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転生したけど俺だけゲームが違う。  作者: ヤマモトユウスケ@#壊れた地球の歩き方 発売中!
二章

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第75話 親おじさん


 誰にとってもそうだが、『次元刀』はファビにとってすら驚異だ。

 『次元刀』を得たテシウス君が、一時的にファビを――アレは中身()が弱かったからだけれども――機能停止に陥れた実績があるように。

 この武器ならば、ファビと戦える。


〈ハンデだね。徒手空拳で『次元刀』と戦ってあげるよ、相棒〉


 それはつまり、うまくやればファビを止められるということだ。

 それがいま、必要な行動だ。

 しかし――。

 ラティーシャちゃんは言った。

 『次元刀』を、と。

 戦えと言ったわけじゃない。

 そもそも俺は戦いに来たわけじゃない。

 ……戦っても勝てないしな。ああ、絶対に勝てない。なぜならば。


「いや、戦わないよ。娘に手ェ上げる親がいるわけないだろ」


 そういうことだ。


〈ふぅん。じゃあどうするの?〉

「こうする」


 俺には、俺だけには、別の選択肢がある。

 クラフトメニューを開く。

 そして、手に持った『次元刀』を――解体(・・)する。


「うわ、5000ポイントにしかならねェや。しけてんなァ……」


 世界最強の武器が、きらきらした光の粒子になって、消えていく。


〈何? ファビのことも解体できるぞって言いたいわけ?〉

「まさか。俺達の間に必要なのは、戦いじゃないって示しただけだ」


 そうだ。俺達は、ちゃんと話さなきゃいけない。


「話そうぜ、ファビ」

〈話すことなんてないよ、相棒〉

「いいや、俺達は話すべきだ」

〈違うね、ファビ達は話す必要なんてない〉

「ファビ。なあ、ファビ」

〈なんだい、相棒〉

「前世、ないんだな」


 ファビの返答が詰まった。ややあって、どこにあるのか分からない口を開く。


〈……何? 新しく作った鑑定の道具で、再確認でもしたの? でも、おあいにく様。そんなの、もうどうでも良いよ〉

「う、嘘ですの!」


 唐突に、コルンさんの声が響いた。

 ファビとラティーシャの戦闘の挙動に耐えきれず、気絶していたようだが、いつからか、目覚めていたらしい。


〈コルン、うるさい〉

「ファビさんは気にしているんです、自分に魂も前世もないことを! ただのふれーばーてきすと? の延長線上のもので、えーあい? みたいな――」

〈ふん〉


 ファビが、豪速で頭を左右に振った。つまり、その内部のコルンさんの脳を。


〈よし、黙った〉

「おまえ、コルンさんにだけはガチ謝りしないと駄目だぞ……」


 脳へのダメージが不安だ。あとでポーション飲ませよう。

 ともあれ……コルンさんは、いいパスをくれた。


「フレーバーテキストの延長線上、AIみたいなもの、か。そりゃいいじゃねェか、ファビ」

〈……何がいいってのさ〉

「だって、それァ、《《オリジナル》》だってことだぞ。この世にただ一つ、ただ一人、正真正銘の――」


 言う。


「――俺の子供だってことだ。前世、嫁も恋人も、親も兄妹も、だれひとり家族がいなかった俺の、たったひとりのな」


 言って、笑う。


「俺はファビを信じる――ファビは、ちゃんと反省して、ここで事件を収められる子だってな。口は悪いし、すぐ病むし、メンタル重いし、独占欲強いし、大変な娘だけどさァ。でも、誰よりも優しい、自慢の娘だ」


 両手を広げて、待つ。


「俺はもう、何もしないよ。ファビが俺を捕らえて、それでも計画を進めようってんなら……そりゃ、親である俺のせいだ。コルンさんには悪いが、仕方ない。甘んじて受け入れるよ」


 ファビは、しばらく黙ってから、小さい声で言った。


〈……ずるいよ。そんなこと言われたら、もう何も出来なくなっちゃうよ〉


 言って、手指を振った。

 銀色の箱が消え、中からラティーシャちゃんが転がり落ちてくる。パッと見、無傷だ。むくりと起き上がって、こちらを伺う。


「……終わったようなのです。どうなったのです?」

〈ファビの負け。でもずるいよ、相棒は〉

「親ってのは、ずるいもんだ。さ、帰ろう、ファビ」


 ファビは、しかし、首を横に振った。


〈でも、ファビは……許されないことをしたよ。けじめは付けないと〉

「そうだな。いけないことした娘には、罰を与えないといけない」


 俺は一つ、解決策を思いつきつつあった。

 うまくいくかは分からない。だが。


「ところで、ラティーシャちゃん。意見を聞きたい。罰を与えるのにぴったりな武器を、俺達は宝物庫にしまい込んでいただろう。アレ、使えないかな?」



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