エピソード5:酒飲みおじさんの闇鍋パーティ/ 6
そして、一香が帰ったあと、和茶は管理人室の嶺想寺の元を訪ねたのだが、和茶が用件を言うより前に、嶺想寺が話を切り出した。闇鍋パーティの件ですよねぇ、と、おっとりした声で言いながら。この人はアパートで人死にが出ても笑っていそうだ、そう思ってしまう。嶺想寺は寒いくらいエアコンの効いた部屋へ上げてくれた。
飲み物はお茶とジュース、どちらがいいか聞かれる。和茶は「いつものやつで」と言ってみた。嶺想寺が相手ならそんなおふざけも出来る。本間には絶対しない、本間からは飲食物は受け取らない。嶺想寺はお茶を持ってきた。和茶がいつも飲んでいるペットボトルのお茶を。……確かに、いつものやつだが。少しだけ和茶の背筋が冷えた。
「あー……嶺想寺さん、闇鍋パーティなんてやったら、生きてる参加者全員死にません?」
「まぁ、死なないように食べる前に薬を飲んでもらうから大丈夫ですよ。きっと。たぶん」
「人の命を不確定要素で弄ばないでくれます!?」
「文句は主催の本間さんに言ってくださいよー」
許可する大家も大家だ。とは言えない。嶺想寺には普段から色々とお世話になっている。和茶は色々と諦め、嶺想寺がくれたお茶を飲んだ。いつもの味だ。そして、和茶は思い出す。清め塩が無くなったことを。この足で恩望寺の縁利を訪ねよう、そう思っていると、嶺想寺が可愛らしい小包を何処からともなく取り出した。
きちんと差出人が書かれた札が付いている。要金笠 縁利。……縁利からだった。名前の読み方は、ようごんがさ、でいいのだろうか。いや、それより何故、嶺想寺が縁利の名前が書かれた小包を?嶺想寺は、中身は和茶君の生命線ですよ、と、微笑む。もしや。もしや?和茶は嶺想寺から小包を受け取り、開けてみる。リボンまで可愛い。
「……塩っスね、ピンク色の」
「そうだね、ピンク色の塩だ……綺麗ですねぇ」
「や、そういう問題ではなく」
中身は間違いなく清め塩、しかし、ピンク色。塩に紛れて、1枚のメッセージカードが入っていることに気付き、和茶はそのカードを読んだ。メッセージカードには「ピンク色の者に使うと効果抜群よ(はぁと)」と書かれていた。ピンク色の「者」って。そんなの本間しかいないんじゃないか。和茶は有り難く、清め塩を懐に入れた。
そして、嶺想寺の部屋を後にして、和茶は思った。今更だけど、なんで、嶺想寺さんの部屋とうちの部屋、部屋数も内装も設備も違うんだろ。デッド・ハイツの謎は尽きない。




