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█の見た平和  作者: 白河田沼


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第02話 第二次七国戦争の始まり

対話によって生まれる「平和」

誰も憎む必要の無い世界を創る為にフリージアはこの四年間を行動した。

「それは「平和」の為に成りますか。」という言葉を口癖のように吐きながら活動したのだ。

ローズから貰った圧倒的な魔力量と、

優秀な魔術式を日々の鍛錬を持って鍛え上げ、

かつ人を殺す依頼に腐心していれば、

見知らぬ男に股を開く必要性は依然として無くなっていた。






金が集まったのだ、

それを使って旅をして、「傲慢の街」という国家にて、とある理論をローズの名義で化学論文誌に持ち込んだフリージアである。

情報の泡理論というそれは

真空崩壊した後の世界に出来る真の真空の操作を表す言葉である。

ローズの名義で提唱したその言葉を枕言葉にしかし、この理論は飛躍する。

彼女はその真空崩壊した後の世界に、

物理法則の書き変わった新しい世界に、

事前に「情報の種」という情報の塊を入れる事によって自身の思うが儘の物理法則を構築させ、

人類の手によって制御された世界を創ろうという理論を提唱したのだ。

しかもそれだけでは無い。




情報の泡理論を元に自身の強さを磨き上げたフリージアである。


情報の種を構成する物質の根源である情報子、

霊子結合を圧縮し、解除して情報子を創り出す術を常時発動型の魔術式の一つに組み込んだのである。

三つまで同時に常時発動出来るフリージアの魔術式はこの理論を元に飛躍した。

同時に発動する魔術式を増やすのではない。

情報子同士がぶつかり合い、増殖する時に生まれるエネルギーを用いて、

魔素を爆発的に増殖する事の出来る魔素融合炉を造りだしたのだ。

フリージアの魂を起点に動くそれは正しく、

異世界で垣間見た不老不死である魔女(ウィッチ)に至る道程であり、

フリージアが人間では無く「魔女」という全知全能の存在に近づいた証拠であった。



情報の泡から垣間見たその存在が支配する世界は、

魔女の血という全知全能の存在、

魔女(アドナイ)の血液を用いて不老不死の魔女(ウィッチ)へと至れる世界だった。

並行世界とも言うべき、

不確定な未来の可能性の一つをフリージアは情報の泡を疑似生成する実験の折り一瞬、見たのだ。





それを見た経験を用いてフリージアは自身の魔術式を書き換えた。

体中に奔った魔術式を全身の殆ど全てに走らせ、

血液に魔素を通して人間としての生理機能のくびきから脱し、

魔素融合炉の理論を応用し、

霊子圧縮炉を発明し、自身のエネルギー効率を都市を滅ぼせる程の魔力量に跳ね上げた。

魔術式を半ば以上まで量子コンピューターにも似た、

けれど、決定的に違う霊子コンピューターに作り替えた。

情報子を体に蓄え、「情報の種」を体の中で育みながら

けれど、フリージアはこの四年間を用いて加速度的な成長を遂げたのだ。

その時には既にフリージアを殺せる者はこの世から居なくなっていた。












「・・・・・」

コーヒーを飲みながら、脚を組み新聞を見つめる。

片手でスマホを操作した後、

沈みかけの上弦の月のような瞳を持つ、黒髪赤目の少女

その肩まで伸びた髪は、

この四年間で背中にまで伸びていた。

着痩せしていながらもワイシャツを着込んだ彼女は、

しかし、パンツスタイルでありながら大人としての色気を内包した15歳という年相応の少女の姿をしていた。

だからこそ、見て振り返る者は数知れない。

好奇の視線を向けられる事もあったし、

驚愕した瞳をされる事もあった、

下品な視線を向けられる事も多々ある

けれど本人は四年前と同じ様にそれを気にしなかった。

それを証明する様に、

同じ手で器用に挟んで持った新聞を心の中で読み上げる。




「傲慢の街」にて"ローズ"の名義で化学論文誌に上げた論文、


第二次七国戦争の予感への恐れの見出しの下、

各国の戦争と紛争の話題の次、

情報の泡理論について議論が白熱しているという見出しを読み、

思わず「神」のように笑んだフリージアである。

面白かったのだ

見知らぬ男に股を開く感情をすら知らない者達が、

名も知れない人間の胸にナイフを突き立てる感覚すら知らない者達が、

最後には世界を壊し、物理法則を書き換える情報の泡理論について非倫理的だとか、

人道に反するだとか言うこの状況が、

フリージアにも人を嘲笑するような心が育まれつつあった。




ところで情報の種「計画」という物をフリージアは進めていた。

一段階目、情報の種の生成と演算準備

二段階目、情報の泡の疑似生成実験

三段回目、█への挑戦

という三つの段階の中で、フリージアは今第一段階の「準備」に取り掛かっていた。

自身の体を魔素融合炉に変じさせ、それを触媒に霊子圧縮炉から情報子を作り出し、

情報の種を自身の体全てを用いて育んでいたのだ。

それを知ってか知らずかスマホの中の人々は口々にこう言う。







『情報の泡理論、あれは暴論だ。

そもそも情報子は存在するかも分からない理論上の物質だし、誰の力を以てしても生成できなかった。

傲慢の一族の次期当主ルシファー・エフェソス様も同じだ。』




『当主である、アドナイ・エフェソス様をも凌ぎ得る頭脳を持つあの方が失敗したんだ!

