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第1話 封印の儀

挿絵(By みてみん)


新連載です。全7話の短編です。完結まで毎日投稿します。

「それでは、本日もよろしくお願いします」


 王城内にある祈りの泉にて。ロザリー・エクラは騎士に付き添われ、泉へ向かった。姉のクロディーヌ・エクラも、その後ろに続いている。扉が閉まる。


「じゃあ、お姉ちゃん。お願いね」

「ええ」


 ロザリーは満面の笑みを浮かべる。クロディーヌはで静かに微笑み、泉に身体を浸した。そしてそのまま祈りを捧げ始める。泉は輝きを増す。ロザリーはその横で、のんびりと本を読んでいた。

 光が収まる。クロディーヌは泉から出る。ロザリーは本から顔を上げた。


「終わった?」

「終わったわよ」

「そう。じゃあ、水かけて」

「……ええ」


 クロディーヌはこっそり持ち込んだバケツで、ロザリーに水をかける。ロザリーはすぐさまタオルで体を拭いた。


「これでよし。お姉ちゃんもさっさと着替えて」

「そうね」


 クロディーヌが着替えを終えると、ロザリーは扉を開ける。扉の先には、王太子であるオーギュスト・グロワールが立っていた。


「ロザリー、お疲れさま。体は冷えていないか?」

「大丈夫。でも、ありがとう」


 オーギュストはタオルでロザリーの肩を包む。


「オーギュスト様、いよいよ明日ね」

「よろしく頼んだぞ」


 二人はくすくすと笑いをこぼす。使用人たちはそっと視線をそらした。

 クロディーヌは壁際で肩をわずかにこわばらせて立っていた。


「……おい」


 そんなクロディーヌに王太子の護衛騎士をしているテオドール・ベルトランが近づいた。


「……冷えているぞ」


 彼は上着を脱ぎ、それをクロディーヌの肩にかけた


「……何も、言わないのか?」

「……ええ。これでいいの」

「だが!」


 言い募るテオドールの唇に、クロディーヌは人差し指をあてた。そのまま耳元に近づき、そっと何かを囁く。その瞬間、テオドールは視線をそらした。





 グロワール王国では、数百年に一度魔王を封印し直さなくてはならない。神託を受けた封印の聖女は、一年間王城の中にある祈りの泉で祈りを捧げ、最後に封印の儀を行う。

 本日は封印の儀。ロザリーは祭壇の前に立った。手を組み、祈りを捧げようとした、その瞬間だった。


「聖女、覚悟!」


 群衆の中から魔族が飛び出す。彼は祭壇の前に立っていたロザリーの腹にナイフを突き立てた。赤い血がほとばしる。オーギュストも、クロディーヌも、テオドールまで息を飲む。


「……これで、魔王様が……!」


 祭壇からは黒い霧が上がり始めた。……だが、ロザリーはにんまりと笑った。


「……お姉ちゃん、やって」

「……でも」

「早く!」


 クロディーヌの手は震えている。それでも。


「……封印」


 彼女がそうつぶやくと、柔らかな光が走る。祭壇を包み込み、黒い霧を押し戻していく。


「……私が聖女だと思った? 残念でした♪」


 魔族は「クソっ」と叫びながらナイフを勢いよく引き抜く。赤が噴き出す。だが、ロザリーは笑っていた。視界がすごい勢いで狭まっていく。


「……っ、ロザリー!」


 オーギュストの声が、聞こえた気がした。

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