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23話 暗闇の影-1-

 早朝、僕は早くにゆっくりと目を覚ました。

 早く起き過ぎたと後悔した、2度寝しようか考えている最中に僕の部屋のドアがノックされ、

 アーフェが僕の部屋に入ってきた。


「申し訳ありません、ヴェルフ様」

 いつものアーフェらしからぬ焦り様に、僕はベッドから起き上がる。

 何か事情があるのだろう。


「アーフェ、そんなに慌ててどうしたんだ?」

「ヴェルフ様、ウェストヘイルから北方半日の場所に、魔物の大群が現れました。避難してきた地域住民をここウェストヘイルは受け入れる体勢をレーヌ様によって整えています」


「規模はどれほどですか?」

 僕は服を着替え、ローブに手を素早く通しながらアーフェに尋ねる。


「レーヌ様の魔力感知によれば、魔力溜(まりょくだまり)の規模はそれほど大きくはないのですが、魔物の報告件数と規模の大きさに差異があるそうでして……」


 話を聞くだけでもおかしなことが起こっているみたいだ。

 一瞬黒の首の首領のことや魔教(まきょう)のことが頭の中に思い浮かぶ。

 いや、それでも僕のすることはこの国、そしてウェストヘイルを守り抜くことだ。


「わかった、レーヌに詳細を聞きに行く。アーフェ、レーヌのいる場所へ案内してくれ」

「わかりましたこちらです」

 僕は、そう言うアーフェの後を追い、レーヌの元へと向かった。




 レーヌは、ウェストヘイルの教会でけが人に治療を施しており、その横ではお父様……オクトーが西方守護に指示を飛ばしていた。


「けが人は教会へ、西方守護は魔物からウェストヘイルを守れ、守備隊は配置終わったか?先行隊を急いで編成しろ!」

 僕は、そんな指示を出すお父様を見て、歳を取ったと言えまだまだ昔の勢いは健在だと心のどこかで胸をなでおろす。


 そんな父の姿を追いそうにはなるが、主であるレーヌに呼ばれたのだ、レーヌの元へと向かった。


「我らに再び立ち上がる力を、ライトヒーリング‼」

 レーヌが詠唱をし、けが人を癒しており、僕はそれが終わるまでレーヌの横で控える。


 流石に治癒術中に邪魔はできない。


 レーヌは一通り治癒が終わった後に、僕の方へ振り向く。

 その顔には少し疲れが見えた。


「ヴェルフ、今回は危険を承知でお願いしたいのですが……」

 レーヌはこのような状況には慣れていないのだろう、躊躇(ちゅうちょ)を感じる。

「先行隊の編成が先ほど終わりました、ヴェルフにはその副官の任について欲しいのです」

 レーヌの命とあればお安い御用だ。


「レーヌ様、その任喜んで引き受けましょう」

 僕はレーヌに一礼する。


「ヴェルフ、無茶はしないでくださいね」

 レーヌは優し過ぎだ、むしろこういう時に僕がいるのだから……でも悪い気はしない。


「レーヌ様がつけてくれたメイドのアーフェが美味しいお茶を淹れてくれるんです。帰ってきたらお茶でもしましょう、待っていて下さい」

 レーヌは僕の言葉に堅くなっていた表情が少し崩れた。

 僕は、レーヌを守れるだけでうれしいのだから、そんな不安そうな顔はして欲しくない。


「ヴェルフ約束ですよ」

「レーヌ様、約束ですよ」

 レーヌと約束をし、僕は教会を後にした。




 先行部隊の隊長の元に向かう、その任はウェルサが任されている様で、西方守護の兵士と魔術師が彼女の前で隊列を組んで待機している。

「ヴェルフ副官、この先何があるか分からない。よろしく頼むよ!」

「ウェルサ隊長、こちらこそよろしくお願いします」

 ウェルサは、僕の背中を軽く叩きながら、そう言う。


 ウェルサと僕が並ぶと、ゼクが声を張り上げた。

「これから先は、何があるかわからねぇ!!だけど俺らの中に腰抜けはいねぇよな!!」


 その言葉に、総勢20名の先行部隊の兵士が、魔術師が呼応し雄叫びを上げる。

 ゼクは優秀なまとめ役らしい。


「ではいくぞ!心してかかれ‼」

 ウェルサの号令と共に、僕達は魔力溜まりへと向かうのであった。







 ウェストヘイル北方の廃墟にて。

 街道から外れた場所に、うち捨てられた廃墟があった。


 その中から、誰かの苦しみもがく声が聞こえて来る。


「ノードラ、エルバー……ダメだ……」

「ラギュース、僕達はサーフェ様に素晴らしい力をもらったよ」

「アニキも早くこっちに来るでさ!!」


「ダメだ、俺たちは、俺たちは……」

 ラギュースは必死に抵抗していたが意識を次の瞬間、手放した。


 横たわるラギュースを見つめるのは、異形の化け物。

「僕達は、真実を知ることができた、偉大な方に尽くせる、それこそが喜び」

 エルバーだったそれは気味の悪い顔で笑う。

 彼には大きな羽が生えている。


「アニキ、俺ら先に行って待ってますぜ!」

 ノードラは人の形は保っているが、不自然なほどがっしりとした体躯へと変貌していた。


「可愛い子、早くあなたもこちらへおいでなさい」

 サーフェはそう言って、気絶したラギュースの頭をなでる。


「行きなさい、私の可愛い坊やたち」

 エルバーと、ノードラはその言葉を聞くと、サーフェに一礼しその場から姿を消した……


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