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特別なフィオ

父母をいじり放題のシルフィー。

でもそれは少し両親と仲良くなれた証拠?

子供に告白された父、それに対し怒りの圧をかける母。一色触発の祝賀会はどうなるの?

 気まずい。

 この空気いったいどうすればいいんだ。

「で、どうなの?フィオ君。アタシ結構モテるから早くしないとなくなっちゃうよ?」

 やめるんだ。

 これ以上言ったらお母さまが。

「これはレックスに減給ものだな(※職権乱用)」

「お母さま。そんなことやったら犯罪者だよ(ぼそ)」

「しかしだな……」

「あ、あの。ミント。伝えないといけないことがあるんだ。」

 ついにその重い口を開き始める父。

 その言葉に傍観者達は固唾を飲み、新たに発せられる言葉を、今か今かと待ち構える。


「僕は……実は……」


「お待たせしました。全メニューと黒毛和ポークン丼4皿でございます。」

 

 何してるんだ!店員(※とばっちり)。

 わずかだった。

 残っていた希望はわずかだったんだ。

 せっかくのチャンスなのに、皿はチャンスを下敷きにして置かれるらしい。


・5分後・


「あ、あの。おいしいですね。」

 明らかに母の顔色を窺っているレックスさん。

 告白の事はいったん皿が棚に置いたのだが、ミントの止まらぬ質問攻めに気が気ではないらしい。

(あ、そうだ。)

 僕がミントの話相手になればいいんだ。

 え?

 コミュ症の僕が?

「ねぇ。ミント。普段何してるの?(会話マニュアル)」

「そうねぇ。楽器を弾いたりしてるわね。」

「あ、そうなんだ。」

 ……

(会話終わっちゃったよ。こんな事なら楽器の一つでも嗜んでおけば良かった)

「そういえば、学校合格したんだよね?どこいくの?」

「私立テールウッド学園よ。」

 どこ?

 そもそも学校一校も知らないよ。

 とりあえず母の裾を引っ張ってみた。

「テールウッド学園は魔法師の名門だ。レックス。お前は娘を魔法師にするつもりか。」

「ええ、私はそれが……」

 やった。気まずい空気が少しほどけたぞ。

 魔法?

 あ、そうだ。今日初めて魔法成功したんだった。

「ミントって魔法使えるの?」

「ええ、そうよ。私は氷と炎と水と……あとね、風魔法の基礎はマスターしたわ。」

 優秀すぎるよ。

 2歳しか変わらないのになんでこんなスペックが違うんだ。

「あの……いくつ――」

 やっぱやめた。いくつからできたの?なんて聞いて「3歳」とか言われたら壊れるもん(撤退)。 

「爆発魔法はできる……?」

「爆炎魔法のこと?」

 えっと魔子魔法だっけ?

「シルフィーはね。魔子魔法で爆発が起こせるんだよ。」

 あ、生きてたんだパパ(辛辣)。

「なんですって」

「そんなことがあるのですか?」

 急にどうしたの?レックス夫妻。

 二人の目が丸くなり、僕に突如視線が送られる。

「こうやって手をかざしてドン」

「すごいじゃないかシルフィーちゃん。」

「ええ、そんな威力が出る魔子魔法なんて聞いたことがないわ。」

「さすが団長の御子です。」

「フフッ。そうだろう。シルフィーは自慢の娘だからな。」

 母は普段クールだ。

 感情を表に出さず(※姉が来た時を除く)、重く優しい口調がデフォルトなのだが……

(すごいニヤニヤしてるじゃん。)

 ほっぺが赤く染まり、荒ぶる魚みたいに耳がピクピク動いて、口元が上がろうとしているのを必死に抑えている。

 これも爆弾発言の反動?


 魔法の話で盛り上がる子供3人(※父含む)

 娘たちの話で盛り上がる大人3人。

 なんてすばらしい空間なんだ。

 今日は本当に楽しい祝賀会だ。こんな楽しいなら長生きするのも良いのかも。


「もうそろそろだな。あれを頼むぞ。」

「畏まりました。」

 お母さま何を頼むつもりなんだろう?デザートは別腹なのでデザート全てくれって事かな? 

「お待たせいたしました。祝福のホールケーキでございます」 

「ええええええ」

 なにこれ?

 でかい、白い、丸い(語彙喪失)。

 と見せかけて黄金?

