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親友の弟で姉の親友のわたしたち  作者: りなる あい
第二章:理想の恋と、本当のやすらぎ

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20/26

2-9. やりたいことやってるだけなんで

(✳︎思輝視点)


 日曜日の夜、俺はランニングに出かけた。昨日、元気のなかった綺夏は、その後ちなつと楽しそうにチョコレートを作っていた。明るい表情になった綺夏をみて安心したと同時に、今日、その彼氏にチョコレートを渡してんだよな…そう考えると無性にむしゃくしゃした。

 俺だったら、頑張りたいって時は俺にできることで応援して、休みたい時は包み込んでやるのに。

 でも、今の俺は彼女の隣に立てていない。いや、彼女が俺の隣に立っていない。俺がずっとその場所を空けていても…


 こんな時は寝るのが一番。でも、その前に体力を発散させたかった。目的もなく、ただ走っていた。来たことのない新しい道でも、かまわずにどんどん走っていく。いつもは決まったルートを走るけれど、寒くなっておかしくなっていたのかもしれない。


 今、どこらへんなんだろう…立ち止まってケータイを開くと、ちなつからメッセージが来ていた。


「大変!綺夏、たった今、彼氏と別れたんだって」


 文字が目に飛び込んできたと同時に、俺は電話をかけていた。


「もしもし、ちなつ?今、綺夏がどこにいるか知ってる?」


「いや、わからない。でも、彼氏の家に届けるって昨日言ってた」


「それって、最寄駅どこ?」


「最寄駅?!そんなの知るわけないじゃん。」


「はぁ、そうだよな。知ってたら逆に怖い。まあ、いいや。教えてくれてありがとう」


 電話を切って前を見ると、見覚えのある女の子がとぼとぼ歩いていた。


もしかして…綺夏…?

俺はそのまま歩いた。

ここで会うとか運命でしかない!


 近くで見ると、コートとマフラーの色が似ているけれど、綺夏とは違う人だった。そう簡単に会わせてくれないのか…でも、これも何かのメッセージなのか?

 今、会わなくてよかったかもしれない。俺も今、気持ちが昂ってたし、綺夏もきっと動揺してるはずだ。


俺も落ち着こう…

無心で走って、今日は寝るんだ。


 綺夏とどうやったらまた会えるか…ベットの中で考えるのは、このことばかりだった。高校生と大学生…会う理由がなさすぎるよな。今に始まった話じゃないけど。


 いや、待てよ。あと少しでテスト週間だ。部活が休みになったら、あのカフェで毎日勉強するか…


それまで我慢だ。

早く綺夏に会いたい。


 いつの間にか俺は眠りについていた。




……




 やっとテスト期間に入った。別に、いつこのカフェに来てもよかったけれど、俺は多分、理由が欲しかったんだ。テスト期間だから、毎日来てもいいだろって。


 カフェの中ではなく、本屋寄りの席に陣取る。綺夏が今日、シフトに入っているのかは知らないが…


 イヤホンをして集中していたら、トントンと誰かが肩に触れた。顔を上げると同じクラスの道関さんだった。


「日向くん、ここでテスト勉強してるんだね」


「道関さんもテスト勉強?」


「うん。一緒に勉強してもいい?」


 やっぱり来たか…それにしても、気づかれるの早すぎるだろ。前のテスト勉強の時もこのカフェに来てたからか…?頭の中で一瞬で考える。


「いいけど…俺、教えたりとかできないよ?下手だし」


「うん!それでも全然OK。ありがとっ!」


 嬉しそうにちょこんと前の席に座った。まあ、他の女子が来ないからいいか。でも、思わせぶりはしたくないから、境界線はしっかり示しておかないとな。




……




 今日、綺夏のシフトは入ってなかったのかな…そろそろ帰るか…


「道関さん、俺、そろそろ帰るね」


「あ、じゃあ、私も帰ろうかな…!」


 俺に追いつこうと、必死に道具を片付けている。明日も来るとか言わないよな…?一瞬、そんな予感がよぎった。





……




 次の日、学校が終わってすぐ、俺はあるパン屋へ向かった。これ、ちなつが美味しいって騒いでたお店なんだよな。自分とちなつと綺夏の分を買う。もし会えたら渡そう。バイト、お疲れ様って。

