23人目 『くらげちゃんはだぞにだぞを乗せて』
「あらあら……それでお昼からお勉強をしているんですね」
「そうだぞ! なんかもうごめんなさいだぞ!」
改めまして、本日のお客さん一ノ瀬くらげちゃんです。
咲ちゃんと梅ちゃんが彼女に勉強を教えていると、いつの間にやら外はすっかりオレンジ色の空。
「まあ一応いくつかの教科は教えたけど……あ」
「さくめちゃん、どうしたの?」
梅ちゃんは帰ってきた響子さんに報告を行っていたところ、ふいに何かを思い出したように言葉に詰まります。
「今夜の勉強会って誰が来るの? 人にもよるけど、分けた方が良いような気がするんだけど」
「さくめちゃん、今日はけどけど星人だね」
「誰がけどけど星人よ! ……それで、どうなの?」
「今夜は真姫ちゃんが来る、と言っていたけれど……ああ、そうそう。めぐさんとデートをしてから来る、と言っていましたよ」
けどけど星人さんの問いかけに、響子さんが優しく答えます。
どうやら真姫ちゃんは順調に仲を深めているようですが、梅ちゃんはここではあえてスルー。
そして、
「じゃあそれまではくらげちゃんの勉強会の続きね。あたしは一旦教科書取りに行って来るけど」
「やっぱりけどけどせ——」
「だ、れ、が、けどけど星人よ! まあ、否定はしないけど……」
けどけど星人の存在を梅ちゃんが認めつつ、彼女が教科書を取りに行ったところで、勉強会は再び始まったのでした。
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆
「ここの角度はどうなるんだぞ?」
「えっとね、ここはほわーん、ググってなってるから答えはこうなるよ」
「なるほどなんだぞ!」
咲ちゃんのほわほわとした回答にくらげちゃんが納得し、知識を蓄えていきます。
どうやらくらげちゃんにとっては、梅ちゃんよりも咲ちゃんの説明の方が分かりやすいらしく、
「すっごい分かりやすいんだぞ! 先生になって欲しいくらいだぞだぞ!」
くらげちゃんはにぱっと満面の笑みを浮かべます。
ですが、実は今まで梅ちゃんを除く周りに、勉強の説明が下手だと思われていた咲ちゃん。
彼女の心中はなかなかに複雑で、お礼を素直に受けとることが出来ず、
「え、えへへー」
いえ、出来てました。照れていました。
やはり咲ちゃんは咲ちゃんでした。
「ねね、響子さんはどう思う?」
そして舞い上がったまま、響子さんにも意見を求めます。
あらあらお姉さん響子さんはというと、一度胡麻たんに対するあらあらを中断。
咲ちゃんの問いかけに対し、
「そうですねえ……咲ちゃんは可愛いですよ」
「えっ、いや勉強の説明は……」
「咲ちゃんは可愛いですよ」
「あ、うん…………はふ」
なんだかよく分からない返事をしました。
咲ちゃんも疑問がないわけではありませんが、響子さんに抱き寄せられ、頭をなでなであらあらされていると、ほわほわとその疑問も吹き飛んでしまって。
「あ、ずるいんだぞ! くらげも終わったらしてもらうんだぞ!」
「あらあら……」
そしてそれを羨ましがり、騒ぎ立てるくらげちゃん。
響子さんに二人して甘える様は、まるで響子さんがお母さんになったかのようです。
「————いや、あんた達何やってんのよ」
……戻ってきた梅ちゃんには、冷めた目で見られましたが。
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆
そんなこんなで、あらあらお母さんから二人を引き剥がしたりして、何度も中断している勉強会。
脱線頻度の割に、咲ちゃんのほわほわ指導と梅ちゃんのツンツンツッコミのおかげもあって、何とかくらげちゃんはテスト勉強を終えることが出来ました。
「いやー、ありがとなんだぞ!」
「ううん、どういたしましてなんだぞ」
「語尾、うつってるわよ」
いつの間にやら外は真っ暗、中はだぞだぞ。不思議な空間が生まれていたところに、梅ちゃんがツッコミ。
「……ちなみにテストはいつからなのよ? さすがに今日のだけじゃ覚えきれてないんじゃ」
「明日からだぞ!」
「何もかも遅い! 明日って!」
最近はやや冷めたツッコミが多かった梅ちゃんですが、咲ちゃんと波長が似ているからか絶好調です。
だからでしょうか。梅ちゃんは深くため息を吐くと、
「……もう。明日も来なさいよ。何日か続くんだから、ある程度対策は取れるでしょ」
デレて優しくなりました。
「やっぱりさくめちゃんは優しいね」
「————わおんわおん!」
「そうですねえ。さすが梅ちゃんです」
「んん? なんか分かんないけどありがとうだぞ! すごいぞ!」
「————っ!」
そこへ狙っていたかのように全員が全員梅ちゃんをホメ殺しにかかり、顔を真っ赤にしたまま声にならない声を上げる梅ちゃん。
お客さんであり、優しくされたくらげちゃんはなんか分かんないみたいですが、さておき。
そうして褒めちぎられて蒸発しそうになったところで、彼女はハッとなって顔を上げると、
「……いや、あんた達も手伝うのよ? さっちゃんも必要だし、響子さんは他のお客さんの対応に必要だし」
乗せられかけたと目を細め睨む梅ちゃんの完成しました。
咲ちゃんと響子さんは二人揃ってブーイングしていますが。
働きたくないのでしょうか。いまいち締まりません。
「えっと、とりあえず明日もやるから、くらげちゃんも遠慮しないで来てね」
「分かったんだぞ! よろしく頼むんだぞ!」
と思いきや、まとめるところはちゃんとまとめる、頼れるみんなの咲ちゃん先生。
彼女は軽く意気込み、くらげちゃんの近くに行くと、
「——お疲れ様、くらげちゃん。私もさくめちゃんもちょっと疲れちゃったけど……ううん。その分、くらげちゃんがたくさん勉強できたもんね」
「せ、先生…………っ! なんだぞ……っ!」
ココアを差し出し微笑んで、先程の約束を叶えるようにくらげちゃんの頭をなでなでと。
そんなこんなで、先生役に徹するのでした。
「…………いや、あんた達何やってんのよ」
またしても、同じツッコミを梅ちゃんにされて。
九人目のお客さん
なまえ :一ノ瀬 くらげ
ねんれい:14歳
しょく :中学二年生
しゅみ :寝ること。遊ぶこと
すき :楽しいこと。体を動かすこと。咲ちゃん
きらい :勉強
みため :にぱっとした笑顔。赤茶のサイドテール。涼しげな格好。
身長は咲ちゃん梅ちゃんとほぼ同じ。まだ発展途上なんだぞ!
ひとこと:くらげなんだぞ! だぞだぞ!




