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第30話 夏休みの課題

 ダンジョンから戻った翌日。


 リーゼ達は魔法学院へ呼び出されていた。


「夏休みなのに学院ですわ」


 リーゼが言う。


「課題だからですわね」


 クラリスが苦笑した。


 教師が教壇へ立つ。


「夏休み課題について説明する」


 全員が真面目な顔になる。


「内容は魔物の生態調査だ」


 リーゼは頷いた。


 ようやく魔法学院らしい課題だった。


「調査対象は自由」


 教師が続ける。


「ただし未調査区域を含めること」


 なるほど。


 既知の情報を書き写すだけでは意味がない。


 自分達で調べろということらしい。


「面白そうですわね」


 クラリスが微笑む。


 教師は黒板へ地図を書く。


 王都周辺の簡易地図だった。


「候補は色々ある」


 そして。


 ダンジョン。


 北の草原。


 霧の森。


 廃鉱山。


 名前が並ぶ。


 説明が終わった後。


 班ごとに相談が始まった。


「まずダンジョンは決まりですわね」


 ミーナが言う。


「もう第三層まで行ってますもの」


 クラリスも頷いた。


「資料もありますわ」


 カイルが地図を見る。


「あと二か所だな」


 ゴードンも覗き込む。


 しばらく相談する。


 そして。


「霧の森はどうです?」


 クラリスが言った。


「毒蛇やマンドラゴラがいるらしいですわ」


「面白そうですわね」


 リーゼも頷く。


 さらに。


「廃鉱山も行きたいな」


 カイルが言う。


「ゴーレムが出るらしい」


 リーゼは少し嫌な予感がした。


「岩ですの?」


「岩だな」


 カイルが頷く。


 リーゼは天井を見上げた。


 最近こういう展開が多い。


「では」


 クラリスがまとめる。


「ダンジョン、霧の森、廃鉱山で」


 全員賛成だった。


 教師へ提出する。


「良い選択だ」


 教師は頷いた。


「無理はするなよ」


「はい!」


 全員が返事をする。


 そして解散となった。


 その後。


 リーゼ達は冒険者ギルドへ向かっていた。


 課題のためには情報収集も必要だからだ。


 ギルドへ入る。


 すると。


「リーゼ?」


 聞き覚えのある声がした。


「ルーク!」


 騎士学校の制服姿だった。


「久しぶりだな」


「昨日会いましたわ」


「そうだったな」


 ルークが苦笑する。


 するとミーナが言った。


「夏休み課題が出たんだ」


「課題?」


 ルークが首を傾げる。


 クラリスが説明する。


「魔物の生態調査ですわ」


「へぇ」


 ルークは感心した。


「どこへ行くんだ?」


「霧の森と廃鉱山ですわ」


 リーゼが答える。


 すると。


 ルークが固まった。


「霧の森?」


「そうですわ」


「毒蛇いるぞ」


「そうらしいですわね」


 リーゼは平然としていた。


 さらに。


「廃鉱山?」


「そうですわ」


「ゴーレムいるぞ」


「そうらしいですわね」


 やはり平然としている。


 ルークは眉をひそめた。


「大丈夫か?」


「たぶん」


 リーゼは答えた。


「状態異常耐性ありますもの」


「そうだったな」


 ルークが遠い目になる。


 すると近くにいたベテラン冒険者が会話を聞いていた。


「霧の森か」


「はい」


 クラリスが頷く。


「学生には少し危険だぞ」


「そうなんですの?」


 リーゼが聞く。


 男は頷く。


「だが」


 そこで。


 リーゼを見る。


 嫌な予感しかしなかった。


「そのタンクがいるなら大丈夫か」


 沈黙。


 クラリス達がリーゼを見る。


 ルークも見る。


 リーゼも空を見た。


「リーゼ?」


 ミーナが聞く。


「なんですの?」


「何も言わないの?」


 リーゼは少し考えた。


 そして。


 遠い目をした。


「もう諦めましたわ」


 沈黙。


 全員固まった。


 ルークが吹き出す。


「本当に折れたな」


 リーゼは静かに微笑んだ。


「どうせ次も防御ですわ」


 その姿はどこか達観していた。


 その日。


 リーゼは初めて。


 反論しなかった。

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