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█の見た平和  作者: 白河田沼


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第07話 子供のような所長命令

「よく出来ました。」

と「魔女」のように笑みながら、

けれど母親が娘を褒めるようにただ抱きしめてアドナイはそう言った。

して、皆が眠ったその日の夜に、

傲慢の一族当主である大罪の術者の一人、

傲慢の術者の工作と決定により、

国際司法裁判所への出廷命令に従い黒の魔女として死刑判決を裁判で受けた後、

監獄から抜け出した脱獄犯としてフリージアを失踪扱いとして処理し、異例尽くしの天才"ローズ教授"としてのWPRI所長推薦が通り、

翌日、国際連合会議によってフリージアはWPRI所長へと抜擢された。







◻︎

WPRIの所長という立場は呪われた立場である。

何でもなってしまえば人では居られないだとか。

「覚醒者」の人体実験を主導しているだとか。

魔女と手を組んでいるだとか。

・・不穏な噂が絶えなかったのだ

嫉妬の街の外れの森にあるこの研究所は他にこう言われていた、

「魔女の墓場」と













「ここですか」

思わずそんな言葉がフリージアの口から漏れる。

「戒めの鎖」からじゃらりという音が鳴るのも気にせずに腕輪のように掛けたフリージアである。

今のフリージアは魔素を操れない。

子の成長を止め、多重結界を用いて守る事は出来る物のけれどそれだけの力を行使するのが限界だった。

そもそもローズ教授として魔術は一度も使っていないフリージアである。

黒いタートルネックを着込み、

ボトムスを来たその姿は、

着痩せしている故かどこか神秘的な様相をしていた。

背中まで伸びた黒髪を結びもせず、

白医に袖を通し、当たり前のように立つ彼女は、

けれど沈みかけの上弦の月のような赤い瞳を前へ向け、自身の事について振り返る。







色欲の街で情報の泡理論についてメディアの前で話し、

怠惰の街でローズ教授としてSNS活動に精を出した結果、有名なインフルエンサーに成っていた。

嫉妬の街という己の育った場所に居場所を求めたフリージアはけれど今は居ない。

だからこそ、今のフリージアは目の前の問題についてしっかりと対処する気があった。











「存外、綺麗な場所ですね。

私を買った研究員がいる場所とは思えないです。」

扉の前に立てばけれどじゃらりと「戒めの鎖」が鳴るのを理解した。

して「戒めの鎖」を扉の側に埋められた液晶画面に押し付ける。

刻まれた紋様が光れば、

けれど、扉がしゅーと空気を吐き出すような音と共に開いた。

歩く、歩く、歩く

暗闇の中を歩いていけばけれど再び重厚な扉があった。

白髪の混じった壮年の姿をしたWPRI研究員、

フリージアを買った男、

「君の最も嫌う方法と時に君に死を送ろう。」と言った男はここに居るとアドナイは言っていた。

同時に彼がフリージアの後見人という立場を買ったとも、

それについて何かを思うフリージアでは無い。

自分の後見人という立場を買う程の執着を見せたヨセフに特に思う所が無いフリージアである。

だからこそ、その白髪の混じった壮年の姿をした研究員ヨセフはそこに居た。











「シア嬢、久しいな。元気か」




「元気ですよ、ヨセフさん。久しぶりですね」

「また、私を買いますか。」とそんな言葉と共に両腕を組み、

腰を屈め、上目使いでヨセフを見つめながら服越しに突き出すように自身の胸を寄せる。

着痩せしているそれはけれど、

寄せられた事によりその隠し切れていなかった豊満な胸のラインを美しくけれど、確かに強調させた。

「覚醒者」にあらずんば人に在らず、傲慢の街の国民にあらずんば人に在らず。」という傲慢の街に住んでいた時によく聞いた言葉を、

どうしてか思い出すフリージアである。

フリージアは常時発動型の「覚醒者」である。

黒の魔女として都市を滅ぼせる程の魔力を持つフリージアは、

けれど未だに男に股を開いていた。

挿入はさせていない物の日々の憂さ晴らしの為に男を、その白魚のような手で慰めたりなどしていたのだ。

生活費は傲慢の術者であるアドナイ・エフェソスから貰っている物の、

未だに自身の体を男に差し出す事がやめられないフリージアである。




フリージアとて男に抱かれる事が目的ではない。


「館」暮らしで溜まった性欲を、

一夜にして復興した下街に行って抱かれる事によって発散していたのである。

その母親にあるまじき奔放さはけれどフリージアとて理解している。

一週間にも渡る「館」での暮らしで、

けれどフリージアはアドナイに着せ替え人形のように礼装を着せられた。

その多岐に渡る地獄は、けれどフリージアにとってこんな思いを齎したのだ。

「何で、私ここに居るんだろう。」という想いを

その思いと溜まった性欲を胸に、

一夜にして復興した傲慢の街の下町に繰り出す事で発散していたフリージアである。

だからこその誘惑にけれどヨセフはこう言った。













「あんたを抱くってのも悪く無い選択かも知れないが、

お坊っちゃんが許してくれないんだ。

ここに俺が立ってるのは、

大罪の術者の一人であるアドナイ様が後見人の立場を譲ってくれた結果の一つだ。

俺はここであんたを迎えないと行けなかった。

あんたの「戒めの鎖」に管理者権限を与える為にな」

そう言えば淫猥に胸を強調していたフリージアの腕を解き、「戒めの鎖」に触れたヨセフである。

相変わらず消臭剤を被りましたと言わんばかりの無臭、

それに気を取られていれば・・

「戒めの鎖」に刻まれた紋様が光を放つ。

その周囲を照らす程の光を発した「戒めの鎖」に目を細め、けれど再び開くフリージアである。

そう見ていれば、七色に光った後何事もなかったように元の状態に戻った「戒めの鎖」があった。












「管理者権限は譲渡出来た。

これで名実共にあんたはここの所長って訳だ。

何か聞きたい事はあるか、

お坊っちゃんに許されている範囲なら答えよう。」




「ならば聞きたい事が一つ、

貴方は「戒めの鎖」のような物を付けているけど、それって本物ですか?

