16人目 『雨降り占い師は水晶を占えない』
「占いが当たらなくなった?」
お犬さんこと胡麻たんの仲間入りと月子さんの訪問で、本日は何やら忙しくなっています。
そんな中、月子さんの口から出たのは驚愕の事実で、
「ええ、そうなんです。前はあんなに当たってたのに、急に当たらなくなってしまって……」
「いや、元々三割じゃないの」
それに対して梅ちゃんはかなり白けた反応ですが、占い師である月子さんの占いが当たらないとなると、
「あれ、じゃあ月子さん占い師やめちゃうの?」
咲ちゃんの悪気のない一言の通りになってしまうわけなのです。
なんと、月子さんは無職の危機に瀕しているのです。
「い、いえいえ! 確かに商売としてやっていますが、私は生まれながらの占い師! やめるはずなど! そう、この世に生を受けた瞬間から占いパワーを内に秘めていて……」
先ほどのため息はどこへやら。気合いを入れるかのように目をキラキラと輝かせ、ガッツポーズを取る月子さん。
またしても出た『占いパワー』。その用語には梅ちゃんも、
「…………」
無反応でした。
「あれ!? 紗倉ちゃんが突っ込まなくなりましたよ! どうしたんですか!」
「確かにさくめちゃんが突っ込まないって珍しいね」
「あんた達あたしをなんだと思ってるのよ。……とにかく、話を進めるわよ」
「は、はい!」
そんなこんなで、改めまして本日のお客さんは無職の危機星井月子さんです。
「——わおん」
それから、マスコットは胡麻たんが務めるようです。
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆
「むむむむ……」
というわけで月子さんは、水晶玉を前にして唸りの声を上げ、必死に何かを見ようとしていました。
「それで……えっと、トランプだっけ」
「いや、スランプよ」
端では咲ちゃんと梅ちゃんがそれを見つめていますが、依然として月子さんの状態に変化はなく、
「ぐぅ、ダメです」
「ほぇ、何も見えなかったの?」
「……ええ。以前なら占い電波がほわーっと来てぽわーってみえたんですが……」
「ふわふわした占いね」
本当にダメなようです。
とはいえ彼女も占い師の端くれ。職業としている以上はこのままではいられないようで、
「遊佐ちゃん。私に占いパワーを分けてください」
何やら、これまた変わったことを言いだしました。
「分ける?」
「はい。遊佐ちゃんのココア占い、あれを私めにやってほしゅうごじゃりまする」
「真剣なのかふざけてるのかどっちかにしなさいよ!」
「——わおんわおん!」
マスコット担当の胡麻たんは梅ちゃんのツッコミに便乗してそうだそうだと言わんばかりに吠えます。
それに咲ちゃんは感嘆の声をもらしつつ、
「えっと……分けるのはいいんだけど、どうやってやればいいの? あ、でもでもさくめちゃんもこの前——」
「さっちゃん、あたしはいいわよ。ココア占いで何とかしてあげて。……何とかなるのか知らないけど」
何かを言いかけましたが、それを梅ちゃんが遮ります。
せっかく占いを披露するチャンスだったのに、と唇を尖らせる咲ちゃんの頭をポンポンと撫でながら。
最後に何か呟いたような気もしますが、気のせいでしょう。
ともあれ、そんなわけで、
「ココア占い、始めるよっ!」
「おー、です」
「それじゃアシスタントのさくめちゃん、新しいココアを」
「はい……って何よこれ」
ココアを使うということでやたら気合いの入っている咲ちゃん。
彼女は梅ちゃんから受け取った淹れたてのココアをふーふーと冷ますと、
「はいっ、月子さん」
そのまま手渡し、飲むように勧めます。
月子さんもそれを快く受け取り、意気込むと、
「それでは……っ!」
ごく、ごくと勢いよく飲んでいきます。
全部飲み干した後で熱さに苦しんでいましたが、それはさておき。
「じゃあえーと…………」
咲ちゃんのココア占いは、コーヒー占いと似たようなもので、飲み終えた後にカップの底を見て占う……といったものです。
さて、今回は一体どんな結果になるのでしょうか。
「ん………………んんん?」
「どうだったのよ?」
「わおん?」
「えっと、ね。三角形だから何か変化がある……かな」
「変化って?」
「何だろう…………」
占い、終了です。
あまりに何とも言えない結果になってしまい、どうしたものかと三人と一匹は頭を抱えますが——、
「ただいまー、です。……あら?」
すぐにその変化は訪れました。
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆
「あれ!? タロットでは上手くいきます! 占い電波もヒョアッヒョアッと来ます!」
「ヒョアッって何よ! 初めて聞いたわよ、そんな効果音!」
響子さんが帰って来たかと思えば、店の奥から引き出されたのはタロットカード。
それを駆使し、改めて月子さんは占いをしたわけですが、
「確かに月子さんから占いパワーが出てる……ような?」
「あらあら、咲ちゃんも見えるようになったんですか?」
「——わおん?」
「いやそれは気のせいよ、胡麻たんも言ってるわよ」
占い師としての能力が覚醒しつつある咲ちゃんに、一人と一匹が疑問しますが、それはさておき。
「つまりは……水晶が疲れたから替え時、ということなのでしょうか?」
「そうですねえ。替えるか、あるいはお手入れの時期なのではないでしょうか。私が観察した限りなのだけれど……」
「響子さんって水晶玉マスター……ううん、水晶だマスターなの?」
「マスターとはいかないけれど、水晶だハイパーと言われたことはあります」
「語呂! ランク下げるなら語呂も頑張りなさいよ!」
思わぬところで響子さんの水晶玉レベルが判明しました。
それにツッコむ梅ちゃんと、うんうんと頷く咲ちゃん月子さん。
ちなみに胡麻たんはというと、響子さんが買って来たドッグフード君と格闘していますが、ともあれ。
「……なるほど、なるほど。じゃあスランプではなかったということですね! ありがとうございます、皆さん!」
月子さんも元気になり、懐から出した黒のフードを被って変質者になります。
「早速水晶玉を作って来ます! お礼は改めて。それでは! ……あ、フォーチュンちゃんもまた!」
そしてそのまま気分ルンルンで別れを告げ、すごい勢いで相談所を出て——、
「…………あ、濡れた」
猛烈な勢いの雨に打たれ、再び舞い戻って来ました。
1匹目のマスコット
なまえ :胡麻たん
ねんれい:3歳くらい
たちば :マスコット、お犬さん
しゅみ :ツッコミ
すき :梅ちゃんのツッコミ、ココアを飲んでいる時の咲ちゃんの表情、響子さんのあらあら
きらい :変な名前で呼ばれること
みため :胡麻色の毛並みをした柴犬。
変な名前で呼ばれた時はジト目をしたり、肩をすくめる。
ひとこと:——わおん!