このローズって奴も出鱈目を言ってるに決まってる!!

そもそも公の場に数少ない回数しか顔を出さないのがいい証拠だ!!!』





『こんなに論争されてるのに、

一度も姿を現さないなんて何を考えているのでしょうか、ローズ教授は。

それとも死んでしまったのですか、嘆かわしい

非凡な才能を持ちながら、

15歳という年齢で知られた年若き天才の筈なのに凡人のように自殺なんて展開はつまりませんわ』

『そもそも娼婦上がりのスラム育ちだって聞いたぞ。』という呟きの映ったスマホの画面を片手でスクロールするフリージアである。

机に置いた新聞の見出しを目で追った後、

けれどコーヒーを片手で一杯飲みフリージアは足を組み直した。




下らない論争について、フリージアが何かを憂う必要は無い。



この事態はある程度織り込み済みの事態であるのだ。

というよりむしろ予想通りというべきか、

ともかく「傲慢の街」の民衆が国際連合会議という実質的に世界を統べる組織の発表を待たずして、

WPRI、フリージアの体を買ったあの白髪の混じった壮年の研究員の所属する、

世界平和研究機構(通称World Peace Research Institute)に直訴する事態になったのだ。

他の国々の民衆と傲慢の街の国民がインターネットで争うのは予想通りだった。

それよりも気になるのは第二次七国戦争の予兆についてと、

各国の小競り合い戦争で生まれる死傷者達についてだ。

七国の情勢について気になったフリージアである。

七国とは世界を支配する七つの国家を指す言葉である。

傲慢の街

この街は傲慢の一族当主であるアドナイ・エフェソスによって統治された街であり、

傲慢の一族が治める街である。

最も学問と武力の進んだ街である。





憤怒の街

この街は憤怒の一族当主であるサタン・スミルナによって統治された街であり、

憤怒の一族が治める街である。

最も裏切りに長け、策略にも長けるが実質的な武力NO.2の組織である。





暴食の街

圧倒的な覚醒者「魔王」を要する国家であり、

第一次七国戦争の数少ない勝利者の国家だ。

前回大戦を終わらせた先代「魔王」の一人娘、

ベルゼブブ・フィラデルフィアを当主とした暴食の一族は、

憤怒の一族であるサタン・スミルナをも超える実力を持つと言う。





嫉妬の街

海に面するこの島国は最もスラム街の多い街であると言う。フリージアの生まれ故郷であるそこは、

第一次七国戦争の敗者であり、

かつて圧倒的な軍事力を持った最大の宗教国家であった。

最も腐敗の進んだその国家は、

嫉妬の一族当主、レヴィアタン・テアテラの手で統治されている。




強欲の街

この国家は前回対戦時最も領土と富を獲得した国家である。強欲の一族はマモン・ペルガモによって統治されたこの国家は、何と金で出来た国家である様だ。

何処にでも現れるとこの国家な何と領土が移動可能な巨大戦艦で出来ているとも言われている。




色欲の街

前回対戦時の敗者であるこの国家は史上最も復活の早かった国家である。

領土を奪われ、女子供も凌辱され殺されたこの街は今は芸能の街として流行の中心部に居座った。

色欲の一族は当主、アスモデウス・ラオデキヤの禁術研究と「覚醒者」の人体実験は問題な物の、

尊敬に値する国家の一つだったのだ。




怠惰の街

前回対戦時、枢軸国家という「暴食」と「嫉妬」「色欲」の三同盟を裏切り、

最も早く勝者側についたこの国家は不可侵条約を結びながらもそれ故か最も娯楽に富んだ国家であった。

ヴェルフェゴール・サルデスが統治するこの街の謳い文句はこうだ。

「娯楽ある所に、怠惰の街あり。

娯楽無き所にも、怠惰の街あり」

・・・ともかく娯楽の為に何処にでもいる様な国民性を持つ国家であった。




・・・戦勝国は未だ第一次七国戦争の時に吸った甘い汁を忘れられないのか敗戦国への差別と排斥は止まない。

傲慢の街など顕著である。

「「覚醒者」にあらずんば人に在らず、傲慢の街の国民にあらずんば人に在らず。」

そんな言葉が人々の間で囁かれ、

SNSで口論に使われる程に最も差別と排斥が色濃く出た国家である。

フリージアはこの四年間でローズとして多くの人間と出会い、七国を巡った。

傲慢の街の最も難関な最高学府まで飛び級し教授にもなったし、

憤怒の街で謀略に晒され、利用された事もあった。

暴食の街では「魔王」と共に戦ったし、

嫉妬の街では己の居場所を探しもした。

色欲の街では、比較的積極的に情報の泡理論について話し合ったし、

怠惰の街ではSNS活動に精を出した。

とても有意義で充実した四年間であった。

15歳という年頃に成長した小娘には勿体無い程の












