↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/26

第14話:擦れ違う距離感と拒絶

 ある日の朝、玄関のドアを閉めて門扉へ向かうと、その陰からひょっこりとリカが姿を現した。 「たまたま同じタイミングになった」という顔をしているが、俺のセンサーは、彼女がここでずっと隠れて待っていたのだと伝えていた。


「おはよ、ヨータ」


 少し神妙な面持ちで恐る恐る挨拶をするリカ。


「あぁ、おはよ」


 俺は正直、どんな顔をして接していいのか分からない。

 まあ、「勝手にうちに来るな」と言ったのは一応守っているようだし、俺も挨拶すら無視するほど鬼畜にはなりきれない。


「がっこいこ♪」


 そう言って、リカはいつものにっこにこした笑顔になって、俺の横に並んで歩き出した。 家が隣同士で学校も同じなのだから、朝に一緒になったからといって「一緒に歩くな」と追い払うのも変だ……と俺は諦めて足を動かす。


「あのね、私、考えたの」

「ん?」

「木村くんの件、ごめんね」


 お? ついに自分の身勝手さに気づいてくれたのだろうか。リカはかわいいだけじゃなくて、頭も悪くない。ようやく理解してくれたのだと思ったのだけど、そう思ったのも束の間――


「ヤキモチ妬いてほしかったっていうか、久々に告白とかされて舞い上がっちゃったっていうか……」

「もう、いいよ。気にしてない」


 感情のこもらない声で返す俺を制するように、リカはくるりと俺の前に回り込んだ。そして大げさに両手を合わせ、片目をウインクしながら少し笑みを含んだ顔を作った。


「ごめんなさい! 私が悪かったの! ごめんなさい!」

「だから、もう良いって……」


 ため息まじりに告げると、リカは俺の腕に自分の腕をぎゅっと絡めてきた。


「ごめんってー。だからさ、私たち付き合おう♪ 前は大学からだったけど、ヨータが言うみたいに前は前だし、今は今」

「……」


 耳を疑った。このタイミングで……!?


「ほら、キスとかそういうこともしたいと思うんだ」


 甘えるような声で言われた言葉。 一回目の人生の俺なら、舞い上がって受け入れていたのかもしれない。だが、今の俺の胸に去来するのは、ただただ冷ややかな違和感だけだった。


 そもそも俺たちは八十年弱一緒にいたんだ。子どもだって二人いた。肉欲としてのそういった行為は俺にとって魅力にはならない。


「……やめてくれ」


 俺が短く拒絶すると、リカは拍子抜けしたように目を丸くした。


「え……」

「やっぱり、近づかないでくれ。前とは違うんだ。リカとの距離感には俺もまだはかりかねてるっていうか……戸惑ってる。だから、しばらくはそっとしておいてくれ」


「え……何言って……。私とヨータだよ……? 幼馴染だよ? 将来結婚するんだよ?」


 一回目の人生の記憶を盾にして、まるで確定した未来であるかのように言い切るリカ。その過信に対して、俺ははっきりと拒絶の言葉を突きつけた。


「だから、結婚とかしない。俺、先に行くな」


 絡められた腕を振り払うと、俺はそのまま足早に走り出した。


「あ、ちょっと! ヨータ!?」


 背後からリカの焦ったような声が聞こえたが、俺は一度も振り返ることなく、学校への道をただまっすぐに駆け抜けていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。