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あなたには秘密です!  作者: 明石 みなも


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26/30

嵐の前の静けさ

 襲撃の翌日は雨だった。

 気分を憂鬱にするようなものではなく、緑が生き生きと喜ぶ恵みの雨だ。

 ここしばらくの喧騒から隔離されたような静けさの中、朝食を食べ終え、ノエルはサンルームで雨を見ながら食後のハーブティーを楽しんでいた。


 いつもはその前に王宮へ向かうヴィンセントを見送るのだが、今日は迎えに来たパーシヴァルと暫く話し込んで戻って来た。

 ノエルとソファーに座り、ゆっくりしていて動く気配がない。給仕を終えたリサは退室したので二人っきりだ。


「ヴィンセント様、今日はお休みですか?」

「いいや。明日は夜会があるから今頃王宮は猫の手を借りたいほど忙しいだろう」

「夜会が? 王宮の夜会はもっと先だったと記憶していますが。忙しいならヴィンセント様にもお仕事があるのでは……」

「昨日、暴漢に襲われ、ノエルはひどいショックを受けて寝込んでしまった。そしてぼくは番の君の看病をしていて、側を絶対に離れない。そういうことになっている」

「ええ……? 私、元気ですが」


 ノエルは首を傾げた。そもそも襲われた程度で寝込むような繊細さは持ち合わせていない。


「兄上たちには本当のことを報告した。さっきのはそれ以外に広めた話だ」


 あの場に駆けつけた騎士たちにも口止めしてあるそうだ。

 わざわざそうやって情報を操作するのは、もちろん何か理由があるのだ。


「……詳しい事情を伏せて犯人の炙り出しをするのですか?」

「『それでボロを出してくれたら面白いね』と、兄上なら言うだろうな」

「あ、じゃあ違いますね……」

「そもそも、犯人はコンスタンス王女しか考えられない。炙り出す必要はないな」

「そうでした……」


 捕まった兵士たちはすべて北の宮周辺を哨戒していた者たちだった。

 近くにある詰め所に飲みかけのワインが残っており、調べると意識を朦朧とさせる薬に近いものが検出された。

 それ以外にも彼らは何らかの薬品を盛られていたようで、今は全員病院で治療を受けている。


 ひとりだけ下戸のため無事だった兵士が、ワインは他の備品などと一緒に運び込まれたと証言している。

 銘柄はズメイのもので、購入した店の店員は発注書に従い、旧王宮に搬入したそうだ。

 そこから北の詰め所に分配された。

 普段王宮の備品が購入される過程通りで不審なところは何もない。


 問題はワインの発注書だ。

 名義は東の宮に仕える侍従の名前が使われているのだが、当然本人にこんな発注をした記憶はないし、彼は備品の注文をする担当ではない。

 そもそも筆跡が違うことから、別人が彼の名前を勝手に使ったものだと考えられる。


 一番怪しいのは勿論コンスタンスだ。ただ、発注書一枚で彼女を追い詰めるのは難しい。

 コンスタンスは王女である。周りの人間にすべてを擦り付け、逃げることが可能だ。

 ズメイから追い出すことはできそうだが、彼女の態度からして、簡単にトラヴィスを諦めるとは思えない。

 下手を打つと国を巻き込んだ大騒動に発展する恐れもあった。


「コンスタンス王女は、あれだけの兵士を操り君を襲撃させた。おかしくないか。王女にとって一番邪魔なのは義姉上だ。何故そちらを狙わない。

 一番警備が厳しい王宮の奥で、あんな規模の襲撃事件を起こせば警戒が上がる。次はないのに、何故貴重な機会を君を殺すために割いた?」

「アンジェリカ様を狙ったとは思わないんですか? 昨日、私はアンジェリカ様と昼食を共にしました。東の宮に比べれば離宮の方が警備は緩いですし、絶好の機会だと思うんですが」

