第29話 変異種
「また防御ですのーーーーーー!!」
リーゼの悲鳴が第三層へ響く。
しかし。
変異種ホーンウルフは待ってくれない。
巨大な体で飛び掛かってきた。
「来ますわ!」
クラリスが叫ぶ。
リーゼは慌てて盾を構えた。
ドゴォン!
変異種の体当たりが直撃する。
普通なら吹き飛ぶ。
だが。
「重いですわね」
リーゼは一歩下がっただけだった。
沈黙。
変異種ホーンウルフまで固まっている。
「今驚かれましたわ?」
リーゼが聞く。
「たぶんな」
ルークが答えた。
変異種が再び唸る。
そして。
今度はルークへ向かった。
「ルーク!」
クラリスが叫ぶ。
だが。
その瞬間。
シュン!
「またですの!?」
リーゼが飛んだ。
完全に自動だった。
ルークの前へ出る。
ガブッ!
鋭い牙が肩へ食い込む。
「痛いですわ!」
リーゼが叫ぶ。
しかし。
変異種の方が驚いていた。
牙がほとんど通っていない。
「なんでだ!?」
ルークが叫ぶ。
「わたくしも知りませんわ!」
リーゼも叫ぶ。
その隙だった。
「ファイア!」
クラリス。
「ウォーターボール!」
ミーナ。
「ウィンドカッター!」
カイル。
魔法が次々命中する。
さらに。
「おおおお!」
ゴードンの一撃。
最後は。
「シールドバッシュですわ!」
ドゴォォン!
変異種ホーンウルフが壁へ吹き飛んだ。
そして。
静かになる。
討伐成功だった。
「倒しましたわ!」
リーゼが喜ぶ。
しかし。
全員の視線が痛かった。
「なんですの?」
リーゼが聞く。
ルークが真顔だった。
「リーゼ」
「なんですの?」
「お前本当に魔法学院だよな?」
リーゼは天を仰いだ。
「そうですわーーー!!」
その時だった。
広場の奥で何かが光る。
「宝箱?」
ミーナが目を輝かせる。
全員が近付いた。
本当に宝箱だった。
「初めて見ましたわ」
クラリスも嬉しそうだった。
リーゼは慎重に開ける。
中には。
一冊の本が入っていた。
「スキルブックですわ!」
全員が驚く。
初心者ダンジョンでは珍しい。
リーゼは本を手に取った。
そして。
タイトルを見た。
固まった。
「どうした?」
ルークが聞く。
リーゼは震える声で答えた。
「防御」
沈黙。
「防御?」
「防御ですわ」
全員が嫌な予感を覚えた。
リーゼは本を開く。
そして。
文字が光った。
【プロボックを習得しました】
沈黙。
「なんですの?」
リーゼが聞く。
説明を見る。
【プロボック】
周囲の敵を強制的に自分へ引き付ける
沈黙。
全員が顔を見合わせる。
「……」
「……」
「……」
「……」
リーゼは震えていた。
「またですの?」
ルークが肩を叩く。
「まただな」
カイルも頷く。
「またですわね」
クラリスも頷く。
「まただね」
ミーナも頷く。
「まただ」
ゴードンも頷く。
リーゼは膝から崩れ落ちた。
「もう嫌ですわーーーーーー!!」
第三層に絶叫が響いた。
その日。
リーゼは人生で初めて。
宝箱を開けたことを後悔した。