それとも趣味の悪い模造品」

「これは製品版って奴だな。」と手を離しながら静かにヨセフは言って、続きの言葉を語りだす。

「訓戒の錠前」

というこれは腕輪の形をした物体であった。

壊れた手錠のような腕輪と鎖の付いた「戒めの鎖」、

それと違って「覚醒者」としての魔素を操る力を抑える効果だけでは無く、

使用者にWPRI研究員としての権限が付与されているようだ。

今、フリージアが所長としての立場の証明として受け取ったのはその権限の管理者権限である。















「WPRI所長としての権限を与えたんだ。

何か言いたい事はあるかな、

あんたが"ローズ教授"として話すなら答えよう。」






「・・・特にはありません。貴方の白髪が増えるだけでしょうから」

そう軽口を叩けば、ヨセフの横を通り過ぎる。

はっきりと光を吐く液晶端末に「戒めの鎖」で触れる。

その紋様が音と共に光り出せば、

けれど扉が金属が噛み合うような音をさせながら形を変えた後、

回転するように錠前自体が駆動すれば、

しゅーと空気を吐き出すような音と共に開いた。

して、その光の刺す先に一歩踏み出す。

そうして「神」のように笑めばフリージアは見た。











「久しぶりだな、姉上。」

そんな言葉を大罪術式次期後継者、

十字の瞳を持つ、金髪金眼の男

ルシファー・エフェソスは救世主然とした態度でそう吐いた。大きい筒状のそれ、

霊子コンピューターを囲みながらキーボードを叩く研究員とコンピューター、

霊子濃度計測器を見た後、

フリージアは「神」のように笑みながらこう言った。










「久しぶりですね、兄弟姉妹(きょうだい)を名乗る愚か者。

では始めましょうか、

情報の種計画の第三段階▇への挑戦の足掛けを」

そう、静かに言った。











◻︎

ルシファー・エフェソスが実の弟である事をフリージアは知っていた。

「君(わたし)には一つ下の弟が居るよ。」と「館」に居た時にアドナイ・エフェソスから聞いていたのだ、

14歳という見た目とは合わない、

年頃の年齢をルシファーがしていた事に内心驚いていた事をフリージアは覚えていた。

そんな様子を知っていたからか、

アドナイ・エフェソスは全知全能の「魔女」としてこんな言葉を告げたのだ。

「「覚醒者」にあらずんば人に在らず、傲慢の街の国民にあらずんば人に在らず。」

・・この言葉の真意をWPRIで所長として働きながら知っていきなさい。」とアドナイに言われたのである。











「・・・・」

沈黙しながらも黒いタートルネックに顔を埋めるフリージアである。

「戒めの鎖」がじゃらりと鳴るのも気にせずに腕を組みながらフリージアは周囲を見渡した。

横に立つルシファーを見ながら、

霊子コンピューターの前に座る

首席補佐官カーネーションのコンピューターを後ろから覗き見ながら、

けれどタートルネックから首を出し、

腕を解いて指示を出す。













「霊子濃度あと10%上げてみましょうか。

情報の泡理論に基けばこれくらいの増加は問題では無い筈です。」




「・・・分かりました、"ローズ教授"」

嫉妬に満ちた瞳をした、首席補佐官の横顔を気にせずにフリージアは指示を飛ばした。

キーボードをカタカタと動かしながらも、けれどフリージアは考える。

WPRI研究員、彼らは優秀である。