「義姉上は気まぐれに君のところに来るだろう。確実さに欠ける。襲撃は義姉上が帰ってから三時間もあとに起こっているし、君を狙ったものと考えるのが道理だ。

 それに先日、君の手引きで義姉上が逃げたことは王女も知っているはずだ。もし本当に義姉上を狙うとしたら、同じ失敗を犯さぬように、君がいる場は避けると思う」

「でも、私を狙う理由がありません」

「あるだろう。ぼくたちにしかわからない理由が」


 ヴィンセントはそこで言葉を切り、じっとノエルの目を見た。

 もう番の繋がりは彼女には感じ取れないのに、何が言いたいのか手に取るようにわかった。


「コンスタンス王女が、ミカエラの生まれ変わりだとお疑いですか?」

「ああ。そうでなければノエルを狙った理由がわからない。ミカエラは前世で君に企みを阻止されているし、ブラックウッド家には処刑台へ送られた。邪魔をされる可能性が高い君を放ってはおかないだろう。

 何より、あれはミカエラの手口にそのままだった」

「……そうですね。兵士たちは洗脳されたようにしか見えませんでした。

 それに私、見た目から何から何まで全部前世と同じですし、生まれ変わった人間からしたら同類にしか見えないでしょうね」


 コンスタンスがミカエラの生まれ変わりだと仮定すると、いくつもの共通項が浮かび上がってくる。

 例えば悪事は自分は絶対に直接動かず、すべて人にやらせるところ、獣人を自称し、番と見做した相手にとことん執着するところなどだ。


 そして、あの正気ではなかった兵士たち。

 アッシュフィールド家は断絶し、あの悍ましい技術は失われた。

 なのにあの兵士たちの挙動はかつて彼女を殺した令嬢や、ヴィンセントに薬を盛った使用人の様子に酷似していた。


 ただ、ノエルは最後までミカエラに会ったことがなかった。

 彼女の印象はすべて伝聞によるものでいまいち確信が持てないが、よく知るヴィンセントは違うらしい。


「嫌でしょうがないが、ぼくはミカエラのやり方が多少わかる。あいつは執念深い。

 今回ノエルが助かったと知れば、次は確実に始末するために別の手を考えるはずだ。……兄上と義姉上から一旦気を逸らせる」

「私は囮ですか」

「すまない、相談もなくこんなことを決めて。ほんの少しの間のことだし、君のことは命に代えても守る。だから……。だから、ぼくを嫌いにならないでくれ」


 震える手がノエルの手を掴もうとして、躊躇う。

 縋るような眼差しのヴィンセントに思わず吹き出した。


「嫌いになんてなりませんよ。もし本当にコンスタンス王女がミカエラの生まれ変わりなら、何も知らないトラヴィス殿下たちより私たちの方が有利です。

 相談がなかったことも、そんな時間がなかったんですから気にしてません。だから命と引き換えにして私を守るなんて言うの、やめてください。一緒に戦いましょう」


 そう言って宙を彷徨っていた手をノエルの方から握った。

 今回、狙われたのは彼女だったが、アンジェリカがあの規模の襲撃を受けたら大変なことになっていた。

 身重の義姉を守るためにヴィンセントは正しい判断をした。


「……君はもっと怒っていい。勝手にこんなことに巻き込んだぼくは最低だ。どうか罵ってくれ」

「落ち着いてください。すごいことを言ってますよ」

「ぼくは落ち着いている。その上でぼくがまた立場を悪用してノエルを利用する最低野郎だと思った。

 でも君に嫌われたくはない。だから気が済むまで罵ってほしい」

「いや、その、お構いなく……」


 やたらと罵られることを望むヴィンセントにノエルはうまい言葉が出てこなかった。

 ヴィンセントのこの態度は、そういう趣味というより、そうしないと不安なのだ。

 前世でノエルを死なせてしまったことに、ヴィンセントは強く責任を感じている。


 ノエルが気にするなと言っても根強く染みついた自罰感情はそうそうは無くならない。

 前世での因縁が深すぎる二人は別々の道を歩むことが正しいのかもしれなかった。

