様!見直しましたわ!年下で私に勝った子なんて初めてですわ!その……私と……お風呂に入ってほしいのだわ。」
え?そこは友達になるとかじゃないの?
戦友になれるんじゃないの?
そんなー、初めて同年代の友達できると思ったのに!(※チルカは60歳年上)
「私に勝ったからには、義務がありますの。」
「なに?」
「私とまた遊ぶのですわ!もちろん魔法で。」
また戦えって⁉︎
せっかく潜り抜けた危機だったのに。
なんでこんな理不尽な目に遭わないといけないんだ。もう嫌だよぉぉ。助けてお母さまぁぁ!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ミルフィーの真意とは?
果たして二人は友達になれるのか?
次回、パーティー開幕。
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