エピソード5:酒飲みおじさんの闇鍋パーティ/ 11
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本間が救急車で運ばれたあとの話だ。
嶺想寺から、本間は暫く入院になった、と聞いた。病名、食中毒。まぁ、それはそうだろう。チョコレートに塗れたニンニクを食べたら食中毒にもなるだろう。和茶は、嶺想寺に尋ねた。差し入れ禁止ッスか?と。実は、一香の持参したあの高級肉がまだ残っているのだ。本間に少しくらい分けてもバチは当たらないかと思ったのだ。
めちゃくちゃなパーティだったが、少し、ほんの少し、和茶の中のデッド・ハイツの住人たちへの苦手意識のようなものが薄れたのだ。持って行くのは一香の肉だし、本間に感謝の言葉を伝えるのもらしくない気がしたが、和茶は嶺想寺に聞いた総合病院へ、焼肉丼を持って出掛けることにした。本間の胃腸の調子はほぼ完治に近いらしい。
「えーっと、面会の受付ってどこだろ……って、え?」
和茶が総合病院の受付で迷子になっていると、誰かに肩を叩かれた。振り返ると、そこには本間の姿があった。少しやつれた気がするが、その手には売店で買い込んだのだと思われる、いくつもの弁当。……もう退院してもいいのではないか、和茶は呆れた顔をすることしか出来なかった。そして、嫌々ながら本間に焼肉弁当を差し出す。
「これ、お見舞いッス」
「え、飯山の漢飯?」
「あの高級肉の弁当ですけど、要らないなら俺が自分で食うんで」
「食う!食うから!!おじさんの熱いキッスいる!!?」
「いらねぇに決まってんだろ、色欲おやじ!!」
と、受付前で騒いでいると、受付の事務員さんに「煩いですよ!!」と怒鳴られてしまった。和茶は本間に焼肉弁当を渡し、即、帰った。要らぬ恥をかいた。デッド・ハイツに戻ると、嶺想寺が野良猫に餌をやっていた。穏やかな光景に少し心の揺らぎが和らいだ。嶺想寺と目が合う。本間の様子を報告するなり、嶺想寺は笑った。
──本間さんなら今日の午前中でもう退院してるよ。……お見舞いを返せ。ていうか、先に言ってくれ。和茶は心の中で嶺想寺と本間にアッパーを食らわせた。と、そこに、この前の闇鍋パーティで知り合った、高木家の長女、帆乃がやって来た。そして、少女は深刻そうな顔をして、和茶に言った。飯山さんに相談があるんです。
また、巻き込まれ型の何からしい。嶺想寺は野良猫を抱き上げ、戯れていてこちらのことはスルー。和茶は内心、溜め息を吐きつつ、少女の助けになることにした。
嶺想寺の「飯山さんはお人好しですよねぇ」という呟きが、和茶の耳に届くことは無かった。