 でも、それはノエルが嫌なのだ。我儘だが、ヴィンセントが苦しんでも、彼女は隣にいたかった。


「ヴィンセント様、あのですね。私がずっと隠密になるために育てられたのはご存知でしょう?」

「えっ、あ、ああ……」

「沢山勉強や鍛錬をしました。でも、私はあなたの婚約者になるから、もう今までやってきたことは役に立たないんだと思っていたんです」

「それは……すまない」


 ヴィンセントは申し訳無さそうに目を伏せた。ノエルは繋いだ手に力を込める。


「謝らないでくださいよ。これから役に立ちそうなんですから」

「えっ?」

「隠密初仕事が未来の国王夫妻の護衛任務なんて緊張しちゃいますね。立派な囮を務められるように手伝ってくださいね、ヴィンセント様!」

「ノエル……」


 精一杯の笑顔を浮かべると、ヴィンセントは泣きそうな顔をした。手を強く握り返される。


「……どうして、君がぼくの番なんだろう」

「まあ! 私が番じゃ不満ですか?」

「違う。ぼくには勿体無さすぎる」

「勿体無いってなんですか。褒めるんならもっと違う言い方をしてください!」


 繋いだ手をぶんぶん振って不満を訴えると、ぐいっと引っ張られた。

 もう片方の腕が背中に回る。鼻がくっつきそうな距離にヴィンセントの顔があった。

 青にひと匙の緑が混じった異形の目と至近距離で見つめ合う。


「君はこの世の誰よりも素晴らしい」

「ふへっ! いやそこまででは……」

「いつもぼくを前向きにする言葉をくれてありがとう」

「す、好きな人にはいつも元気でいてほしいですから、言葉くらい惜しみませんよ……」

「君がぼくに恋をしてくれているかわからないが、もう手放せない。愛しているよ」

「ほぁ」


 真っ直ぐ告げられた愛の言葉に激しく動揺する。一瞬の内に顔が熱くなった。


「わた、わたし、も……」

「ノエル?」

「私も、あなたが、すき……」


 ヴィンセントが息を飲む。

 恥ずかしくて愛してる、はまだ言えなかった。前に言った好きとは意味が違うことをヴィンセントは察してくれただろうか。


「それは、自惚れてもいいのか?」


 ちゃんと伝わったようだ。ノエルは必死で首を縦に振る。

 バクバクと心臓が暴れていた。もう視線を合わせていられず目を逸らしたら、咎めるように頬に手が添えられた。


「……しても?」

「そういうの、は、恥ずかしいので許可とか取らなくていいですっ」


 目が開けていられず、ぎゅっと瞑る。

 繋いでいた手が指を絡めるように繋ぎ直された。

 それに気を取られていると、唇に柔らかいものが触れる。最初は掠めるように、次は確かめるようにしっかりと唇が合わさった。



 ◇◇◇



「それで、コンスタンス王女のことですが」


 ヴィンセントの胸にもたれかかり、顔の火照りと動悸が治ったところでノエルはそう切り出した。

 身を離すとヴィンセントは露骨に嫌そうな顔をする。


「どうしました?」

「……もう少し、余韻に浸っていたかった」

「余韻?」


 何の、と問う前にヴィンセントは気分を切り替えたようで、表情を引き締める。


「何か訊きたいことがあるなら答えよう」

「えっと……。明日、夜会があるんですよね?」

「ああ」

「その場で、決着をつけるおつもりですか?」

「そうだ。と言っても、ぼくがやることは何もない。兄上がケリをつけるそうだ」


 王宮内で襲撃事件が起こったというのに警備の見直しも終わらないうちに夜会を催すなど普通のことではない。

 コンスタンスを排除する計画があったからこそ、ヴィンセントはノエルを囮にしたのだ。

 それにノエルはすぐ気づいたからこそあっさり許せた。


「コンスタンスがミカエラだとしたら、また誰かを操るだろう。用意するのに時間がかかるし、明日の夜会に向けての準備もある。油断するつもりはないが、ノエルが襲われることはもうないはずだ」


