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█の見た平和  作者: 白河田沼


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第08話 歓迎会

「所長命令です、首席補佐官

皆を今すぐ集めなさい。

私の歓迎会を明日午前10時から行います。」

そう「神」のように笑んでフリージアは言った。

まるで子供のような提案を、

一歩も臆する事もなく口にした。



「情報の種計画」に記された特記事項通りに







◻︎

WPRI研究員は単純に三つの役職に分かれている。

所長、

首席補佐官

研究員のこれら三種類に分けられているのだ。

ローズ教授として所長になったフリージアは一番上の所長という役職に当たる。

カーネーション・イエローは首席補佐官であり、

ヨセフ・ブルーリィンカーネーションら普通の研究者は研究員にあたる。

七国中から集められた優秀な人材である彼らは、各々「平和」に関する実験を行ってきた。

性的に堕落するまで霊子動力学などにおいても権威だったのだ。









「・・・・」

沈黙しながらタートルネックを裾から捲り、脱いで、

ブラジャーのホックを外す。

床に転がる下着と衣類を洗濯機に入れて、

最後にショーツを脱いだ。

裸になったフリージアの体は美しかった。

肌は白く瑞々しく、

髪に隠された乳房は15歳という年にして豊満だった。

くびれは芸術品のように美しく、

臀部は年若いながらしっかり肉が付いていた。

沈みかけの上弦の月のような瞳を持つ、黒髪赤目の魔女、それに相応しい美貌とスタイル、

171cmという恵まれた身長を持っていたフリージアである。




けれど本人がその事に無頓着であるというのが独特の空気を生んでいた。


体を売り、

人を殺して生きてきた彼女は、

赤子の頃、誰とも知らない者の死肉を喰らって「平和」を目指して生きてきた過去を持つ。

ローズの意思を継ぎ、

「対話によって生まれる「平和」で形作られた誰も憎む必要の無い世界」を目指して生きてきた。

その過程で半ば凌辱されるような行為の果てに子を孕もうと、その子にさえその「平和」を見せるつもりだったフリージアである。









「・・・・・」

シャワールームに入り、レバーを引けば

シャワーヘッドから冷たい水が勢いよく放出される。

一通りそれを浴びればシャンプーを頭に付け、

冷水を温水に変える。

鏡に映った泡立つ頭を気にもせずフリージアは髪を洗った。

洗髪が一段落すれば、

けれど、レバーを引き温水で泡を丁寧に洗い流した。

流し終われば、リンスを髪に染み渡るように付ける。

その後、丁寧に手の平で包むように洗い流した。

背中まである黒髪、

それに付いていた全ての泡を、

洗い終わったのを確認して棚に置いたタオルを手に取り、ボディーソープを付ける。









「・・・・存外、肉が付きましたか。

私にも運動が必要かも知れませんね、ジムで体を動かすのがいいでしょう。

確か地下一階、一階にある食堂の真下にあった筈です。

階段を使う為に研究員の部屋を横切るのは何度繰り返しても、

何とも言えない気分になりますが運動する為にも階段を使った方が良いでしょうね。

エレベーターは確か動かないままでしたっけ」

そう独言しながら、腹に付いた肉を抓った後タオルを用いて上品に肌を洗う。

白く瑞々しい肌が、

本人が思うよりは引き締まった体が、

全て泡に塗れればレバーを引いて温水で洗い流した。

体に付いていた全ての泡を

微かな汚れと汗と共に洗い流せば、

けれどフリージアは何と無しに背中まである長い髪を払った。









「・・・・」

水滴が谷間を伝い、臍を通過し

鼠蹊部を流れる。

腿の内側に水滴が到達すれば、

けれどそれを気にする事もなく沈黙の内にシャワールームの扉を開いた。

そうして前を見れば、

開いた扉の奥、丁度そこには居た。