 昼過ぎだから、人気のパンはすでに売り切れている。ちなつには話題性バッチリのビジュアルのいいものを選んだ。

 

綺夏のはどれにしよう…迷うな…


うわ!これ美味そう!目を引いたのは塩クリームパンだった。こういう素朴なのが、一番パン屋の旨さがわかるよな。自分用にはこれにしよう!と即決で決めた。迷いに迷って、綺夏にも同じものを買った。


 公園で一人座ってパンを食べたら、かなり美味かった。これを買って正解だった。自分が食べたパンだから、美味しかったよって伝えられるし、そのあと共有もできるから同じのを選んでよかったかも。


 お腹が満たされて、いつもの本屋へ向かう。たまに女子に尾行されることがあるけれど、今日はその気配を感じなかった。少し安心してカフェへ行き、本屋側の違う席に座った。


 すると、綺夏が働いている姿が見えた。よっしゃ!今日はいる!なんとか話して、パンを渡したい。パンを渡すという目的があるから、絶対に会わないと!という気持ちになった。


『俺、テスト期間で横のカフェで勉強してるんです。剣さん、バイト何時に終わりますか?渡したいものがあって』


 渡したいものがあるとメッセージで伝えるかどうか迷った。わざわざ言う必要もないけど、これを伝えることで綺夏も会わないと!と思ってくれるかな?と。


「あのっ、日向くんだよね?わたし、2年の佐野です。もしよかったら、一緒に座って勉強してもいい?」


「えっ?2年生ですか?…えっと…佐野さん…でしたっけ?」


 照れながらも、かなりぐいぐい来る人だな。


「はい、佐野雅(さの みやび)っていいます。前から日向くんのこと、カッコいいなって思ってて…もしよかったら仲良くなりたくて」


「そうだったんですか。すみません、急なことで、俺、びっくりしちゃって…」


「そうだよね、ビックリだよね。日向くん、いつも部活で忙しそうで、なかなか接点を作れなくて…テスト期間しかないって思って…」


「とりあえず、席、座りますか?」


 俺は前の席にうながした。このまま立って話し続けるのも微妙だし、結構会話が続く感じだったから…


「ありがとう!日向くん、頭もいいんだよね。邪魔しないように、わたしも静かに勉強していい?」


笑顔を向けられた。


ブー

ブー


ケータイがなって画面を見る。

剣 綺夏

の名前が出て、俺の意識が全て持っていかれる。


メッセージを開くと


『思輝くん、テスト勉強に来てるんだね。渡したいものがあるの?私、今日、あと3時間あって、今休憩中なの。3時間はさすがに長すぎるから申し訳ないな…』


3時間くらい余裕で待てるけど…何かいい方法はないか…?頭をフル回転して考える。


『休憩の今って会えますか?』


ダメ元だったけど、俺はすぐに返信した。


『会える!じゃあ、今行くね』


 この文字を見て、俺は胸が高鳴った。パンだけ渡すから、荷物は置いていくか…


 貴重品とお土産のパンを持って俺は立ち上がった。


少し屈んで


「えっと…佐野さんでしたっけ?俺、ちょっと人と会ってきますね。荷物、見ててくれますか?」


と伝えた。


「あ、うん。わかった」


 佐野さんの顔が一瞬で赤く染まっていた。顔を上げて本屋の方に目を向けると、綺夏が手を振っていた。互いに目が合ってニコっと微笑み、歩み寄った。


「剣さん、すみません、休憩中に呼び出しちゃって。これ、よかったら食べてください。」


 パンの包みを渡す。俺はあえて包みの全体を持っていた。渡す時に手が触れるように。


「え?いいの?これもらっちゃって。嬉しい」


 片手で受け取るかと思ったら、綺夏は両手で受け取った。もちろん俺と手が触れた。両手で受け取るとか、可愛すぎるだろ…


「俺も同じの食べたんですけど、美味しかったですよ。ところで、ちなつから聞いちゃったんですけど、彼氏さんと別れたんですね。剣さんのいないところで勝手に知ってしまって、すみません。」