 確かにすぐ襲撃者に仕立てる人間を用立てることは難しいし、トラヴィスは確実にコンスタンスを仕留めるだろう。

 ただノエルは何かが引っかかっていた。


「ヴィンセント様は、ミカエラのやり口に詳しいのですよね? 具体的にはどのような感じなのですか?」


 ノエルがミカエラについて知っていることは少ない。

 数少ない情報すらすべて他人から聞いたことばかりだ。最早実物に会うことは叶わないから、実物を知る人の話を聞いておきたかった。

 ノエルの質問に、ヴィンセントは露骨に顔を歪めた。


「……奴はとにかく慎重だ。そしてさっきも言ったが執念深い。かつてのぼくにはノエルと婚約する前に三人の令嬢が婚約者候補として名前が挙がっていた」


 その三人は伯爵令嬢が二人と侯爵令嬢がひとりだった。

 どの令嬢も人柄に優れ、頭も良く、王子の婚約者に申し分ない資質を備えていたそうだ。


「だが、三人共立て続けに社交界から姿を消した」

「一体何が……?」

「ある者は男に襲われ、ある者は事故に遭い命を落とした。駆け落ちした者もいたな」

「それをすべてミカエラが……?」

「ああ。ただ、ミカエラは直接手を下してはいない。その三人に悪意を持つ者を言葉巧みに操って、そうなるように仕向けたんだ」

「何という……」


 ノエルは言葉を失った。

 ミカエラのせいで人生を壊された令嬢たちに同情を禁じ得ない。一見マシな駆け落ちした令嬢は、本当に想い合う相手と逃げたのだろうか。


「奴は念には念を入れて新たな候補にならないように彼女たちの妹にまで手をかけた。誘拐や事故死で妹たちは社交界にデビューする前に消えたんだ。

 ある家は娘を守るため他国の貴族の養女に出した。それすらミカエラは見逃さず、その子は養子先の家へ行く道中で行方不明になって、それきりだ。まだ二歳だったのに……」


 当時のことを思い出したのかヴィンセントが沈痛な面持ちになる。

 それらはブラックウッド家の調査が入って初めてわかった事実だそうだ。それまでは三人の令嬢についてしか怪しまれてなかった。


 慎重に行動し、己の痕跡を消し、執念深く狙い続ける。

 その標的になっていたヴィンセントはどれだけ恐ろしかっただろう。

 そして、ただ王子の婚約者候補に名前が上がっただけで家族を立て続けに失った貴族たちはどれほど悲しんだだろう。

 自分の欲を満たすために犠牲を出し続けるミカエラに怒りが湧いた。


「不思議なのですが、どうしてミカエラはそこまでできたのでしょう? 事件に関係ない人間はともかく、被害者たちは誰に何をされたかわかっているはずです。

 如何にミカエラが公爵家とはいえ、所詮令嬢。同じようにやり返されなかったのですか?」

「そこがミカエラの巧妙なところだ。令嬢たちに悪意のある人間を操ったと言っただろう。そういう連中を矢面に立たせ、自分はその陰に隠れるんだ。だから被害者たちもミカエラではなく、そいつらを犯人だと思い、報復はそちらに行く」


 ミカエラは暗殺一族の一人らしく暗躍していたようだ。それにしても、何もかもが彼女にうまくいき過ぎている気がする。


「本人はずっと外れたがっていたが、ミカエラはずっと王太子の婚約者候補のままだった。前の兄上は最初の茶会でミカエラを見初めて、ずっと婚約者に望んでいた。ミカエラが拒絶していたのと、国王と王妃が反対したから成立しなかったが。

 でもあの人はギリギリまでミカエラを望み、贔屓していた。だからミカエラは社交界での立場が高かったし、外面は完璧だったから評判も良かった。奴はいつも安全な場所にいた」