「・・・さっきぶりだな、姉上」

傲慢の一族次期当主ルシファー・エフェソスが目の前に立っていた。

大罪術式次期後継者である彼が腕を組みながら、

開いた扉の奥でフリージアを見据えて立っていた。

全裸のフリージアの目の前で、

けれどそんな事態に恥じらう事もなくタオルを取って髪を拭けば、

けれど、「神」のように笑んでフリージアは言った。









「そうですね、兄弟姉妹(きょうだい)を名乗る愚か者、

では始めましょうか、

明日の歓迎会、そこで用意するサプライズに関する理論の打ち合わせを」

「神」のように笑んでタオルを胸に留めればフリージアはそう言った。

して、フリージアはこう言う。

まるで淫靡な娼婦のように淫蕩に微笑んで












「まず、服を着ますので扉を閉めますね。」

ただ静かにそう言えば、

バシンという音がする程にフリージアは扉を閉めた。








◻︎

ルシファーとの話し合いの結果、

歓迎会の開く場所は食堂に決まった。

購入は売店でパーティは一階の食堂で行う事にルシファーとの話し合いで相なったのだ。

"人類の未来の為に"「平和」を研究する彼ら、

WPRI研究員の彼らに送るに相応しい「サプライズ」を企画したのだ。

それは単純に言ってしまえば、

フリージアの魂を核として作った霊子圧縮炉を複製した物、その初めての実験である。











「「ローズ教授、所長就任おめでとう御座います!」」

クラッカーが鳴り、カラフルな紙テープが舞う。

所長命令を出し、

ルシファーと明日の歓迎会のサプライズに話し合った翌日。

その午前10時、

フリージアは研究員達からの歓迎をクラッカーの鳴る音と共に食堂で受けていた。

首席補佐官を連れて食堂に入る為の角を曲がった時、

聞こえたその騒がしいまでの音と

浴びせられた紙テープを手で払いながらも、

けれどフリージアは言葉を紡ぐ。












「有難う御座います。

世界平和研究機構所長として非才なこの身が歓迎して頂けたようで何よりです。

急な呼び掛けで何人かは欠けてしまった様ですが、

これから楽しいパーティが始められそうですね。」

予想外の笑顔の歓迎を気にもせずに社交辞令としてフリージアはそう告げた。

フリージアの歓迎会の準備を主導していたのは首席補佐官である。

カーネーション首席補佐官の呼びかけに応じた一部の者達が、

自分達のあらゆる予定をキャンセルして、

ローズ所長の歓迎会の準備を手伝ったのである。













「こちらこそ、彼の有名なローズ教授に所長になって頂けて嬉しいです。

パーティについてはこちらで用意しているのでローズ所長は椅子に座っていて下さい。」



「どうも、では遠慮なく座らせて頂きますね。」

首席補佐官のその言葉を聞けば、

研究員の一人が食堂の奥にある椅子の方に手招きした。

その椅子に座り、

けれどこのパーティについて振り返る。

顧問として在籍する事になったルシファーの歓迎会をも兼ねたこのパーティは、

しかし、ルシファーの横にローズ所長が座る形として分かりやすく表明されていた。

このパーティはローズ所長とルシファー顧問、

二人の為の歓迎会だとパーティー会場に吊るされた垂れ幕が示していたのだ。













「オリーブの輪、WPRIの象徴であるそれが示す「平和」を成す為に私は努力していきたいと考えています。」



「俺も殆ど同じだ、ここの顧問に相応しい働きをこれからもしていきたいと思う。」




「・・ええ、宜しくお願いします!

ローズ所長、ルシファー顧問!!

はい、これはケーキですよ。

電気消しますんで、火を一緒にふーと消して下さい」

その首席補佐官の言葉と殆ど同時に電気が消された。

いつの間にか目の前に現れた、

蝋燭の灯ったショートケーキを前にして二人同時に息を吹きかけた。

綺麗に消えたその蝋燭の火を見れば、

電気が付くほぼ同時に研究員の殆どが拍手をした。













「改めて就任おめでとう御座います、ローズ所長!

