エピソード5:酒飲みおじさんの闇鍋パーティ/ 7
そして、闇鍋パーティ当日。和茶は前日に買っておいた、濃縮された特別な牛乳を持って、2階の本間の部屋を訪ねた。一香と共に。本間の部屋は案内に書いてあったので、間違えることはなかった。今日の闇鍋パーティにどれだけの住人が参加するのか。まだ会ったことがない住人は何人いるのか。少し、ほんの少し、楽しみだった。
チャイムを鳴らし、和茶は本間に聞こえるように声を張った。──1階の飯山ですけどー!……返答は無かった。まさか、もう既に死亡している?主催者が?和茶は探偵気分で一香の手を握った。そして、言った。──安心しろ、俺が解決してみせる。……と、和茶が1人で盛り上がっていると、玄関扉が開いた。本間はピンピンしている。
「おー、らっしゃい。ちゃんと具は持ってきたか?」
「和茶君はどうか分からないけど、私は持ってきました!」
「ほぉ。飯山は不真面目だな。真面目にふざけろよ」
和茶は本間に、飯山なんて呼び捨てにされる謂れは無い。そもそも、真面目にふざけろって、1周回ってふざけるてるんじゃないのか。そう思いつつ、こういう図体だけ大人なお子ちゃまの相手をする時は冷静に、と、誰かに言われたことがあった気がするので、怒りはしまい込む。和茶は本間に牛乳を渡した。2リットルの大容量だ。
本間は牛乳を見て、おいおい、という顔をする。危険物でも持ち込み禁止物でもない。そんな顔をされる謂れは無い。
「飯山君よ。今日は寄せ鍋だぜ?」
「寄せ、の意味が違うんじゃないスか?」
「お、うまいね」
上手いとか下手とかじゃなくて、とにかく牛乳を受け取ってほしい。和茶は本間に牛乳を押し付ける。闇鍋に美味しさなんて求めていなかった。だから、寄せ鍋に牛乳が混ざろうともうこの際、どうでもいい。ちなみに、一香が何を持参したのか、は和茶も知らない。一香が本間に包みを渡す。本間はその場で包みを開けた。
中身は、保冷剤と山盛りのお肉が入ったパック。それも最上級の。パックのラベルには100gm5000円のあり得ない文字。本間と和茶が同時に固まった。これは闇鍋に入れちゃいけない。本間がそう思っていることが和茶にも分かった。闇鍋パーティの二次会は焼肉と洒落込もう。……生きていたら。




