第62話 『魂見月鏡』ゲットおじさん
そして、翌日。
テシ子達は意気揚々と遠征し、ところどころ破損した『05式魔導作業鎧』のぶっとい腕で鱗主の首を担いで帰ってきた。
広場の冒険者達の喝采を浴びながら、テシ子は城の玄関で待っていた俺にひざまずいて、
「ただいま戻りました、我が主殿」
誇らしげに、そう言った。
「怪我は?」
「小さな怪我はいくつか。……いえ、実際は骨折などもあったのですが、持たせていただいたポーションのおかげで、全く傷は無く」
「そっかそっか。よかったー。それじゃ、さっそく開拓の続きを……」
と、指示をしようとしたところで、テシ子達四人が、何か物欲しげな顔でおじさんを見ていることに気づく。おもちゃ売り場で指をくわえている子供のような……。
脇に控えていたコルンさんが「ケンゾー様、お褒めの言葉を」と囁いた。
〈領主としての振る舞いだよ、相棒〉
ああ、なるほど。
領主って、つまり上司だもんな。部下の成果はみんなの前で讃え、失敗は二人きりの時に指摘する――のが、いいんだっけ。おじさんはそんな対応されたことないけど。
広場にいる冒険者や、少数ながらも存在する商人達に対して、おじさんが「いい領主だぞ」ところを見せないといけないわけだ。
ともあれ、おじさんも膝をついて、テシ子の肩に手を置いた。
「よくやった。えらいぞ、四人とも。さすが俺の騎士達だ」
テシ子達は嬉しそうに笑って、「もったいなきお言葉!」と四人でハモった。
広場から、自然と拍手が湧き上がって、四人の騎士をたたえる言葉も飛んでくる。
……枯葉人になって、その信用が一度、地に落ちてしまった彼ら――彼女らがこうして賞賛されるのは、おじさんとしても嬉しい。もちろん、おじさんは被害者だったので、テシウス君だった頃の振る舞いには、今も眉をしかめるけれど、しかし、しかしだ。
今や、彼女たちは我がイザヨイ領のメイド騎士……メイド騎士ってなんだ……? ともあれ、メイド騎士になったわけで、だったら、やはり家族の一員なのだ。
彼女らにだけ聞こえる小声で、
「……これからも、開拓の難敵は君たちに頼ることになると思う。それ以外にも、商人とのやりとりだったり、冒険者との折衝だったり……。だから、よろしく頼むよ」
と伝える。助けてもらわないと困るしな。
テシ子は感極まった顔で「御意……!」と涙を流した。泣くほどか?
……まあともあれ、俺抜きで――武器は用意したけど――ティリクの森の鱗主という障壁を取り払うことが出来た。
いよいよダークエルフ集落の跡地、発掘開始である。
で、翌日。
早速、現地に向かった作業員達(withパワードスーツ)によって、爆速で発掘が行われた。というか、
「発掘というほどのものではありませんでしたな。コルン殿には酷な話となるでしょうが、三百年という月日と鱗主によって、集落の大部分が踏み潰され……。かろうじて、井戸の痕跡のようなものだけが、発見できました」
と、作業部隊を率いるテシ子が嬉しそうな顔で言う。
コルンさんは「いえ、仕方ありません」と眉を八の字にした。
「地形だって変わっているでしょうし、ダークエルフの集落は樹上の木製小屋と天幕が中心でしたし。残るものは、ほとんどないでしょう。お疲れ様でした、テシ子さん」
「は。しかし、朗報もあります」
テシ子がそう言って取り出したのは、布の包みだ。そっと開くと、中にはバキバキにひび割れた丸い手鏡が入っていた。コルンさんが「まあ!」と叫ぶ。
「『魂見月鏡』ですね! ああ、でも、やはり割れてしまって……」
「いや、そこは我らが主ならば、なんとか出来るのでは無いかと」
テシ子が期待と信頼に満ちた瞳で俺を見た。
「そうだねェ……。ま、どれどれ……」
『魂見月鏡』に触れてみる。大昔に星生みの女神様から与えられたというアイテムだ。もしかすると、おじさんには修理も新規制作も出来ない代物かもしれない。
だけど、もしもクラフトツリーが解放されれば――。
「――うん、なるほど」
〈……どう? 直せそう? ま、まあ、駄目でもファビは、それを受け入れて、相棒の相棒として過ごしていくだけだから――〉
ぽんぽんと鎧の胸あたりを叩く。
「大丈夫だよ、ファビ。――なんなら、もっとすごいの作ってやれそうだ」
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