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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第二部 超越者打倒編

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使者の選定

 先に戦場に着いていた王国軍は防御側の利点も存分に活用して、背面を王都に続く森林地帯を置き前面が緩やかに下り坂となっている丘陵地に布陣していた。

 そんな王国軍の司令部のテントで行われている軍議にはヴィルも出席していた。

「偵察隊の報告によると、帝国軍の軍勢は本日の日中には到着する模様です」

 偵察隊からの報告を読み上げる王国軍司令部の参謀らしき軍人は事実のみを淡々と読み上げる。

「では帝国軍が到着次第、使者を遣わそう」

 報告を聞いた国王は帝国の真意を確かめる為、使者の派遣を検討している。

 敵軍に敵対する立場である王国側からの使者の立場はそれほど安全性が担保されている訳でもない。

 あくまで慣例的に使者には手を出さないという不文律があるだけであり、使者の安全は帝国軍の胸先三寸でしかないのである。

 また、使者は誰でも良い訳でもなく、王国側で国王からの信頼が厚く弁の立つ者が好ましい。

 国王が選んだ視線の先には軍議など門外漢で分からないがとりあえず話を聴いているフリだけしているヴィルが居た。

「勇者ヴィルヴェルヴィント、そなたに王国からの書状を帝国軍の本陣に届けて貰いたい」

 国王の判断は妥当かもしれない。彼は素直に魔王を伐ち倒した実力者であり、下手な部下より信頼も厚い人物である。

「しょ、書状を届けるだけでしたら……やります」

 単なる手紙の配達であれば、ある意味冒険者ギルドにおける初心者用の簡単な依頼程度な仕事でしかない。

 それにもしかしたら、ユーマ・キリサキや別れた勇者パーティーの元メンバー達と話し合えるかもしれない。

 ユーマの説得は絶望的としてもミリジアやミノさん、エルフィル辺りはなんとかなるかもしれない。

 敵陣の懐に潜り込むのは魔王の城に潜入するのに比べたら朝飯前に感じられた。

 こうしてヴィルは、帝国軍が平原に到着次第、帝国軍の本陣に使者として赴く事となったのであった。



 帝国軍が平原に姿を見せ始めたのはその日の正午頃だった。彼等は到着するなり陣地の構築を始めたが、その様は通常の軍隊のそれとは明らかに異なっていた。彼等はゴブリンを始めとした魔物達を前面に押し出しその後方で陣地を構築し始めたのだ。

 魔物達は不揃いとら言え大群が一塊となって大人しく待機しており、その光景は魔王なは率いられた魔王軍と比べても何ら遜色は無かった。

「では、勇者ヴィルヴェルヴィントよ。この書状を帝国の皇帝にしかと届けてくれ」

「勇者ヴィルヴェルヴィント様、どうかご無事で……」

 帝国軍が到着した頃、国王の本陣にてヴィルは国王とフィオレット王女からの見送りを受けていた。

「分かりました。これを届けるだけで良いんですよね?」

 ヴィルは王国からの使者として、何かしらのNG行為があるのかどうか、王国の最高権力者の二人に再確認していた。

 王国からの要望は戦争の回避である。また、フィオレット王女の婚約の要望は彼女が第一王位継承権者である事から受けられないという前提で話を進めて欲しいとの事であった。

 軍隊まで繰り出して身柄を要求してきた相手に交渉でどうにか出来るとは思えないが、ヴィルとフィオレット王女の婚約を仄めかしてでも断って欲しいとの事だ。

 ヴィルとフィオレット王女が婚約したとなれば皇帝にとっての障害は王国ではなくヴィル個人となる。

 ある意味、人身御供にされた感も否めないがフィオレット王女を皇帝から救うのと王国と帝国との戦争を回避するにはこれくらいしかヴィルには思いつかなかった。

 書状を受け取ったヴィルが王国軍陣地を対面の帝国軍陣地に向かって歩いていると……

「ヴィルさん、私も連れて行って下さい! 貴方一人で危険な場所に行かせる訳には……」

 息を切らせたアリーナがクロ達三匹と一緒にヴィルを追いかけて来た。

「アリーナ……」

 ヴィルはこの時点でどう詰められようと彼女を同行させるつもりは無かった。伝令で出向いたとして生きて帰れる保証は無い。

 いくら慣習として使者には手出ししないとされているとは言っても確実では無い。

 とは言っても、個人戦闘力でステータスが振り切れている今のヴィルに手を出してくる者が果たしているのだろうか?という話にはなるのだが……

 だからと言って敵陣にアリーナを連れて行って良い理由にはならない。第一、関係を持ってしまった彼女との仲をユーマ・キリサキに勘付かれたら何がどうなるか分かったものでは無い。

「すまないが……アリーナにはここで待っていて貰いたいんだ」

 言いにくそうに切り出したヴィルの言葉にアリーナは明らかに落胆した表情を見せる。

「そんな……どうしてですか? 私だってヴィルさんのお役に立てるのに……」

「これから俺は帝国の皇帝やらユーマやらに会いに行くんだ。アリーナは帝国に狙われてたんだし、ユーマに会うにしても……どんな顔して会うんだ? 俺達の関係に気付いたらあいつ何するか分からないぞ」

 ヴィルはあらかじめ準備していた台詞でアリーナの説得を試みる。

「私達の関係……ですか? それがユーマさんと何の繋がりがあるんですか?」

 ヴィルの言葉を聞いたアリーナはイマイチピンと来ていない様だ。ユーマに限った話では無いが、女の子の初めてに並々ならない執着を持っている者は少なからず存在する。

 創作物であろうと唐突な寝取られ展開となって評価が大荒れになる例など枚挙に暇がない。

 今回のヴィル達の関係は寝取られ……NTRでは無く『僕が最初に好きだったのに』省略してBSSというジャンルになるらしいのだが……

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― 新着の感想 ―
うん!?!?!? やっぱりこれは「そう」なのでしょうか!?!? フィオレット王女とかと違って、ヴィル本人の認識は信用していい、はず……!!
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