国際連合会議によって選ばれた人材であるWPRIの研究員は基本的に皆が、

皆それに相応しいスペックを誇っていた。

七国中から集められた優秀な人材がここに集まり、各々平和に関する実験を行っていたのだ。

問題なのは、目の前にいるルシファーとカーネーション意外の殆どの研究員が、

嫉妬の街のスラム街に繰り出し女を買っている事か







こうして、フリージアの目の前に居る

首席補佐官であるカーネーションでさえ昨日は男と交わりに嫉妬の街の下町に行っていたという。

一週間程前まで復興した傲慢の街の下町に男漁りに行っていたフリージアがどうこう言える物では無い、

無い物の研究者としてそれはどうなのかと考えるフリージアである。

WPRI所長として過ごしたこの一週間はフリージアにとっては過酷だった。

性欲を発散する暇もなく実験に打ち込む過酷な日々に単純に疲れていたのである。

霊子動力学教授という胡散臭い職位にしては、

真面目なフリージアらしいこの状況にけれどルシファーは言葉を紡ぐ。















「WPRIの研究員達が性的に堕落している事は七国の間でも有名だ。

実際、色欲の街のメディアに何度も報道されているからな。この前もスラム街の子らがここの研究員達について取材されている姿を見た事がある。」






「一週間前、私が所長としてここに来た事も皆んな知らなそうですね。

私が来た時にいたヨセフも今は居ませんから。

どうしましょう、兄弟姉妹(きょうだい)を名乗る愚か者。何かいい案はありますか?」

「・・・そう、簡単に答えられたら苦労はしないさ」

という言葉をルシファーが吐いたのを聞いた、フリージアである。

フリージアには考えが二つあった。

まず一つ目、WPRIの所長命令として連絡網を回し、皆を呼び寄せる。

して二つ目は所長歓迎会と称して皆に自然に呼びかけて人を集めるという物だった。





WPRI研究員にはそれぞれ部屋が与えられていた。


一階の研究員の部屋と、

二階の所長室と実験室、

仮眠室に分けられたそれらの部屋は

嫉妬の街の外れにある森の中でありながら上下水道を完備し、ガスや電気を通して、

インターネットすら内側のサーバーで完結させながらも地下に大型浴場をも完備していた。

娯楽室のある地下二階などは埃を被ってしまっている物の研究員の心身を労った施設で構成されているのだ。

映画館すら地下三階に完備されたここは、

正しく小さな「街」と言えた。

ショッピングモールが無いのが気になる物の売店は存在するこのWPRI研究所は、

本当の意味で世界最高峰の実験設備をも内包した、

総合型実験施設だったのだ。







そう、考えてけれど何かを思い付いたフリージアである。

思い付いた考えをけれど目の前でキーボードを叩くカーネーションと、

横に立つルシファーに聞こえるように口を開いた。

「神」のように笑ってこう言った。





















「所長命令です、首席補佐官

皆を今すぐ集めなさい。

私の歓迎会を明日午前10時から行います。」

そう「神」のように笑んでフリージアは言った。

まるで子供のような提案を、

一歩も臆する事もなく口にした。



「情報の種計画」に記された特記事項通りに

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