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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第二部 超越者打倒編

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預かり物

「激昂した知り合いの姿なんてアリーナに見て貰いたくないんだ。憎しみと恨みの感情向けられるのって……案外キツイぞ?」

 ヴィルはアリーナを気遣う事を主眼にして彼女の説得を試みる。

「ク〜ン……」

「キィ……」

「クェ〜……」

 話の流れ的にクロ達三匹も空気を読んでさっきから大人しくしている。

「それに俺が向こうに行ってる間に帝国軍が攻めてくるかもしれねぇ。その時にアリーナが神様の防壁で皆を守れる様に備えていてくれると俺も安心なんだ」

 ヴィルの説得にアリーナの表情が悲壮なものから徐々に和らいできているのが見て取れる様になってきた。

「分かりました。ヴィルさんがその方が安心だと仰るのでしたら……」

 アリーナはそう言うと自身の首筋に両手を回し


ーカチャー


 首から下げていたペンダントを外すと、ヴィルの手を取ってペンダントを握らせてきた。

「お、おい。これって……」

「私の大事な宝物です。必ず返しに来て下さいね?」

 そう言うとアリーナはヴィルが返事を返す前に離れていってしまう。

「絶対ですからね! 帰ってこなかったら許さないですから!」

 一度振り返った彼女は未練を振り払う様にして王国軍陣地の奥に向かって駆けていってしまった。

 そんなアリーナを見送りながら、ヴィルは傍らに居るクロ達三匹に

「お前達、アリーナの事しっかり護ってやってくれよ」

 彼女の警護をたくすのだった。

「ワンッ!」

「キキィッ!」

「クェ〜」

 三匹もそれに応える様にして彼女の後を追いかけ始めた。

 ヴィルはプレートアーマー内側のジャケットにアリーナのペンダントを仕舞うと改めて帝国軍陣地へと歩き出すのだった。



 王国軍と帝国軍の陣地の間には大凡四百メートル程の距離が開けられていた。

 これは弓矢や攻撃魔法の最大射程の倍程はある距離となっている。もしかしたらミリジアあたりなら最大射程でブッパすれば届いてしまうかもしれないが、一応異世界の世間一般では安全とされている距離である。

 周りがだだっ広い平原だけあって見通しは良い。空も青く澄み渡っていて雲も疎らだ。

 これなら、空の魔物に奇襲を許すという様な窮地に陥る事も無いだろう。しかしまぁ……出来る事なら無意味な戦争は回避したいものだ。

 何かしらやむにやまれぬ事情があるなら仕方ないかもしれないが、今回の帝国軍の暴挙は皇帝がフィオレット王女との婚約を断られたから軍事力で威圧してモノにしようという非常にダサい動機でしかない。

 しかも、それに乗っかっているのがユーマ・キリサキであり、彼の目的はアリーナをモノにしたいという動機っぽいのが……色々と終わっている似たもの同士なのかもしれない。

 


 そうして歩いていると帝国軍陣地がハッキリと見える様になってきた。帝国軍の陣地も王国軍と大差は無い。しかし、その規模は王国軍の数倍の規模に見えた。

 平原の端から端まで横に大きく広がった様な長大な陣地は、下手な迂回戦術など取らせないと言わんばかりの威圧的なものだった。

 また、横に長いだけでは無くその厚みもかなりのモノに見え、これではあわよくば王国軍を初手から包囲殲滅しようという思惑さえ感じられた。

 いくら勇者であって剣聖なヴィルであっても個人では出来る事にも限度がある。

 だからと言って、人間の軍隊をぶつければ強大な魔物や魔王に勝てると言う訳でも無い。

 要は適材適所と言う話なだけだが、今のヴィルがこの場で魔物の集団に喧嘩を売ったところで事態が好転する絵が見えない。

(まぁ、今はそんな事をしてる場合じゃないよな……)

 帝国軍の陣地の目の前までやってきたヴィルは誰に声を掛けるべきかしばし様子を見る。

 初めて訪れた個人商店で勝手が分からない一見さんみたいなヴィルを見た帝国軍陣地の帝国兵達が

「なんだ? 従軍希望の冒険者か?」

「傭兵なら今は雇ってないぞ。帰れ帰れ」

「しかし、一人で来るなんてソロ冒険者かよ。どうせなら女の冒険者連れてこいよ〜」

「そうだな。そうすりゃたんまり稼げるだろうからなぁ」

 帝国兵達はヴィルを見ても魔王を倒した英雄だと気付いていない様で皆が軽口を叩いている。

 ヴィルは直接体験した訳では無いが、ヴィルヴェルヴィントの頃に魔王軍の四天王の一人が帝国に攻め込んだ事があり、それを打倒した経緯があるのだがそれはあまり有名では無いのかもしれない。

 世の中の物事は冒険者からの人伝や吟遊詩人による叙事詩として歌われるしか方法が無い異世界では仕方の無い話なのかもしれないが……

「俺はグランフェルム王国の国王陛下からの書状を届けに来た者だ。責任者にお目通りを願いたい」

 ヴェルは国王から託された蝋で封印された書状を兵士達の前に突き出し責任者への取り次ぎを求めた。

 それを見た兵士達は半信半疑な様だが、ヴィルが手にしている書状が明らかに品質の優れた紙であった為か

「おい、誰か小隊長殿呼んでこいよ」

「あれ、どう見ても冒険者が持ってるモノじゃねーぞ」

「俺、ちょっと隊長殿呼んでくるわ。対応分かんねーし」

 兵士達は慌ただしく陣地の奥へと走っていってしまった。こういう時、ゴロツキの様な男達にダル絡みされるのがパターンだがそういう場合は相手がモノ知らずな事が多い。

 一応の常備軍の一員としての教育された一般兵士として一定の社会性は備わっているのだろう。

 少し待っていると胸元に銅色の紋章があしらわれたプレートアーマーを着た全身鎧の兵士がヴィルの前までやってきた。

「お前が王国軍からの使者か」

 銅色紋章の兵士はヴィルが手にしている書状をまじまじと見ると

「分かった。責任者の元に案内しよう。ついて来い」

 こうしてヴィルは周りを帝国兵に囲まれながら、責任者の元に連れて行かれる事となったのである。

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