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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第二部 超越者打倒編

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侵略軍

 グランフェルム王国に侵入したベルンシュバイツ帝国軍は街道沿いの集落から略奪を繰り返しながら王都へと進軍していた。

 歩兵隊五千、騎馬隊千、魔法兵団五百に加えて、王国内から集まってきた魔物達を背後に控えた……さながら魔王軍とみまごう見紛う集団と成り下がっていた。

 彼らを統率する帝国軍本隊には豪奢な馬車が曳かれており、その車内には帝国皇帝と側近。そして、勇者として帝国に出向いていたハズのユーマ・キリサキバーティーの姿があった。

「やれやれ、こんな事ならさっさと軍を動かしてフィオレット王女を私のモノにしておけば良かった」

 そう語る皇帝の視線の先には同じ馬車内の向かいに黒い衣装を着て腕を組んで座っているユーマ・キリサキの姿があった。

「まさか勇者殿が軍師としての才覚もお持ちだとは。これで帝国は安泰だ」

 およそ戦場に向かっているとは思えない雰囲気の場所だが

「皇帝陛下、アリーナ・ルミナスフォールが王国で見つかったというのは本当なんだよな?」

 黒髪の少年ユーマ・キリサキはトマスだった頃の駆け出し感も未熟さもすっかかり成りを潜めていた。

 転生者として前世の記憶すら蘇らせてしまった彼にとってこの異世界は未開の発展途上地でしかない。

「そうだな。移送に失敗したがまだ王国に居るのは間違い無い。あの小娘の身柄は父に知られる前に確保しなければならんが………身柄さえ確保できれば、後は軍師殿の好きになさるが良い」

 三十代後半と見られる皇帝の主目的はあくまでフィオレット王女を手中に収める事にある様だが、アリーナの身柄確保も目的ではあるらしい。

 一方のユーマは相変わらずアリーナに対し並々ならない執着を見せている。そんな彼の両隣にはエルフィルとミリジアの二人がただ静かに座っていた。

 彼女達は馬車の中でも普段でもユーマに付き従う従者の様に寄り添っているが生気や活力といった若い女性特有のらしさは感じられない。

 皇帝もユーマの目を盗んで何度か彼女達をつまみ食いしようとした機会は何度かあったのだが、その都度何かしらの邪魔が入るという偶然が起こったのでいつしか手を出そうとすらしなくなっていたのだった。

 特に眼鏡の魔術師ミリジアには筋骨隆々とした斧持ちの戦士、ミノさんが一緒な事が多く、中年太りが始まりかけている皇帝では色々な意味で勝負にならなかった。しかし

(フィオレット王女を娶れば何も問題は無い。何なら王国ごと我が帝国に併合してしまうのも悪くは無い。グッフッフ……)

 魔王や四天王が暴れ回っていた頃はそれどころでは無かったが、人類を脅かす敵か消えた今はもう躊躇いは必要無い。

 なんなら、今はその魔王を倒した勇者すら帝国側に抱き込めているのだ。帝国皇帝は最早、ピクニックにでも出かけるでもりでグランフェルム王国への侵攻に臨んでいたのである。

(もうすぐだヴィル、お前に相応しいざまぁとNTRを味わわせてやるからな! 僕の方が先にアリーナを好きだったのに略奪しやがって……)

 ユーマ・キリサキの目的は明確だった。本来のざまぁと対象であるヴィルに復讐する事のみだった。そして、それも当然の事としてヴィルの目の前でアリーナを寝取りまざまざと見せつけてやる事だった。

(こっちはスキルがある。赤子の手を捻る様なモンさ。何なら、切り札すら切らなくても勝てるくらいだ。フッフッフッ……)

 ユーマの目には馬車の外に続々と集ってくる魔物達の軍団の姿が見えていた。もっとも王国内に潜んでいた魔物達でしか無い為、オーガやトロールと言った上級魔物、ドラゴンやマンティコア等の戦闘力に秀でた魔物は居ない。

 殆どがゴブリンやオーク、雑多な野生魔物でしか無かった。しかし、帝国軍との王国軍がぶつかる際の尖兵程度にはなるだろう。

 ユーマ・キリサキには現代知識……過去の合戦の知識程度持ち合わせていた。古代エジプトとそう変わらない兵士の数頼みなこの異世界において、自分を出し抜く者が現れるとは微塵も考えていなかった。



 略奪を繰り返しながら西進していた帝国軍の前に王都へと続く街道を塞ぐ様に待ち構えているグランフェルム王国軍の陣地が姿を現した。

「皇帝陛下、我が方の見立てでは敵の戦力は半分以下。いかがなさいましょう?」

 偵察からの報告を受けた軍の将校が皇帝に指示を仰ぐ。形状の最高司令官である皇帝だが、内情はただの名誉職に近い。

 早い話が能力が無いのである。そう言った意味では現代知識があるだけの生兵法人間であるユーマの方がまだ幾分ギリギリマシであるのかもしれない。

「我々も戦うには一度陣を整えませんと……」

 将校は皇帝に選択肢を挙げる。無知な皇帝の事、行軍隊形のまま全軍突撃すら言い出しかねない。

「なら、魔物の集団を前面に出して王国の奴らに睨みを利かせるか?」

 腕を組んだまま、ユーマは皇帝達の会話にタメ口で割り込んできた。異世界を未開人の集まりと見下しているユーマに他者への敬意等は無いのである。

「それは良いな! 魔物に見張らせている間に我が軍は陣を敷く……完璧ではないか! 流石は軍事殿、それではさっそくその様にかかれ!」

「かしこまりました」

 皇帝の指示を受けました将校は急いで馬車の外へと飛び出していく。

(魔物共、全員王国軍の前で睨みを効かせろ)

 そして、ユーマは頭の中でスキルによる指示で魔物達を直接動かし配置へと移動させていくのであった。

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