18話 糸口
僕は、死んでいるとしても生きた期間はたったの13年、経験も知識も13歳に変わりない。
13歳の魔術師の中では優秀かもしれないが、上には上がいる。
黒の首の首領に負けないように僕も強くならなければいけない。
次の日、僕が相変わらず的に向かって簡易魔術を撃ち込んでいると、僕に誰かが後ろから声をかけてきた。
「ヴェルフ様、久しぶりだね。レーヌ様に取り立ててもらった後で会うのは初めてじゃあないかい?」
振り向く僕は驚く。
いや、驚くほどではないだろうが、僕は魔術の訓練に夢中で頭の中に彼女のことなどなかった。
「ウェルサ、そう言えばここに来て挨拶を失念していましたね」
「いいんだよ、元気そうでなによりじゃないか。起きて早々に魔術の練習とは精が出るね」
僕の言葉にウェルサはそう言って笑う。
「僕は……もっと沢山の人を守りたいんです」
僕は、黒の首の首領を思い出す。
恐ろしい敵だ、僕は足元にもおよばない。
次にあった時に勝てるイメージが思い浮かばないのだ。
「何を焦っているかわからないけど、たまには気を抜くことも必要だ。そう言えばレーヌ様が呼んでいたよ。なんでも、ヴェルフ様の魔力の淀みを治療したいと言っていた」
確かに魔力を使うたびに体に痛みが走るのは、魔術師である僕にとって致命的である。
黒の首の首領に負けたこと、そして、魔力を使用した時に感じる痛みをどうにかできないかと思い、的に撃ち込む魔力を調整して糸口を探していた。
「ウェルサ、ありがとう。レーヌ様には感謝しないといけませんね、僕のためにそこまでしてくれるなんて」
レーヌは少し優しすぎるのかもしれない……
悪いことではないが、領主として、辺境令嬢として優しさが仇にならなければいいが……
「ウェルサ、今度は軽く練習に付き合って欲しい。ウェルサほどの剣術なら、僕の相手として申し分ない」
恐らく、西方守護に属しているルーン・スタック王国兵の中では剣術ならそこらの兵士よりは強いはずだ。
「ヴェルフ様、あなたの魔術の前では黒焦げにされかねない冗談はよしてほしいね。それじゃ私は兵舎に戻るよ」
「ええ、また僕の話し相手になってください」
ウェルサは兵舎に向かって、僕はアーフィを従えレーヌの元へと向かうのであった。
そんな僕とウェルサを物陰から見ている人物がいた。
「後からのこのこ、しゃしゃり出てきて」
その人物は、不機嫌そうにそう言うと、その場から去っていく。
「痛い目に合わせてやる‼」
その人物はそう言って兵舎へと戻っていくのであった。
僕はレーヌの部屋へとたどり着き、ドアをノックする。
「レーヌ様。ヴェルフ、ただいま参りました!」
「ヴェルフ、どうぞ入って下さい」
レーヌの声が扉の奥から聞こえた。
アーフィが僕の代わりにドアを開ける。
僕がレーヌの元にたどり着くと、レーヌが難しい顔をして、教会の刻印の入った古い治癒術の本とにらめっこをしていた。
昔、母が持っていた治癒術教本に似ている。
僕は懐かしさを感じた。
「ヴェルフ、よく来てくれましたね」
本から顔を上げてレーヌは僕の方を見て歓迎の言葉を述べる。
「それでは……現段階ではヴェルフの魔力の淀みを直すと言うことはまだできないのですが……緩和させることはできるので、私に任せて下さい、ヴェルフこちらへ来て背中を見せて下さい」
僕はレーヌの言う通りにレーヌの近くに寄り背を向けた。
「それでは、始めますね」
レーヌはそう言って、僕に魔力を送る。
「ヴェルフは私から送られてくる魔力を少しずつ放出してください、ヴェルフの体内の淀んだ魔力を使うのではなく、淀んでいない魔力をヴェルフが放出し使うことで本来のヴェルフの魔力の使い方を体に思い出させる。要はリハビリの様な感じです」
レーヌの言う通りに僕は魔力を放出し、治療はしばらく続いた。
「ヴェルフ、具合はどうですか?」
僕はおそるおそる簡易魔術で手のひらに試しに氷の塊を生成してみる。
「痛くない……!」
僕は確かに手ごたえを感じた。
レーヌもうれし気である。
「レーヌ様、ありがとうございます」
僕はレーヌに深く頭を下げる。
「家臣の力を引き出すのも主の務めです、治療は今後とも続けていきます。この方法は自分でも魔力を使いながら慣れることも必要なようです、より精進なさい」
レーヌの言葉に僕はもう一度頭を垂れた。




