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親友の弟で姉の親友のわたしたち  作者: りなる あい
プロローグ

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2/9

0-2. あの瞬間に始まった

(*思輝(しき)視点)


 俺は中学2年になった。新しいクラスになり、俺はクラスの雰囲気にやっと慣れ始めたころなのだけど…一方で、ちなつは最近とにかく楽しそうだ。高2になってから、「親友」と呼べる人ができたらしい。夕食中は食べて口を動かしてと、本当に姉は良くしゃべる人だ。その親友のことを家族の食卓で全て話すものだから、我が家にすべて筒抜けになっている。聞いたところによると、可愛くて、性格がよくて、一生懸命な子らしい。その子とは、馬が合うんだろうなと思った。


「今度、お泊り会していい?」


 ちなつが嬉しそうに両親から許可をもらっていた。高校生になったら女子はお泊り会とかするんだな~ってその時はそれくらいしか思っていなかった。




 部活から帰ってきて、玄関で靴を脱ぎ終わった時、ちょうどチャイムが鳴った。さっとサンダルを履いて扉をあけると、可愛い女の子が立っていた。


「こんばんは。」


 少し驚きながらも笑顔で挨拶をする女の子。


 笑顔が可愛い…

 目が離せない。


 それが第一印象だった。


「こん…ばんは。」


 不自然にならないように、なんとか挨拶を返した。


 後ろから家族がバタバタと玄関にやってくる音がする。うちの家族は、いつもあわただしいな。


「綺夏!やっときた!あがってあがって。」


 ちなつが嬉しそうな声で手招きをして、満面の笑みを浮かべている。


「いらっしゃい~。待ってたのよ。さあ、どうぞぉ。」


 母さんの声もいつもより高い。余所行きの声になってる。


「こんばんは。(つるぎ) 綺夏(きな)です。今晩はよろしくお願いします。」


 玄関で丁寧にお辞儀をしていた。顔を上げた瞬間、目が合った。うわ…やっぱり可愛い。高校生だからか?中学生でこんな可愛い子いないぞ?


「ご飯ができてるの。みんなで一緒に食べましょう。」


「ご夕食、ありがとうございます。あの、こちら、よかったら皆さんで召し上がってください。」


 有名なブランドのチョコレートの詰め合わせだった。これ、俺が好きなやつだ!心の中でガッツポーズをした。


「わざわざ、お土産をありがとうね。あら、これ思輝の好きなチョコレートじゃない!よかったわね。夕食後、みんなで食べましょう」


 お邪魔しますといって、リビングへと通されていた。俺は荷物を置きに自分の部屋に向かった。


 階段を上ったからか?

 いや、でも、自分の家の階段を上っただけで、いつもはこんなに息、上がらないよな?


 電気を付けずに、荷物をどさっと置いた。すぐに下に行こうとしたけど、少し呼吸を整えたいと思った。暗い部屋に立つと、自分の心臓の音が響いて、まるで波の中に漂っているかのようだった。


 なんなんだ、この感覚…


 中学生の俺がその意味を理解するまでに、そこまで時間はかからなかった。





 みんなで夕食を食べ、お土産のチョコレートもいただいて、俺は心も身体も満たされていた。(つるぎ)さんはよく笑う子で、とても明るい性格だと思った。結構ハッキリ言うタイプのちなつと、ちょっとほわほわ系の剣さんは言い相性だと感じた。


「綺夏ちゃん、お風呂入る?」


 母さんが聞くと


「わたし、お家でお風呂を済ませてきました。」


 と答えていた。


「えー!綺夏!もうお風呂入ったの?一緒に入ろうと思ってたのにー!」


 ちなつはなぞに残念がっていたが、しぶしぶ一人でお風呂へ向かった。


「ちなつがお風呂に入ってる間、リビングでゆっくりしててね。」


「お片付け、手伝います!」


 立ち上がろうとしたのを、母さんが剣さんの肩に触れて一度座らせた。


「いいのよ。綺夏(きな)ちゃんは。きっと、ちなつと夜更かしするでしょ?今は体力を温存しておいて」


「わかりました。ありがとうございます。」


 座ったのを確認し、ウインクをかまして、母さんは台所へ行って片付けを始めた。ご機嫌な母さんを見るのは楽しかった。


 俺と剣さんはL字のソファの端と端に座ってテレビを見ていた。俺はただ、お風呂の順番待ちでそこにいた。別に無理に話そうと思わないし、二人で何気なくぼーっとテレビ画面を見ていた。


