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第7話 ファイア

 合格発表から一か月後。


 リーゼは大きな荷物を抱えて王都へやって来ていた。


 ついに入学の日である。


「本当に行ってしまうのか……」


 ガイアスが寂しそうに呟く。


「入学式ですから」


「まだ間に合うぞ?」


「何がですか」


「実家から通うという選択肢も」


「片道何日かかると思っているんですか」


 リーゼは呆れた。


 隣ではルークが笑いを堪えている。


 結局ガイアスは寮の前まで付いてきた。


 そして。


「困ったら帰って来い」


「帰りません」


「お金が足りなくなったら」


「仕送りをお願いします」


「任せろ!」


 元気になった。


 単純だった。


 荷物を部屋へ運び終えると、リーゼは入学式へ向かった。


 大講堂には新入生達が集まっている。


 百人以上はいるだろう。


 学院長の長い話が終わる。


 そして。


「新入生には初級魔法のスキルブックを一冊支給する」


 会場がざわついた。


 リーゼの目が輝く。


 来た。


 ついに来た。


 職員達が本を運んでくる。


【ファイア】


【ウォーター】


【ウィンド】


【アースバレット】


 リーゼは立ち上がりそうになった。


「落ち着け」


 近くの教師に言われる。


「申し訳ありません」


 だが心は落ち着いていなかった。


 自分の番が来る。


「どれにしますか?」


「ファイアです」


 即答だった。


「まだ説明の途中ですが」


「ファイアです」


 教師が苦笑した。


 リーゼは堂々とスキルブックを受け取る。


 炎。


 大魔法使い。


 格好いい。


 やはり火属性である。


 本を開く。


 淡い光が体へ吸い込まれた。


【ファイアを習得しました】


「おお……」


 思わず声が漏れる。


 本当に覚えた。


 魔法を。


 これで自分も立派な魔法使いだ。


 たぶん。


 その後。


 新入生はクラスごとに分けられた。


 リーゼは第一クラスだった。


 教室へ入る。


 空いている席へ座ると、隣の少女が微笑んだ。


「よろしくお願いしますわ」


 美しい金髪。


 整った所作。


 完璧なお嬢様だった。


「クラリス・フォン・アルヴェルトですわ」


「リーゼ・アークライトです」


 挨拶を返す。


 そして思う。


(本物ですわ……)


 自分も丁寧な言葉遣いではある。


 だが何かが違う。


 本物の貴族感があった。


 その前の席から声がする。


「私はミーナ。よろしくね」


 明るそうな少女だった。


「よろしくお願いします」


 さらに後ろから。


「カイルだ」


 爽やかな男子生徒。


 女子達が少しざわついている。


(顔が良いですわね)


 正直な感想だった。


 最後に大柄な少年が振り返る。


「ゴードンだ」


 とにかく大きかった。


 腕も太い。


 どう見ても戦士向きである。


「よろしくお願いします」


「おう」


 こうして学院で最初の知り合いができた。


 その時、教師が教室へ入ってくる。


「明日は歓迎実習を行う」


 教室がざわついた。


「学院近くの森へ向かう」


「実習ですの?」


 リーゼが聞く。


「ああ」


 教師は頷いた。


「実際にモンスターを見て、魔法を使ってもらう」


 リーゼの目が輝いた。


 実戦。


 つまり。


 魔法使いらしいことができる。


「楽しみですわ」


 リーゼは笑った。


 クラリスも頷く。


「わたくしもですわ」


 ミーナも笑う。


「ちょっと緊張するけどね」


 カイルは肩を竦めた。


「まあ何とかなるだろ」


 ゴードンも頷く。


「弱いモンスターらしいしな」


 皆、期待と不安を抱いていた。


 もちろんリーゼも同じだった。


 だが今は不安より楽しみの方が大きい。


 ファイアも覚えた。


 友達もできた。


 学院生活も始まった。


 大魔法使いへの道は順調そのものだった。

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