第67話 捜索おじさん
テシ子達が城を駆け回って確認してくれた結果、
「探しましたが、城内にはおりません。ですが、城壁の上に影があるのを見たものがいます」
とのことだった。
時刻はもう深夜になるが、大鍛冶城の各部でクラフトエナジー灯が煌々と輝いて、城内を明るく照らしてくれている。今日ばかりは捜索優先で、冒険者や逗留中の商人には迷惑だろうが、そんなこと言っていられない。俺が城主なので我慢しろ。
というか、
「影? そいつが二人を誘拐したってことか!? 暗殺同好会みたいな連中が……」
「大柄ではあったけれど、人影は一つだった……らしい。酔っ払った冒険者の目撃情報だから、信憑性は低い。犯人かどうかはわからない。ごめんなさい」
女狩人さんが言う。それがファビとコルンさんを攫った犯人かどうかはわからない。
続けて、女戦士さんが、
「いま城内にいる冒険者、商人やその使用人どもは全員把握しているが、人数の増減はないね。だから、そいつは外から来た何者か、だろう。あと、他にも盗られたものがないかと思ったが、物品目録は作りかけでね」
女戦士さんが羊皮紙の束を引っ張り出して、それらをペラペラめくる。
「アタシがチェックした範囲でなくなっているのは、麻袋が数枚、水袋ひとつ、コーン一袋、それから鉄鍋と食器類がいくつか……そんなもんだな」
「キッチンと備蓄倉庫から、か。何のために……?」
「申し訳ないが、大旦那。この城に元々あった物に関してはほぼ目録化が出来てない。キッチン周りはコルンさんのおかげで多少進んでいたから、キッチン周りの失せ物だけ見つけられた、ってことだろう」
「……そうか。じゃあ、二人は……」
「申し訳ございません、ケンゾー殿。我らが不甲斐ないばかりに……!」
テシ子が深々と頭を下げる。
「我ら、騎士として叙任していただきながら、お二人の消失についてはまったく気配さえも察することが出来ませんでした! この恥、どうか私の首一つで納めて頂けませんか!?」
「首とかいいから頭使って意見出して二人を探してくれ!」
アホを怒鳴りつけつつ、爪を噛む。
あの二人を攫った……と、すれば、相当な強者なのは間違いない。白銀級相当の異界摂理を持つコルンさんを、一撃で戦闘不能に出来なければ、手痛い反撃を食らうのは確実だ。一体、何者が……。
そこで、女僧侶さんがおずおずと手を挙げた。
「あのー、大旦那様。思いつきなんですけど……」
「なんだ? なんでもいいぞ、言ってくれ」
「例えばですけど、人を探す道具って、作れたりしませんか?」
人を探す道具?
カリブ海の海賊が持つ魔法のコンパスや、七つの玉を探すためのレーダーみたいなのを想像する。
「いや、さすがにそんな都合の良いものは――いや」
言いかけて、考える。
魔法のコンパスや人捜しレーダーは到達点としても、そこに至る過程のものを作れるならば、クラフトメニューが開放されるはず。
必死になった脳がパチパチ音を立てている。階層状のタスクツリーが思い浮かぶ。結局、俺に出来ることの中で、最大の成果を上げてくれるものは、生産チートなのだ。それに頼って、二人を見つけよう。
「――俺に作れないものはない。工房に行くぞ、手伝ってくれ」
「「「「御意!」」」」
廊下を早足で歩く。窓から夜空が見えた。やけに巨大な月も。
「今日は……満月か? いや、ちょっと形がいびつだなァ」
「はい。満月は明日の夜です」
満月。そういえば――いや、今は余計なことは考えなくていい。
なにか引っかかりつつも、俺は首を振って忘れて、足の速度を上げた。
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