1-5. 青く澄んだ風が吹いた秋
(*綺夏視点)
町の並木道の色の移り変わりを感じる季節、わたしは新しいことに挑戦していた。大学生になったらやってみたかったこと!本屋でバイトを始めたのだ。昔から本を読むのが好きで本屋さんにくると気分があがるからちょこちょこ足を運んでいた。これまでいろんな本屋さんに行ってみて、その中でもダントツで好きな本屋さん。アルバイト募集の張り紙を見つけ、応募したらご縁があって働くことができた。
正直、本屋さんの仕事は華やかな仕事ではなかった。かなりの重労働だった。でも、気分の上がる場所で働けることがとても幸せだった。
仕事が慣れてきたある日、本屋に併設されたオシャレなカフェに思輝くんが勉強している姿を見つけた。
あれ、制服姿の思輝くんだよね…
遠くだからよく見えないけれど、多分思輝くんで合ってると思う。部活がないってことは、テスト期間なのかな?
すぐそばの女子高生二人の会話が聞こえてくる。
「みさき、やっぱりいるじゃん、日向。今がチャンスだよ」
「テスト勉強してる横顔もかっこいい…いざ目の前にすると緊張するー」
「いつも見てるだけなんだからさ、この機会逃したら、次はいつになるかわかないよ?ほら、行っておいで」
思輝くんのことだと、すぐにわかってしまった。
思輝くんの傍に歩いて行った女の子は、彼と少し話した後、そのまま向かいの席に座り、一緒に勉強を始めた。
す、すごい行動力!
あんなに緊張するって言ってたのに…見守っていた女の子はその様子を見て安心した表情で帰っていった。
青春だな…
高校生のころ、楽しかったな…ちなつと同じクラスになった高校2年生で、わたしは初めての彼氏ができた。同じクラスの人だった。かっこよくて、優しくて、高校生らしい恋ができたと思う。
最後の方はいつも彼を怒らせてしまう自分をいつも責めていた。傷つけたくないのに、わたしの言動でいつも怒らせてしまってたな…甘くて苦い思い出がよみがえってくる。
でも、きっと思輝くんは楽しい恋愛をするんだろうな…モテていても、大切にしたいと思う人を見つけて一途に思いを伝えるのかな…
でも、なんでだろ…
モテている場面は想像がつくけれど、誰かに惚れている姿は全然想像できないな…頭がいいがゆえに、なかなか人を好きになれないとか…?
思輝くんってどんな恋を描くんだろう…?
「剣さんっ」
名前を呼ばれ、急に現実世界に引き戻された。
「はいっ」
振り向くと、バイトの先輩の岡野くんだった。
「実は、新刊のポップを書いてって頼まれたけど…剣さんってポップ書くの得意だったりする?」
岡野くんはすごくフレンドリーで違う大学の同い年の人。わたしよりも長くこの本屋で働いている。
「わたしでよければポップ書くよ。新刊ってどの本のこと?」
いけないいけない、高校生の思輝くんをみて、高校生活の思い出に浸ってる場合じゃない。
仕事しよう!
二人で新刊の方へ向かいながら、歩いていると岡野くんが話をふってきた。
「さっき、カフェの方見てる気がしたけど、何見てたの?」
「あぁ…実は、知り合いの人がカフェにいるかもって思って。」
「そうだったんだ。てっきり、お店のおすすめの看板を真剣に見てるのかと思ったじゃん」
はははと笑う岡野くんの軽いエネルギーが心地いい。この人、親しみやすくて、人当たりがいいんだよね。
「おすすめの看板、全然見てなかった(笑)そういえば、おすすめの商品、変わったか知ってる?今、10月になったもんね」
「スイートポテトチャイラテってなってたよ。実は、俺、いつもチェックしてる。」
「うわぁ、とってもおいしそう!間違いない組み合わせじゃん」
「よかったらさ、仕事帰り、一緒に飲んでみない?今日、上がる時間一緒だったよね?」
「いいね~楽しみ~。ポップ書くの、気合入る!」
サラっと誘ってくれるところもいいなと思った。これからどうなるかわからないけれど、この人アリかもしれない。そんなことをちょっと考えちゃったりしながら、残りの仕事に精を出した。
【潜在意識の視点から紐解く『第1-5話の答え合わせ』】
①気分の上がる場所=好ましい現実の引き寄せ
「大好きな本屋」で働き始めた綺夏。自分の心地よさを優先する思考が、理想的な職場という良い現実を引き寄せています。
②過去の罪悪感と「私なんて」というブロック
元カレを怒らせていた罪悪感から、綺夏は無意識に「私は相手を不幸にする」と自分を責めています。そのブロックが、モテる思輝くんへの恋心を自覚することへのブレーキになっています。
③岡野くんの誘いは「愛を受け取る練習」
軽いエネルギーで誘ってくれる岡野くんの登場は、潜在意識からの「素直に愛されていい」というサイン。過去の傷を手放し、目の前の好意を受け取ることが大切です!




