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第34話:三年分の写真とバタフライ効果

 全卒アル委員6人が集まって、それぞれのアイデアを持ち寄る日が来た。2人ずつの3チームでアイデアを持ち寄ったけど、どれも良いアイデアだったのでそれぞれ採用することになった。


 写真は元々卒アル様に準備されたものもあったし、俺たちのアイデアでオフショット的なものもありかなりの数があった。


 今日は全員でその写真を選定しようというそんな日だった。


 机の上には約三年間分のたくさんの写真が広げられていた。入学式、オリエンテーリング、体育祭、文化祭……。俺たちの学年のイベントの写真がものすごい数広げられていた。


 写真をみながら自分の三年間を振り返ってみた。そこには、この二周目に気づく前の俺が写真に収められていた。多分、一周目と同じくリカを好きで、リカ一筋だった自分の姿が映っていた。そして、人気者らしくリカの写真も多く写っていた。


 一周目ではとにかくリカを愛していた。そして、この二周目に気づいてからガラリと変わった。


 リカのことが嫌いになったわけじゃない。未だに家族みたいには思っている。だけど、そこまでの執着に似た気持ちはこの二周目には持ってこれなかったらしい。


 マンガやアニメのタイムリープものは完全のそれまでの記憶や経験を引き継ぐものだと思っていたけど、俺の場合はどうやら違ったらしい。記憶も経験も引き継いだけれど、何かを取りこぼしている。俺であって、俺ではない自分が今、この時間軸にはいるのだと思う。


 リカも同様だろう。ただ、リカがタイムリープしてきたのはいつだろうか。もしかしたら、俺よりも前だったのでは。きっと。俺もリカも細胞レベルで一周目と全く同じ人間だ。


 ずっと不安で俺の愛を確かめ続けたリカと、それに応え続けることに喜びすら覚えていた俺がいた一周目、二人のバランスは奇跡的にやじろべいのようにどちらにも傾かず、絶妙なバランスを保っていたのではないだろうか。


 この二周目でリカが先に前世に気づいたとしたら、俺は生涯リカに尽くし上げたことを知っている。まるで結末まで観た映画をもう一度見直すみたいに自分が嬉しかったことを経験したかったのかもしれない。


 俺は俺のヤキモチとか嫉妬みたいなものもその一つだったのだろう。


『今日、告白されたんだ』


 これくらいまでは一周目のリカも言っただろう。そして、俺も内心ヤキモチを妬きながらも面白くないという感情を表に出しつつ、ぶっきらぼうに応えただろう。


『それで?』


 そしたら、リカはピカピカの笑顔で答えるんだ。


『もちろん、断ったよ?』


 俺は、さらに答えただろう。


『ふん、そうかよ』


 俺たちは言葉で縛らない関係だった。


『恋人』


 とかさ。


『幼馴染』


 みたいな不安定な事実だけを手にしていたんだ。


 でも、それは奇跡のバランスだった。


 一周目に気づいた俺、つまり、タイムリープしてきた俺はそのバランスを壊してしまった。


 正確に言えば、リカもそうだった。


『付き合うことにした』


 これは一周目では一回もなかった。


 そして、一周目のリカへの気持ちをわずかに取りこぼして二周目にタイムリープしてきた俺にとって、それは大きな違いに発展した。


『バタフライ効果』


 そんな言葉が頭の中で思い浮かんだ。


 ブラジルの蝶の羽ばたきが、テキサスで竜巻を引き起こしたのか。ローレンツ先生でも今の俺とリカのことを想像もしなかっただろう。


「沢渡くん?」


 気づけば俺は机の上に広げられた写真を見ながらぼーっとしていたようだ。


 アヤノさんが覗き込んでかけてくれた言葉で我に返った。


「ごめん、なんでもないよ。写真見てたら、ちょっと感慨深くて……」

「分かるー。一年の時の写真とか、すっごい昔のことみたいだけどまだ二年前のことだもんね」


 俺は何とか取り繕った。


 彼女とは前日の一件以来、無事に交際している。リカに言いよられて、アヤノさんと付き合い始める前までは、俺はアヤノのことばかりを考えていた。


 そして、アヤノさんと付き合い始めるようになったら、今度はリカのことを考えている。


 この矛盾、この一貫性の無さはどうなっているんだろう。


 俺は俺だ。二周目の俺が俺、一周目の俺は俺ではない?


 あまり突き詰めると俺の心の中に別の人格でも芽生えてしまいそうだ。やめておこう。


 卒アルの仕事に気持ちを戻すと、概ね卒アル委員の仕事はピークを越えたと思う。写真を選び、方向性も決まったのだから後は仕上げをしていくのみだ。


 後はやれば終わる仕事、つまり消化試合のようなものって状態のところまできた。最後まで手は抜かないものの、俺の肩の荷も降りた様に感じていた。


 俺とアヤノさんは途中まで一緒に下校し、分かれ道で分かれそれぞれの家に帰った。部屋の戻って、電気をつけたとき、違和感に気づいた。


「わぁ!びっくりした!」


 俺のベッドの上にリカが体育座りで膝を抱え頭をもたげていた。


「もう学校にいけない」


 リカがそうつぶやいた。

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