「思輝くんも知ってたんだね。日向家は家族みんなに筒抜けだもんね。いいよ。いつものことだし。またこんな報告になっちゃったね…」


「俺、今度話聞いてもいいですか?俺でよければ…というか、気になるんですよね。剣さんのことが」


 恋愛傾向とかパターンが知りたいって言うと、俺のために話して欲しいって感じに聞こえるかもと思い、その部分は伝えなかった。もちろん、綺夏の力になりたいっていうのが一番だし、話すことで楽になって欲しいからだけど。


「え…でも確かに、あまり詳しく話したことなかったかもね?こんな大学生の話、聞いてくれるの…?」


 首を傾げて上目遣い。現行犯逮捕だ…可愛すぎる。


「ぜひ話してください。俺でよければ力になるんで」


「ありがとう。でも、思輝くん、部活も勉強も忙しいだろうから…」


「俺はいつだって、やりたいことやってるだけなんで。気にしないでください。」


 そう、やりたいことの中に、綺夏の話を聞きたいが入ってるんだよ。気づいてるか…?


「そ…そっか。ありがとう。思輝くんって、本当に優しいね」


 瞳が潤んでいる気がした。いつもより、目がキラキラしている感じがした。


「そろそろ休憩が終わるから、もういくね。あと、パン、ありがとう。食べるの楽しみっ」


「では、また」


「うん、またね〜」


 予定、決められなかったな…でも、無理に押し切って予定を決めるのもなと思っていたし、今日はこれでいいか。いつでも話を聞くよと、何度も伝え続けよう。


 カフェに戻り席に着く。


「荷物、見ててくれてありがとうございます。俺、あと30分くらいしたら帰りますね」


「そっか、もう帰っちゃうんだね。もっと長く勉強するかと思ってた。」


「今日の目的は達成できたので、キリのいいところまで勉強したら帰ります。」


「もしかして、今日の目標って…さっきの女性と会うこと?」


「はい、そうです。お土産を渡したくて」


「そうなんだ。彼女さんなの?」


「いえ、彼女ではないです。姉の親友の方で」


 ここで好きな人とか言うとめんどくさくなるから、いつもの姉の親友という説明をする。


「仲良さげだったから、特別な関係なのかと思っちゃった」

(女性の方、絶対日向くんのこと好きじゃん。照れてたの、モロ見えだったよ…)


「仲良さげでした?まあ、知り合って長いからかもしれないですね」


「お姉さんってちなみにいくつ上なの?」


「今、大学1年で3つ上です。あの…そろそろ勉強してもいいですか?」


「あ、ごめん…そうだよね。邪魔してごめん」

(思輝くん、ただ仲のいい人ってほんとかな…今日、日向くんと初めて話したから、まだよくわからないけれど。はぁ、もっと仲良くなりたいなぁ…)


 言い方キツかったかな…でも、俺は勉強の続きがしたかったから、ちゃんと言えたしいいか。


 綺夏が見てるかもしれない。そう思うと、より一層勉強に気合が入った。最後の30分はいつもより集中できた気がした。


【潜在意識の視点から紐解く『第2-9話の答え合わせ』】


①「意図」を放ち、軽やかに行動する力

「パンを渡して会う」とゴール(意図)を明確に決め、一瞬のチャンスを逃さず即行動した思輝。頭の計算ではなく「こうする!」という純粋な意図と素早い行動が、短時間でも手が触れ合うような最高の実りを引き寄せましたね!


②ブレない自分軸が周りに流されない現実をつくる

他者からのアプローチにも思わせぶりな態度をとらず、「自分にとって一番大切な存在(綺夏)」に集中する思考の軸。ブレない心のあり方が、エネルギーの浪費を防ぎ、本命との関係性をまっすぐに育む現実を創り出しています!


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