第24話:超絶美少女リカが外堀を埋めてくる
俺の部屋は一晩中電気がついていた。多分、リカが俺の帰りを待っているのだろう。
そんなところにおめおめと戻るほど俺もバカじゃない。財布とスマホは持ち出せていたから俺はネカフェに泊った。行った事はあるのだけど、さすがに泊ったことはなかったのでドキドキはした。
昼間はアヤノさんと大学のオープンキャンパスに行ってどきどきワクワクしていたというのに、帰ってきたら両親と義両親から責められて別の意味でどきどきさせられた。リカもなりふり舞わず迫ってくるし……。たしかに、リカはかなりかわいい。普通のかわいさじゃない。多分、あんな子が芸能界とかに行くんだろう。
そんなリカが涙をぼろぼろ流しながら俺のことを好きとか言ってくると、さすがに堪える。リカの言葉が本当なんじゃないかと思えてくるから不思議だ。俺は単に拗ねているだけなのか!?リカのいたずらを笑って許して上げられないケツの穴のちっちゃいやつなのか!?
俺すらもリカの言葉が身体に染み込んでいくみたいに考えが変えられていく。
朝には一旦家に帰って着替えないといけないな……なんてことを考えつつ俺はネカフェで眠りについた。
◇
「おは……よ……う?」
翌朝、3年1組の教室に入ると全員が一斉にこちらを見ていた。その異常な光景に嫌な予感がビンビン感じる。
クラスメイト全員に注目されたまま自分の席に向かう状況はこれまでに経験したことがない緊張感があった。
「沢渡くん!」
席についてカバンを机の横にかけた瞬間、目の前に女子生徒が三人立っていた。
「おはよ、……なに?」
俺は三人を見上げるような形で訊いた。中央に学級委員長の駒込さん、右にその彼氏の山田くん、左にはギャル代表の市東さん。なんか、クラスの代表って感じで俺のところに来たみたい。
「リカ、ずっと泣いてるよ?みんなで事情聴いたけど、ひどすぎない!?」
委員長駒込さんは何をおっしゃっておられるのだろうか。
「昨日、リカから連絡もらって『ヨータが帰ってこない』って。電話したら、ずっと私が悪いのって泣いてて!」
うわーーー、俺にとって最悪な方法で周囲から外堀を埋めにかかったってことか。その埋めてる材料が「嘘」なんだけど。
「沢渡、浮気は良くない。俺が秋月さんの彼氏だったら絶対泣かさないぞ」
山田くんがそう言ったところで、横の委員長駒込さんに腹パン喰らっていたけど、それは俺のせいじゃないからな!?
「リカが可哀想ー。ぶっちゃけ、リカと沢渡くん釣り合ってなくね?ぜってーリカの方がかわいいし!それなのに、浮気した沢渡くんをリカ許すってさ。みんな呆れてるよ」
ギャル市東さんは100パーセント善意で俺のことを非難している。前提として、リカの言ったことが全て事実だった場合に限られるけど。
「しかも、浮気相手って2組の陰キャって?すぐバレるのに考えなしなの?バカなの!?」
ギャルつえー。「発言力」にゲージがあるなら俺の言葉より、ギャル市東さんの言葉の方が重みと影響力があるって強く感じる。
「リカ泣きすぎて目がパンパンよ!?みんなでなだめてたけど、泣きすぎて吐きそうになってるし!」
ギャル市東さんが俺の机をバンバンたたいてその怒りを伝えてくる。そこまでしなくても十分にビシビシ感じているから!
リカの方を見てみると、ハンカチで顔を隠して、しゃくりあげている。リカすげえ。
委員長駒込さんもギャル市東さんも悪い子じゃない。悪いやつだったらまだ全力でケチョンケチョンにしても俺の心は痛まない。正義と悪の場合は正義が勝つと俺は信じている。
でも、彼女たちは100パーセントの善意で動いている。リカが言ったことが嘘であることを除けば正義なのだ。善意で動いている人間ほど止めるのが難しいものはない。だって、自分は正しいことをしていると思っているのだから。
無駄だと思うけど、一応抵抗してみるか。
「リカが言ってることは全部嘘なんだ」
「はーーー!?リカが嘘つくわけないだろ!」
再びバンバンと俺の机を全力で叩くギャル市東さん。
だいたい、ギャルと委員長って物語だったら真逆の立ち位置だろ。敵対関係っていうか。そんで、ヒロイン枠ってまた別勢力でしょ!?それらがひとまとまりになって俺を責めてくるって、俺はどんな悪いやつってリカは触れ回ってんだよ。
理由も根拠もなしに「リカが嘘をつくわけがない」ってそれだけ自信持って言えるんだよ。
やべー。逃げ道がない。このまま一時間目の先生が来るまで俺は責められ続けるしかないのかよー。
「今日の昼休み、公開裁判すっから!逃げんなよ!」
最後に一回バンと勢いよく机を叩いてギャル市東さんが自分の席に戻った。それを機に委員長駒込さんもその彼氏山田くんも席に戻った。
それでも教室内の空気は最悪だった。ちょっとでも動いたらヤられるようなピリピリした空気だった。
とどめにリカが俺のところに来て後ろから俺の頭を抱きしめる。
「ごめんね、ごめんね、ごめんねーーー」
わんわん泣くリカを止められる人はこの教室には誰もいなかった。




