第31話 霧の森
数日後。
リーゼ達は霧の森へ来ていた。
夏休み課題。
魔物の生態調査である。
森の中は薄暗かった。
名前の通り薄い霧も出ている。
「少し不気味ですわね」
クラリスが周囲を見回す。
「油断するなよ」
カイルが言う。
ルークも同行していた。
課題ではないが、危険な場所だと聞いて手伝いに来てくれたのだ。
「ありがとうですわ」
リーゼがお礼を言う。
「気にするな」
ルークが答えた。
「どうせ心配だったんだろ?」
ミーナが笑う。
「違う」
「そういうことにしておきますわ」
リーゼが微笑んだ。
しばらく歩く。
すると。
草むらが揺れた。
「来ますわ!」
クラリスが叫ぶ。
飛び出してきたのは。
大蛇だった。
「毒蛇ですわ!」
全員が構える。
蛇は一直線に走る。
そして。
当然のように。
リーゼへ向かった。
「そうですわよね」
リーゼは落ち着いていた。
昔なら叫んでいた。
だが。
今は違う。
少し慣れてしまった。
ガブッ!
蛇が噛み付く。
「痛いですわ」
リーゼは盾で殴った。
ドゴン!
毒蛇が吹き飛ぶ。
壁に激突。
動かなくなった。
沈黙。
「また盾で倒したな」
ルークが言う。
「偶然ですわ」
リーゼが答える。
その時だった。
腕に違和感があった。
「毒ですわね」
リーゼが呟く。
だが。
前回ほど酷くない。
少し気持ち悪い程度だった。
「どうですの?」
クラリスが聞く。
「平気ですわ」
リーゼは腕を見る。
少し痺れている。
だが動く。
普通に動く。
「状態異常耐性ですわね」
ルークが言った。
「便利ですわ」
リーゼも頷く。
そして。
少し間を置いて。
「どうせ防御ですわ」
全員が吹き出した。
完全に受け入れていた。
その後も調査は続く。
毒蛇。
マンドラゴラ。
フォレストウルフ。
順調に記録していく。
そして。
昼過ぎ。
少し開けた場所へ出た。
「綺麗ですわね」
ミーナが呟く。
花畑だった。
霧の森とは思えないほど美しい。
「休憩にしましょう」
クラリスが言う。
全員賛成だった。
その時だった。
ふわり。
甘い香りが漂う。
「いい匂いですわ」
リーゼが言う。
しかし。
ルークの顔色が変わった。
「待て」
「なんですの?」
「吸うな」
遅かった。
全員吸っていた。
沈黙。
「……眠いですわ」
ミーナが言う。
「私もですわ」
クラリスもふらつく。
「睡眠花だ!」
ルークが叫んだ。
全員慌てる。
しかし。
リーゼだけ平然としていた。
「リーゼ?」
ミーナが聞く。
「なんですの?」
「眠くないの?」
「少しだけですわ」
沈黙。
「少しだけ?」
「少しだけですわ」
ルークが頭を抱える。
「状態異常耐性か……」
リーゼは頷いた。
「便利ですわね」
そして。
少し間を置いて。
「どうせ防御ですわ」
また全員が吹き出した。
その時だった。
リーゼの体が光り始める。
「あら」
見覚えしかない光だった。
【レベルが12になりました】
全員の視線が集まる。
リーゼは落ち着いていた。
【VIT+20】
「知ってましたわ」
現在VIT225。
もう誰も驚かない。
そして。
新しい文字が浮かぶ。
【ダメージ軽減を習得しました】
沈黙。
全員がリーゼを見る。
リーゼも説明を見る。
【ダメージ軽減】
受けるダメージを減少させる
沈黙。
昔なら叫んでいた。
だが。
リーゼは静かだった。
「リーゼ?」
クラリスが聞く。
リーゼは遠い目をした。
そして。
「そうですわね」
ぽつりと呟く。
「わたくし」
少し空を見上げる。
「本当にタンクなのかもしれませんわ」
全員固まった。
ルークが震えながら言う。
「重症だな」
リーゼは静かに微笑んだ。
「もう諦めましたわ」
その日。
リーゼの魂は少しだけタンクへ近付いた。




