第66話 激焦りおじさん
《名前》テシウス・アドレウス
《年齢/性別》24歳/女性
《レベル》57
《生命力》66
《力》68
《知恵》38
《素早さ》72
《運》32
《状態》奴隷契約、淫乱、発情、求愛
●
『鑑定術の眼鏡』――そのフレーバーテキストは『かければ誰でも鑑定術が使える眼鏡。気になるあの子も丸裸。』である。ちょっと昭和っぽい文章だな。
それによって、俺はテシ子のステータスを見ることが出来た。
生命力、力、素早さがバランス良く高水準で、戦士らしく知恵は低め。運はおそらく、そもそもあまり高くならないステータスなのだろうな、と思う。あとなんか、その……変な単語が、くっついている。三つほど。
「主殿、レベルとは……?」
「あー、強さの指標みたいな……」
なんだ。なんなんだ、淫乱、発情、求愛って。いや、姉妹達とのそういうタイミングなら、わからなくもないが……。
……もしかして、不良品か? いや、不良品はあり得ない――クラフトレベル最大の俺が作った以上、品質に間違いはない。素材の問題で、見られる情報に限りはあるだろうが、ミスはない。
なのに、こんな謎の単語が出るということは、俺の想定外の“何か”が発生していると考えるべきだ。
「……主殿? どうなさいましたか、考え込んで」
「うーん……ちょっとねぇ……」
……そもそも【ソードクラフト】の武具防具にはフレーバーテキストしか存在せず、そのフレーバーテキストが再現されているため、この世界基準でとんでもない性能を発揮している、という実態がある。『断罪剣十八番“禁”夜想曲』のように、意味の分からない性能になっている可能性もあるのだ。
かなり気まずいが、『鑑定術の眼鏡』の仕様を確認するために、この単語について聞いておく必要があるだろう。幸い、テシ子は元・男。男同士の軽いノリで聞けばいいだろう。これがラティーシャちゃんならとんでもないド級のセクハラ、ドセクハラになってしまっていた。
「テシ子くんさァ、いま発情してる?」
「あ、主殿、急に何を……!? 私をなんだと思っているのですか!?」
テシ子は見るからに狼狽して眉をひそめ、頬を赤らめた。
どうやらしていないらしい。
「ああ、ごめん。ちょっと、この眼鏡の性能に不安があって、その確認でさ。セクハラみたいになっちゃって、本当にごめ――」
「もちろん、いずれお子を授けていただきたいと思っておりますから、主殿と共にいるときはガッツリ発情しておりますとも!」
してんのかい。なんだコイツ。
「あとお姉様方と一緒にいるときや戦闘中も基本的に発情しておりますな」
「じゃあほぼずっとじゃねえの……?」
「はい!」
良い笑顔で頷くんじゃないよ。
ともあれ、性能の不安は解消された、ということで。
まずはファビの鑑定だ。あいつは嫌がっているが、しかし、鑑定によって新しい情報が得られるなら、それはプラスだろう。あと、商談を担当する戦士さんや、ザルツオムにいるラティーシャちゃんには、この眼鏡を渡しておきたい。もういくつか作っておくべきだろう。
「テシ子くん。しばらく作業を続けるから、他の仕事してていいよ」
「今は、主殿のそばで御身をお守りするのが仕事でありますれば」
いや……キミに発情されてんの怖いからどっか行って欲しいんだけど……。
とはいえ、護衛がいない状態を作るのも、良くない。領主として良くない状態だ。テシ子から襲ってくるということもないだろう。仕方ない。
おじさんは黙々と作業を進めて、追加で九個、合計十個の『鑑定術の眼鏡』を作成し、その日の作業を終えた。
いろいろあって疲れたおじさんが部屋に戻ると、いつもの鎧立てに、ファビがいない。コルンさんに運んでもらったはずが。
不審に思って、そこで気づく。そろそろ晩飯の時間なのに、コルンさんが呼びに来ない。ということは、一緒に厨房にいるのだろう。おしゃべりしながら料理をしているのかも。
やれやれ、と思って食堂に行くと、人っ子一人いない。厨房を覗いても、誰も――誰も、いない。これは、おかしい。
ぞ、と背筋に悪寒が走る。ファビはこの世界唯一の喋る鎧で、コルンさんは希少種族のダークエルフだ。そして、このティリクの森の『大鍛冶城』には今、あくどい商人や荒くれ者の冒険者など、いろいろな人間が出入り出来る状態である。
誘拐、拉致、監禁、密売――いろんな悪い想像が湧き出てきて、俺は慌てて部屋を飛び出して、叫んだ。
「アッ、アドレウス四姉妹ィ! 集合してくれェ!」
・ブクマ
・感想
・下の☆☆☆☆☆で評価
・レビュー
・Xで読了ツイート
等々をしていただけると励みになります!




