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第3話 公爵家の決断

「じゃあ、お父さんに話を通してくるね」


 ロザリーはそう言って立ち上がり、寝室を出ていく。向かう先は父の書斎だ。


「お父さん、お父さん」


 ドアをコンコンとノックすると、父が「どうしたんだい」と姿を見せた。


「お父さん、お姉ちゃんにお願いして、聖女の立場もらった」

「……一から、説明してくれるか?」


 彼はそう言ってロザリーを書斎に招き入れる。父は「少し待っててね」と紅茶を淹れた。


「ありがとう。お父さんの紅茶、大好き」

「そう言ってくれてうれしいよ。……それで?」

「お姉ちゃんから聖女の立場もらった」

「……どういうことかな?」


 父は首を傾げる。ロザリーは「えっとね」と口を開いた。


「お姉ちゃんに神託が降りた」

「封印の聖女の?」

「うん」

「おめでたいことじゃないか」


 彼は笑みを浮かべる。ロザリーはそんな父親をジトッと見つめた。


「……お姉ちゃんの状況、分かってる?」

「……そうだな」


 父は静かに目を伏せる。


「……クロディーヌには荷が重い」

「そうだよ。しかも、聖女って王太子の婚約者じゃん」

「……そう、決まっているね」

「公爵家を継げるの、お姉ちゃんしかいないんだよ?」

「……そうだね」


 クロディーヌは先妻の子。公爵家を継ぐのも彼女だ。


「だから、立場だけわたしが貰っちゃおうって」

「……クロディーヌは、なんて?」

「わたしがいいのなら、くれるって」


 「聖女は無理、って言ってたよ」と、ロザリーは笑う。


「祈りは? あれは王宮で行うはずだ」

「行儀見習い、だっけ。それでお姉ちゃんをわたしの侍女にすればいい」

「できなくはないが……。クロディーヌが怖がらないか?」

「お姉ちゃんは私が隠す」

「封印の儀のときは?」

「その時はうまくやる」

「……どうやるんだい?」

「……周り巻き込んで、手を打つ。大丈夫。お姉ちゃんと公爵家は守るよ」


 父はしばらく黙り込み、静かに「……分かった」と言った。


「一旦、王家と交渉しよう」

「だめ」


 ロザリーはまっすぐ父を見つめた。彼はじっと彼女を見つめ、ゆっくりと口を開いた。


「……なにを、見たんだい?」

「……分かる?」

「伊達に16年も君の父親をしていないよ」

「……魔王が、復活する夢」


 父の顔色が変わる。


「……どうしてだい?」

「お姉ちゃんが、封印の儀をできなくなった」

「……何が、起きた?」

「言わない」


 ロザリーは首を振る。彼はじっとロザリーを見た。


「……何か、危険なことかな?」

「言わない」

「……なるほど、危険なことか」

「……分かっちゃう?」

「当たり前だ」


 父は軽く笑う。


「クロディーヌを聖女にしたらだめなのか?」

「うん。立場だけ入れ替える」

「……なるほど。……君は大丈夫かな?」

「……私には、予知夢があるもん」

「……分かった」


 ロザリーの言葉に、彼は静かに頷いた。


「公爵家は、君たちを全力で守る」

「別にいいのに」

「二人とも、私の大事な娘だ」


 父は笑顔を浮かべる。


「王家に手紙を認めるよ。ロザリーが神託を受けた、とね」

「ありがとう」


 彼の言葉に、ロザリーは綻ぶような笑顔を浮かべた。

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