 

 目の前に立ちはだかるのは白い滝を覆う黄金のスパイラル。

 折り重なる白と金のコントラストは食べると身体組成が変わりそうなほどに美しい(永遠の命的な?)。

 それと……

 みどりの棒?

 なんだろう。あれ?

 蝋燭とは違う、宝冠台?のようなオブジェがケーキ頂点で輝きを放つ。

「あ、魔法の杖だ。アタシも昔やったことある。」

「知ってるの?」

 ミントどころか全員が知るような顔つきである。有名なの?

「これはだなシルフィー。マジカルロッドと言ってだな、杖に魔力を流すと魔法石が出来るんだ。子供は石に魔力を刻み将来懐かしむんだ。フレイアも昔やったぞ。」

「お母さまはやったの?」

「私が子供の頃にはまだなかったな。フィオが生まれたくらいの頃にはあった気がするがな。」

 どうしよう。聞かないほうが良かったかな?

 父の耳がピクピク動いて立つ瀬がなさそうにしている。はよ年齢伝えなよ。

「こう?」

「そうだ。そのまま魔力を流してみろ。」

「どれを流せばいいの?魔子?魔分子?」

「えっと……フィオ。どれだったかな?」

 母はやはり魔法科学には疎いらしい。彼女にとって魔法は感覚なのだとか。

「えっとね。どっちでもいいよ。みんな魔子でやりがちだけど。」

「そういう事らしい。朝のように……ふむ。」

 母が目くばせをした先のレックス夫妻。彼らの目は少しひきつっているように見える。

 僕が暴発しないかが心配なのだろう。

「シルフィー。私が抑えておいてやる。お前は何も心配することはない。レックス。別に咎めないから離れていて良いぞ。」

「いいえ。私は大丈夫です。団長がついているなら問題ないでしょう。」

 その後彼はアザレアさんとミントにも確認を取り、残る事にしてくれたらしい。

 僕は家族でさえ全てを委ねられていないというのに。

 その信頼、仕方を今度教えてもらおうかな。

「さぁやってみろ。」

「おりゃ。」

 

 ころり


 ちょっと地味じゃない?

 ロッドの上には僕の手のひらにすら収まるくらいの小さな石が。それにしても……見たことない色。

「2色が混ざっているとは珍しいな。」

 よく見ると紫色の中に紛れて暗い青色の線が混じっている。手に取ってみるが実に不思議……あれ?裏のなにこれ?

「3色目……だと?フィオ。こんな事あり得るのか?」

「ごめん。聞いたことない。でもシルフィー。君の魔力は特別なのかも。オリヴィアと訓練していくうちにわかるかも。」

 特別か……

 ちょっと胸の奥がジワリと温かくなる。

 意外と魔法って楽しいかも。

 珍しい魔石の誕生により、祝福に染まるムード。

 

 しかしそこにポツンと射す異色の光があった。

(あ、やば、忘れてた。)

「フィオ君?お母さまの事は呼び捨てにしてはいけないのよ?」

 そういえばさりげなく呼び捨てにしてたねさっき。

「ごめんミント。実は僕、シルフィーのパパでオリヴィアの夫なんだ。」

「え?そんな……じゃあ付き合えないっていう事?」

「そうなんだ。ごめんね。」

 やっと言えたんだパパ。

 僕の父親って言ってくれてうれしいな。

「じゃあ本当は何年生きてるの?」

「僕はね、120年以上生きてるんだ。」

「あ、そうなんですか。」

「え?」

「アタシ年近い子が好みなの。」

 ちょ。

 早すぎない?手のひら返し。さっきまでの涙腺崩壊寸前感はどこ行ったの?


 ◆

 

 この後つつがなく僕達の祝いの宴は幕を閉じ、みんな満足した様子で帰っていった。


 一人を除いては。

「シルフィー抱きしめてよぉ。」

 今日学んだことがある。

 エルフは年齢が見た目を超えると大変ということ。

 人は思ったより年齢が高いと冷たくなることがあるということ。

 そして……父の子供のような振る舞いは、壊れないため……だったりするのかな?

 僕が同じ時を生きた時、どうするんだろう?

読んでいただきありがとうございます。

祝賀会編いかがでしたか?

次回、フィオのその後のストーリーが判明!

その結果ベッドでの3人の配置がイレギュラーなことに?

シルフィー(翠)の過去も明らかに。


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