「お待たせしました、モーニングスペシャルです。」




「ありがとう、そこに置いておいて下さい。

後で食べますから。チップはいりますか?」




「当店独自の決まりとして、チップの受け取りは拒否させて頂いております。」

「・・・そうですか。」と足を組み直して、スマホを置きけれど素っ気なく答えたフリージアである。

傲慢の街、

この街には世界中から富裕層が集まる。

成熟した財を持つ彼らはここで子供の教育に精を出すのだ。

最難関最高学府であるアリギエーリ大学に飛び級したフリージアも例外では無い。





ローズはフリージアに遺言状を書いてその財産までも譲ってくれた。


フリージアが幼い頃体で稼いだ金と、

人を殺して集めた金を合わせれば最高学府に通う金額を集める事は容易かった。

大学生活を11歳から始めた為、

丁度15歳の最近、卒業出来たのである。

ローズの名義を借りて論文の執筆と研究に勤しんでいたので、

フリージアの正体が娼婦上がりの人殺しである事は世間にはバレていない筈だ。

ローズ、あの子の資産の蓄え方は異常だった。

通帳を受け取っただけだと言うのに、

その蓄えていた財産のおかげで

働かずに最高学府の学費が払える程の金額を容易く手に入れられたのである。




あの子が身を削って得たお金だ。

滅多な事では使うつもりは無かった。

お陰で今も1円たりとも使えていない。

学費は成績と論文の研究成果で免除して貰っていた。

日々の頑張りのおかげで補助金が出たのである。














「「覚醒者」にあらずんば人に在らず、傲慢の街の国民にあらずんば人に在らず。」

何て言う風に嘯く傲慢の街の国民ですが、

存外良い人達が多いですね、アリギエーリ大学も同じでした。

論文の独創性と創造性からか博士号は取れましたし、

当時11歳という年の割には早く教授に成れましたが

あそこには殆どいませんでしたからね。

七国を巡る旅に殆どの時間を費やしてしまっていて、

█の存在証明に関する論文もその旅をしながら書いたのですが、それをする前に霊子動力学の教授になれたのは何故でしょう。」

「こう聞くとオカルトな称号ですね、私の情報の泡理論の論文同様だと言えますかね。」と足を揺らしながらもコーヒーを片手で飲む。

█という全知全能の祖とされる存在への存在証明の論文を、

化学論文雑誌にフリージアが持ち込んだ時に最初あまり取りあってくれなかった事を思い出す。

スマホの画面が自然と流れる様子を見ながら、

湯気を吐き出すコーヒーカップをコースターに置いてけれど、ある存在について考えるフリージアである。





█という存在についてフリージアはその存在を確信していた。


幼い頃、スラムの外れにある█を祀る教会の跡地に住んだ時、ある石碑を読んだのだ。

嫉妬の街にて信仰されている父なる神にして全知全能の祖たるこの存在は、

性別の無いこの存在はそれその物も全知全能であり、

その根源とも言うべき存在だった。

源流として異世界の魔女(アドナイ)をも凌ぐこの存在は果たして、全く存在証明の出来ない存在だったのだ。

けれど█の存在証明は情報子から読み取れた情報で確定した。

その時、思わず「神」のように笑んだのを覚えている。

嬉しかったのだ、

単純に█という存在の居る事が知れた事が、

「情報の泡理論」と、「情報の種計画」のその先がしっかり夢物語では無くなった瞬間だった。

だからこそ、この事態を予見していたフリージアである。




















「・・・来ましたか。」

足を解き、けれど立ち上がってテーブルに置いたスマホをポケットに入れる。

空を見上げればそこには在った。

爆撃機、最新鋭のそれが傲慢の街の真上を覆っていたのだ。

その影の暗さに人々が上を向けば・・








爆撃が地上を満たした。















「・・・・・」

血と硝煙の混ざる匂いのする中で

けれど、フリージアは服のほつれ一つ無い状態で立ち上がりこう言った。

「神」のような笑みを浮かべて周りに散逸すること焼死体すら気にせずにこう言った。







「第二次七国戦争の始まりですね。」

そんな言葉と共にオリーブの意匠の入った黒いエナンをマゼンダ色の霊子から作り、

オリーブのバッジが胸に着いた黒い外套を魔素で織れば、

黒を基調とした赤い意匠の入った「鉄の杖」を霊子から作り握れば、

沈みかけの上弦の月のような、黒髪赤目の魔女は

背中まである髪を風に靡かせながら、

けれど「神」のように笑みながらそう言った。

まるで自身が「黒の魔女」と呼ばれているのを思い出すように

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