ブー、ブーっ


 ケータイが鳴って、剣さんが手に取った。画面を見た瞬間、固まったのを俺は見逃さなかった。剣さんの周りだけ、一瞬空気が冷えた気がした。


 そのあと、ケータイをかかえたままソファの上で体育すわりをした剣さん。あきらかにおかしい…

 空気が一気に重くなってる…ガン見しないようにさりげなく剣さんを俺の視界に入れると、半泣きになっていた。



……




「…大丈夫ですか?」


 気づかないフリもできたけど、それも気まずいと思って無難に話しかけた。


「…大丈夫じゃ…ないかも…」


 眼のふちがウルウルしてきた。やっぱり何かあったんだ…女の子が目の前で泣きそうになっている。

 この状況に俺はどうしたらいいかわからなくて、自分から聞いたのに何もできずに固まってしまった。


 なんて言葉をかけたらいいんだ…?

 必死に考えても何も出てこなかった。


ガチャ。


 お風呂上がりのちなつがリビングに入ってきた。


「お待たせ~。って、綺夏?!なにかあったの?もしかして泣いてる?」


 ちなつはすぐに異変に気づき、剣さんに駆け寄っていく。必死に我慢していた涙がすぅーっと一筋、剣さんの冷たい頬をつたっていった。赤い目で唇をふるわせる泣き顔を見た瞬間、俺は胸をぐっと掴まれた気がした。


 この人を守りたいー


 無性にこんな思いが湧いた。今日、初めて会って、まだ数時間しか経ってないのに…自分の中に眠っていたであろう激動が、一気に俺の体内を駆け巡っていく。こんなに強い感情が自分の中にあることに、自分自身が一番驚いていた。


「リビングだと話しにくいよね。わたしの部屋に行こ」


 ちなつは剣さんの手を引っ張って、自分の部屋へと連れて行った。


 お茶を取りに、台所に戻ってきたちなつから状況を理解するための質問が来た。


「思輝、綺夏の隣にいたよね?何かあったの?急に泣き出した感じ?」


「うん。ケータイ見たあとから、あんな感じだった。」


「そっか…話聞いてみないとだけど、多分彼氏のことだわ。‘’今の綺夏の彼氏も‘’微妙なんだよね」


そう言って、お茶とお菓子を持ってそそくさと自分の部屋に戻っていった。


 剣さん、彼氏いるんだ…

 なんだか、それを聞いて心がずしっと重くなった。可愛い人だから、そりゃ、彼氏はいるよな…


 でも、‘’今の彼氏も‘’って言ってたよな。

 それは、前も、今もってこと…だよな…?


 ただの弟の俺が聞いたり意見したりすることはできない。でも、気になって仕方なかった。


 その思いを振り払うために、俺はお風呂に向かった。


 体を洗っても、湯船につかっても、いつの間にか剣さんのことを考えてしまっていた。今日は、なんでこんなに感情が揺れ動くんだ。


 そういえば、この前たまたま見たYoutubeで、地球は「感情体験の星」って言ってたな…とふいに思い出した。その視点で見ると、今日の俺は、まさに感情のジェットコースターを体験してるってことか…


 特定の女の子のことを目が離せない!と思ったことも、泣き顔を見ておろおろしたのも、『守りたい』という強い気持ちを自分の中に感じたのも、今日が初めてだった。


 今日、早く寝られるかな…?


 寝てるときって、魂の故郷へ帰るって言われてるらしい。これは、寝て魂の故郷で癒されて解決するしかないな。


 バシャっと湯船から立ち上がり、早く寝ることだけを考えて、ベットに直行した。考えてもわからないものは、わからない。

 でも、一つだけ言えるのは、初めて出会った様々な感情たちのことが、これほど愛しく思えたのは初めてだった。



【潜在意識の視点から紐解く『プロローグ1-2.の答え合わせ』】


思輝くん、中2にして運命の出会いを果たしましたね!

潜在意識では【思考が現実化する(自分の出したエネルギーが返ってくる)】と考えます。思輝くんが感じた「守りたい」という強い衝動は、実は潜在意識が「俺はこの人を幸せにする男になる」と決めた瞬間のエネルギーなんです。


一方で、当時の綺夏は「今の彼氏も微妙」と言われる恋愛を繰り返していました。これは「どうせ私なんて大切にされない」という潜在意識の傷(勘違い)が、そのまま「微妙な彼氏」を引き寄せていたから。


でも大丈夫!思輝くんのように「どんな感情も愛おしい」と認められたとき、思考の書き換えは始まります。ここから二人の思考がどう交差していくのかお楽しみに!

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