ルシファー顧問!!

自分事のように嬉しいです!!!

さぁ、ケーキを分けましょう、食べましょう!」

嫉妬に満ちた瞳をした、首席補佐官

彼女がそう言えば研究員の一人がナイフを取り出し、ケーキを等分に切り分けていく。

切り分けられたショートケーキを見て、皿を差し出し

プラスチックのフォークごとそれを受け取れば、

分かられたケーキを更に切り分け、

口に運ぶフリージアである。














「美味しいですね、

嫉妬の街のスラム街では決して口に出来ない代物です。

首都に行ったのでしょうか、

このケーキは私の思い出になりそうです」




「そうだな、大した物だ。

傲慢の街の当主が住む「館」でも食べれるか食べれないかの代物だろう。母上が欲しそうな食品だ」

「そう言って頂けて嬉しいです、買ってきた子も喜ぶと思います。」とカーネーション首席補佐官がそう言った。

買ったの貴方でしょうにと心の中で独り言ちつつフリージアは続けてケーキを口にする。

自身の披露するサプライズに思いを馳せながらもルシファーを見れば、

黙ってパクパクとケーキを口に運ぶ彼の姿があった。











「ルシファー、口にクリームが付いてます。」



「ああ、すまない、姉上」



「誰が、姉ですか、誰が」

じとっとした目でルシファーを見つめながら、

そんな会話をしつつ、

ルシファーのほっぺに付いたクリームをポケットから取り出したハンカチで拭いた。

拭ったハンカチを白衣のポケットにしまえば、

けれど研究員達が「おー」と声を上げた。

何の声だろうかと疑問に思えば、

けれど研究員達が思い思いに質問を投げかける。













「ローズ教授はルシファー顧問の姉なんですか?」



「二人って兄弟姉妹(きょうだい)にしては割と見た目が違いますよね、どっちがアドナイ様寄りなんですか?

いや、言わないで下さい。

見たら分かりました!」




「そもそも二人って兄弟姉妹(きょうだい)だったんだですね!

これって色欲の街のメディアでも言われてない一大ニュースなんじゃ!?」

質問、いいや質問にもなっていない言葉達に、

適切に思考しながらもけれどフリージアはしっかり質問に答えを返した。

して、質問の嵐に晒されればいつの間にか時間は12時を過ぎていた。

いつの間にか食べ終わったケーキを片付けて、

パーティで散らかったゴミを片付ければ、

食堂の中央に掛かった垂れ幕をも片付ける。

それが終われば、

けれどフリージアはこう言った。

「私からもサプライズがあります。パーティではありませんが楽しみに着いてきて下さい。」と












「ローズ所長のサプライズ!

楽しみですね、ルシファー顧問!!」




「ねぇ、ケーキ食べ過ぎたー!

