第2話 全ての始まり
封印の儀が行われる一年前の、とある日のこと。ロザリーは夢を見た。
祭壇の前に立つのは、クロディーヌ。彼女は手を組み祈りを捧げる。その時だった。
「聖女、覚悟!」
魔族が群衆の中から飛び出し、クロディーヌを襲う。ナイフを突き立てた魔族は、そのまま勢いよく引き抜いた。クロディーヌは赤を吹き出し、そのままその場に倒れる。……そして、祭壇から黒い靄が立ち上がった。
「……ああ、魔王様! 我らが魔王様!」
魔族は両手を広げる。靄はどんどん大きくなっていく。
……やがて、世界を終わらせる魔王が、顕現した。
気がつけば、黒い空間にいた。目の前には輝くドレスを纏った金色の女性が立っている。
『来たるべき時まで、そなたの姉を守れ』
その人はそれだけ言って、ふわりと消えた。
「……いつもの、予知夢……?」
目を覚ましたロザリーは首を傾げる。
……あれは、封印の儀かな? ……来年のはずだけど……。
ロザリーがベッドでごろごろしていると、隣で寝ていたクロディーヌが声をかけた。
「……ロザリー、どうしましょう……」
その瞳は揺れていた。ロザリーはゆっくりと首を傾げる。
「どうしたの?」
「……神託が、降りたの」
「……お姉ちゃんが、聖女なんだ」
クロディーヌの肩がびくりと震えた。
「……無理」
「だよね」
ロザリーは笑う。
「……お姉ちゃん、人前に立つの、怖いもんね」
「……うん……無理……。王太子と婚約なんて……」
クロディーヌの手は、震えていた。
「絶対、絶対、痣について言われる。……怖い」
ロザリーはクロディーヌを見つめた。しばらくの沈黙のあと、口を開く。
「……お姉ちゃん」
「……なに?」
「……私がやろうか?」
クロディーヌはぴたりと固まる。
「……封印、できないでしょ……?」
「うん。だから、祈りと封印はお姉ちゃんがやって」
「……でも」
「でも?」
「……あなたに、役目を押し付けたくない」
ロザリーは「お姉ちゃんったら」と小さく笑った。
「お姉ちゃん」
「……なあに?」
「わたし、聖女としてちやほやされたい。だから、聖女の立場、ちょうだい?」
「……あなたが、いいのなら……」
クロディーヌは、ゆっくりと頷いた。
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