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親友の弟で姉の親友のわたしたち  作者: りなる あい
第一章:ベルガモットの香りと、大切にされる許可

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1-4. あの作り笑い、好きじゃない 

(✳︎思輝(しき)視点)


 1泊2日のキャンプは一瞬で過ぎていった。朝食後、みんながコーヒーと紅茶で一服しているとき、事件は起きた。


「傷心キャンプ、どうだった?」


 ゆずさんこと、ゆずる先輩が綺夏に話しかけていた。


「失恋の痛みも吹っ飛んだ気がするよ〜」


 えへへと笑って応える横顔をみて、うわっと思った。あの作り笑い、好きじゃない。


「きなこって、なんでダメんズばっかと付き合うの?もしかして、きなこがそうさせてんの?」


 多分、ゆずさんに悪意はない。でも、その言葉が逆に凶器になっているって気づいていない。


「最初はいい人だと思って付き合うんだけど…なんでいつもうまくいかないのかな~?」


 平気なフリしてるように見えてるのは俺だけなのかな?みんなは綺夏が傷ついてるかもしれないって考えないのか…?盗み聞きはよくないけど、小声で話してるわけでもないからいいのか…二人の様子をうかがうことにした。


「だからさ、それってきなこにも問題があるんじゃないの?きなこの何かがそうさせてるっていうかさ?」


「うーん、もしそうだとしたら、相当だよね…」


「きなこ、可愛くていい女なのにな。なんか惜しいよな」


「ちょっと、さっきから聞いてればさ!ゆず、ちょっと失礼すぎない?」


 綺夏とゆずさんの会話に、最後はちなつが冗談っぽくツッコんでいった。わが姉ながら、ナイスだと思った。正直、俺も聞いてられなかった。ただ、ゆずさんは的を得ているなとも思ったのも事実だが…綺夏は気づくのか、考える機会になったのか?


「ちなつ、いいよ、気にしなくて。ゆずの言ってること、本当だと思うし」


 明るい声を出しているが、表情が少し暗い気がしてしまう。俺の気にしすぎか?


「綺夏のいいところがわからない男子が悪いんだから。あと、綺夏は見る目を磨こう!」





キャンプの撤収作業が始まった。お昼前には出発したい。


「思輝、これ持ってってくれる?重すぎ!」


「ちなつ、少しは体、鍛えたら?」


「何言ってんの?女の子と男の子は、筋肉量が違うんです。そもそも、バリバリ運動部の弟を頼ってもいいでしょ?」


 相変わらず、弟の扱いがテキトーすぎる。ま、キャンプに行きたいって言ったのは俺だから、パシリ要員だとしても参加できてよかったけどな。

 キャンプに行くかと聞かれ、最初は絶対に行きなくないって思った。姉にコキ使われる未来しか見えていなかったから。でも、メンバーを聞いていこうと思った。

 そう、綺夏がいたから。最近、実家で失恋して大泣きしていた彼女が立ち直っているのか様子を知りたかったから。


 ちなつが高校生だったときは、結構家に来ていたが、二人が大学生になってから実家で会う機会がぐっと減っていた。俺は高校生になり、部活、勉強と忙しくしているから、より一層すれ違っていたのかもしれない。この会える機会を逃すものか!と思っていた。

 

 綺夏と二人っきりになりたいと思ったけれど、あからさますぎて警戒されるのは避けたかった。話す機会がなくても、元気な姿が見られればいいって、最初は思ってた。キャンプの様子を見ていると、意外と元気そうで、俺の心配は杞憂だったとわかって安心した。でも、ふと見せる苦しそうな笑顔が気になった。


 そんなことを考えてたら、ちなつが向こうから歩いてきた。


「思輝、ちょっと気になったんだけどさ…」


 周りに人がいないかチラッと確認してから、少し小声で聞いてきた。


「もしかして?と思ったんだけどさ、思輝って綺夏のこと好きなの?」


 あまりにもどストレートな質問に、一瞬喉が詰まる。もっと他の聞き方ないのかよ…


「そうだよって言ったら?」


「やっぱり?!これまで全然そんなそぶりなかったのに…キャンプでそうなのかも?って姉の直感が働いてさ。」


「姉の直感、そうとう鈍ってるんじゃない?」


「あんたね、そういうところよ!」


 プンスカ怒っているちなつを無視して荷物を運ぶ。後ろから走ってついてきた。車に戻ると思ったのに、こっちにそのまま来たか…


「ねえ、本気なの?綺夏のこと…」


 さっきまでの冗談なトーンから、声が真剣なトーンに変わっている。


「そうだよ」


 歩みを止めて、ちなつを見下ろした。いつかはバレることだから、別に知られてもいいと思っていたし。


「だったらさ、失恋してる綺夏のこと、もっと励ましてあげなよ。今は平気そうだけど…」


「俺、そのポジションにはなりたくないんだよね」


「そのポジションってどういうこと?落ち込んだ綺夏を励ますポジってこと?」


「そう。俺は失恋した時に頼る存在になるのはごめんだから。綺夏が俺を選んでほしい。」


「は?何言ってるの?あんなに落ち込んでるのを何度も見てきて、これまで一回も助けてこなくてさ…それで俺を選んでほしいって?夢見すぎじゃない?」


「失恋して弱ってるところに漬け込みたくもないし、慰めてくれる都合のいい男にもなりたくない。綺夏のことを好きになった時から、これだけは決めてたから」


「何それ…そんなんで思輝の好きって気持ちが本人に伝わるの?よくわからない。男なら、他の男から奪ってでも自分のものにしたいって思ったりしないの?」


「ちなつって結構ぐいぐい行く系だよね」


「あー!話逸らした!」


 綺夏と他のメンバーの姿が見えて、俺たちのこの話題は強制終了になった。


「一つだけ言っておくけど、変なことを言ったりするなよ。ちなつは何もしなくていいから」


「はいはい、わかりました。弟の恋、応援してます」


 全然応援する気のない声が返ってきたけれど、そのまま撤収作業に集中した。ちなつは俺の横から一瞬で離れて、綺夏の横を陣取っていた。乗り換え早過ぎ…


 俺の貴重な休みがこのキャンプ2日で終わってしまった。でも、全然惜しいと思わなかった。少しずつだけど、必ず俺の気持ちを届けてみせる。

 

 荷物を持つ手にグッと力を入れて、一歩一歩力強く歩みを進めた。


【潜在意識の視点から紐解く『第1-4話の答え合わせ』】


① 周りの人の言葉=潜在意識(本音)の鏡

ゆず先輩の「きなこがダメんズにさせてる」という言葉は一見毒舌ですが、【他人の言葉は自分の潜在意識の投影】と捉えます。「私が悪いんだ」という無意識の自己否定(思考)を、相手の言葉を借りて聞いているということになります。


②「穴埋め」ではなく「対等な愛」を選ぶ決意

「失恋の傷を癒す都合のいい男にはならない」という思輝くんの決意は、潜在意識の観点からも大正解!穴埋めの恋ではなく、【お互いを一人の人間として尊重し合う対等なパートナーシップ】を自分に許可できているからこその男気です。


③ 偽りの笑顔を手放す

平気なフリをして笑う綺夏の癖に気づいている思輝くん。自分の本音(悲しみ)をごまかさず認められたとき、本当に自分を大切にしてくれる愛(思輝くん)を受け取れるようになります!

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