皆置いてかないでー!!」



「自己管理は研究者の基本でしょう。

何、年寄りの肩でありますが、

私の肩を貸しましょう!」

階段を上がりつつも、フリージアの後ろを着いて来る者達の賑やかな声が聞こえた。

後ろに着いてきている首席補佐官や研究員達を一目見て、フリージアはルシファーに目配せをした。

霊子圧縮炉が起動出来たのか暗黙の内に聞いたのだ。













『問題無い、全ての準備は首席補佐官と共に終えてある。』

そんな魔素を介した通話、

念話が聞こえればけれどフリージアは視線を前に向ける。

今、向かっているのは二階の所長室、

その奥にある研究室だ。

壊れたエレベーターの代わりに階段を使って向かっているその部屋は、

霊子コンピューターを中心とした部屋であった。

普段実験に使うその部屋には、

今朝、フリージアが自身の霊子圧縮炉を元に集めた情報、それから作り出された霊子圧縮炉試作第一号があるのだ。

誤作動すれば都市すら滅ぼすそれをついに作り出したのである。



それを用いてする実験は情報子の生成であった。

理論上の物質と言われたそれを、

ローズ所長自身によって提唱された「情報の泡理論」、

それに提唱されたその物質を今回作り出すのである。

証明不能、

全知全能のアドナイをも凌ぎ得る頭脳を持つと言われるルシファーですら生成出来なかった情報子。

それの存在証明を研究員達の前で行うのだ。















「さあ、二階です。もうちょっとで着きますよ。」

とフリージアが穏やかに振り返って言えば、

首席補佐官の後ろに居る研究員達が「はーい」と言葉を返した。

性的に堕落していたとは思えないその可愛らしい返事に、最近育ってきた情緒を使い可愛らしいなと考える。

そうして二階の奥の扉、

その横にある液晶端末に「戒めの鎖」を翳せば刻まれた紋様が光りだす。

「訓戒の錠前」を用いても開くその扉を見つめていれば、けれど扉が金属が噛み合うような音をさせながら形を変えた後、

数度回転するように錠前自体が駆動すれば、

しゅーと空気を吐き出すような音と共に開いた。















「ここは・・・」



「実験室ですね、

こんな退屈な場所に何のサプライズがあるのですか、ローズ所長?

まさか、ここで私達に「情報の泡理論」についての証明を手伝えと」

「・・・・・」沈黙しながらも部屋の奥の扉に進めば、後ろを振り返ったフリージアである。

首席補佐官とルシファー二人以外の顔は酷い物だった。

嫉妬するような瞳、

信頼するような瞳、

畏敬するような瞳が交錯しながらも、

「嫌悪と疑念」というただ二種類の感情が渦巻いていたのである。

その表情に研究員達の前で、

初めて魔女のように笑めばけれど前を向き、扉を開いた。














「・・・・・」

そこにはただ多くの管が天井を覆う様にぶら下がり、

して「戒めの鎖」と同質の物質で

逆円錐状に束ねられた管と

圧縮装置にも似た構造のそれ、

そしてそれを支える、上のそれよりは小さな円錐状の管の束があった。

スマホを三脚に立ててその様子を撮影している状況も含めてその光景は異様の一言だった。

そんな様子を察してか、

振り返り、「神」のように笑みながら瓶底眼鏡を掛け、フリージアは言葉を吐く。











「今(・)か(・)ら(・)こ(・)の(・)手(・)元(・)に(・)あ(・)る(・)霊(・)子(・)と(・)霊(・)子(・)圧(・)縮(・)炉(・)試(・)作(・)第(・)一(・)号(・)を(・)用(・)い(・)て(・)情(・)報(・)子(・)を(・)生(・)成(・)す(・)る(・)実(・)験(・)を(・)行(・)い(・)ま(・)す(・)」

そう言えば、霊子を圧縮装置の下にあるシリンダー室に聖人のように笑みながら入れるフリージアである。

けれどポケットから取り出した点火装置の様なそれの赤いボタンをポチっと押した。

瞬間、束ねられた管が電気を帯びる。

圧倒的な魔素がその圧縮装置に加えられる。

瞬間、研究室中が白い光に包まれた。











「・・・出来ましたね。」

そんな言葉と共にシリンダー室を開け、フリージアが中に入った霊子、

いいや、白く光るその物質を握り取り出す。

手を開き、手元に浮かぶその白を見てフリージアはそう言った。

そうして、「神」のように笑めばフリージアは言葉を紡ぐ。













「第一回情報子生成実験これにて完了です。」

瓶底眼鏡のブリッジをくいっと上げて、

「神」のようにフリージアが笑めば、

「「え」」という信じられないような声が研究員達の口から漏れた。

してローズ教授としてSNSに挙げられた情報子生成実験の動画は百万回再生を突破し、

その理論を正式に公表したローズ所長は当然時の人となった、その実験を行ったWPRIは営業利益を四割程回復させる。


「情報の種計画」に記された特記事項通りに

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