「そうだったんですね……」


 それはノエルの知らない事実だった。

 王太子の恋心を利用し自らの立場を確立するなど、ミカエラはノエルが思ったよりも狡猾だ。

 ミカエラについて詳しく知るたびにノエルの違和感は増していく。何かを読み違えている気がしてならない。


「奴はじっくり準備を整えてから行動に移す。今日のところは何もないだろうが、襲撃もあったことだし、離宮の周りの警備は増やしている。

 ぼくもコンスタンスを排除できるまでノエルの側を離れないから安心してくれ。必ず守る」

「いつの間に……」


 ノエルは耳を澄ませた。確かに雨音に混じって、耳慣れない足音がする。

 雨は嫌いではないが、音を誤魔化してしまうし、匂いも水で流れてわかりにくくなってしまう。

 離宮周辺は全面的に芝生か石畳で整えられているから足跡も残らず、侵入者に有利だ。


「ヴィンセント様。念の為、今日は一緒の部屋で寝ませんか?」

「ごふっ!」


 双方の安全を考えた提案をしたら、ヴィンセントが噴き出した。気管に何か入ったのか激しく咳き込んでいる。ノエルは慌てて背中を撫でた。


「大丈夫ですか?」

「な、なに、なにを……」

「別々で寝ると、警備の者も割かないといけないでしょう。それに私、知らない気配の者が部屋に侵入したらすぐ目が覚めて襲撃に気づきます。ひとりよりふたりでいた方が安全だと思います」

「いや、待ってくれ。ノエル落ち着いてくれ」

「落ち着いた方がいいのはヴィンセント様ですよ」


 ノエルは極めて冷静に今後の話をしている。動揺しているのは明らかにヴィンセントだ。


「そうだ! 君の部屋の前でぼくは寝ずの番をする。そうしよう」

「王子殿下を廊下で寝かせるなんてできません! それに侵入者が律儀に扉から入ってくるはずありませんし、中にいた方が確実です」


 ノエルに論破されてヴィンセントは頭を抱えた。


「とにかく駄目だ!」

「何故ですか? 婚約もしてない二人が同じ部屋で寝起きするのは外聞が悪いですが、見つからないように行きますので……。あっ、周りに秘密でヴィンセント様のところに行けば侵入者に対する撹乱になりそうですね!」


 警備を割いてノエルがいるように見せかけて、誰もいなかったら侵入者の不意を突けそうだ。

 一人盛り上がるノエルをよそに、ヴィンセントは頭痛を堪えるような表情だ。


「ノエル……。さっきも言ったが、ミカエラ、いやコンスタンス王女はすぐには動けない。だから同衾する必要はないんだ」

「相手の行動を都合良く予想するのは良くないですよ。油断に繋がります。コンスタンス王女には自由に動き回れる侍女がいますし、何をして来るかわかりません」

「確かにそうかもしれないが、警戒が上がっている今動けばコンスタンス王女に疑いがかかるのは明白だ。ミカエラは泥を被るような危険は犯さない」


 ふと、ヴィンセントの発言が引っかかった。

 ミカエラは徹底して他人に罪を擦り付け自分の体面を守っている。

 だが、コンスタンスは先日のアンジェリカを追いかけてきた時は自ら動いたのだ。


 そのせいで彼女はトラヴィスから抗議を受けている。

 コンスタンスがミカエラの生まれ変わりなら、上手く誘導してジャスティーナたちだけを行かせたはずだ。


(コンスタンスは本当にミカエラの生まれ変わり?)


 小さな違和感である。コンスタンスはミカエラ。そんな先入観や思い込みが足を掬う。


「ヴィンセント様。ひとつ、提案があるのですが……」


 ノエルは自分の考えを伝えるために口を開いた。長い話し合いが始まった。




 その日の夜、ノエルは窓から部屋を出ようとしてリサに止められた。

 雨が降り続く中、部屋の入り口を使わずとも簡単に侵入できることをヴィンセントに実践して見せようと思ったのだ。


「ヴィンセント殿下がかわいそうなのでやめてください」


 リサはそう言っていた。何がかわいそうなのか、ノエルにはいまいちわからなかった。

あと四話で一旦終わります。

明日からは二話ずつ投稿していきます。

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