第39話:幼馴染は二度目の人生で他の男を選んだ
年末年始は推薦だ、共通テストだ、一般入試だと、とにかくバタバタと過ごした。
年が明けて3年は自由登校になったころ、続々と試験結果が学校に届くようになった。
WEBで確認と学校経由で発表のパターンがある。
俺とアヤノさん、そしてリカはそれぞれ合格の知らせを学校経由で受け取った。
リカは城南大に合格。
俺とアヤノさんは念願の城東大学の工学部に合格した。
大学から俺は独り暮らしするし、ここでリカとは決定的に、完全に道が分かれるな。
職員室で合格の知らせをもらったあと、なんとなく教室に来た。発表を聞きにいくクラスメイトはもういないので誰もいないと思っていたのにそこにはリカがいた。
そして、ここで物語の冒頭にもどるーーー。
「お願い! 私が間違ってたの! もう一度私と付き合って! 前世では結婚して、子どもだってちゃんと育て上げたじゃない! だからまた私と……っ!」
冬の放課後。黄昏色に染まる教室で、冷たい木枯らしがカタリと窓を揺らした。 誰もいなくなった静寂の中で、涙で瞳を濡らしたリカが俺の制服の袖に必死にしがみついてくる。
かつて世界で一番愛おしかったはずの幼馴染の顔を、俺はただ冷ややかに見下ろしていた。
「この2週目の人生を変えたのはお前だ、リカ。お前があんなことをしなければ……俺たちがこうなることはなかった」
袖を振り払うと、リカは絶望に顔を歪ませ、その場にへたり込んだ。
「……それも嘘だろ?」
「うん。最後だから」
さっきまで涙を流していたリカがケロッとして答えた。まったくこんな整った顔のやつがぽろぽろ涙を流しながら復縁を求めてくると、全部知っている俺でも本気かと思ってしまう。
信じていなかったけど、リカの言う「サムシング」ってのは本当に存在するのかもしれない。
「おめでとう」
「ありがと。お互いにな」
「うん」
リカは笑顔で俺を教室から送り出した。いつか言っていた「最後は笑顔で別れたい」ってのを実現したのか……。
いつからか、リカは俺に対して嘘ばかりだった。では、さっきの笑顔も……と考えると色々複雑だけど、それはもう俺の考えることではないだろう。
「良かったんですか?」
ここで廊下でアヤノさんと合流した。リカと一緒だったのも知っているみたいだ。
「中途半端に優しくするのは余計にひどいってもんだよ」
「それはそうかも」
俺は、アヤノさんと彼女の家に向かった。二人の合格の報告をするためだ。
✳
「「「おめでとうーーー!!」」」
アヤノさんの家に着くとお母様とお姉さん、妹ちゃんが歓迎してくれた。
「おめでとう、アヤノ。ヨータくん。ずっと頑張っていたことが実を結んで、お母さん嬉しいわ」
「私も私も私も!アヤノは大学に行ったら、かわいい大学生をお姉ちゃんにじゃんじゃん紹介してねー!」
「お姉ちゃん、大学に合格したんだから、ヨータくんと結婚する!?もう、ヨータくんのことお兄ちゃんって呼んていい!?クラスメイトに自慢していい!?」
お母さん、お姉さん、妹ちゃん……。それぞれ個性的で実に面白い人たちだ……。
「帰ったのか、アヤノ」
テーブルの席につきニヒルに新聞を読んでいたお父さんが、その新聞を少しずらしてアヤノさんを見て言った。
実にかっこいい。キメ顔も完璧だった。
「やだーーー、お父さんったら、カッコつけてー!たまたまいましたーみたいな顔して、娘の合格発表だからって会社を早退して帰ってきたくせにーーー!」
「こら、バラシすぎだ」
そういえば、お父さんも面白いキャラだった……。
「それにしても、二人してあの城東大に受かっちゃうなんてね!お母さん嬉しいわ!ご近所さんにも自慢しなくちゃ!」
いや、それはやめた方がいいのでは……!?近所には受験がうまくいかなかった子の家もあるかもだし!
「わたしは会社で自慢なんかしないぞ!?」
お父さんは少し自慢気に宣言した。
「あなた!さっきからスマホにメッセージが着まくってるじゃないですか!早く答えてあげてください!」
そういえば、さっきからテーブルの上に置かれたスマホの画面がピカピカ光ってた。あれは、きっと会社で話しまくってるなぁ……。当の本人は会社を早退までして帰ってきちゃってるし。
「よう、ヨータくん。友だちにお金持ちで性格ヨシのイケメンいない?」
お姉さんがガッツリ肩を組んできた。さり気なく胸が押し当てられていて俺はもう何も考えられない。
「お兄ちゃんが家庭教師してくれたら、私も成績伸びるかな?偏差値100を目指したいの!」
それはどういう計算なんだよ。腕を引かれながら妹ちゃんにおねだりされた。両側からお姉さんと妹ちゃんに腕を引かれ、お母さんは微笑ましく見守ってくれているのは、もしかしたらちょっとしたハーレムでは……。
「わたしは息子と一緒に酒を飲むのが夢だったんだ」
「あらあら、お父さん。ヨータくんはアヤノと同い年よ」
お父さんまで……。四方から好かれてるっぽい。子どもが女の子ばっかりで男の子がほしかったのかな。
「もー、沢渡くんは私の彼氏なんだから!」
そう言ってアヤノさんは家族から俺をサルベージしてくれた。
「部屋行こ」
「う、うん……」
腕を引かれてアヤノさんの部屋にむかう。
「あー、憧れの息子がー!息子が連れ去られた上に、娘が大人の階段を上がっていくー」
「お父さん、ヨータくんはまだよその子ですよ。アヤノは2階への階段を上がっているだけですよ」
こんな感じで絵に描いたような幸せ家族に当てられて多少ライフを減らしつつアヤノさんの部屋へ。
そして、アヤノさんとこれまでの関係でいられなくなる事実に気付かされることになるのだった。




