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第3話 条件

「まだ決まってないからな!?」


 ガイアスの叫び声が店内に響いた。


 リーゼは平然としている。


「決まっております」


「決まってない!」


「決まっております」


「決まってない!」


 早速言い争いが始まった。


 ルークは少し離れた場所で眺めている。


 巻き込まれたくないからだ。


「そもそもだな!」


 ガイアスはリーゼを指差した。


「王都は危険だ!」


「王都です」


「人が多い!」


「町ですから」


「知らない男も多い!」


「お父様は知らない男を何だと思っているんですか」


「信用するな!」


「極端です!」


 話にならない。


 リーゼは頭を抱えた。


 なぜ王都へ行くだけでここまで反対されるのだろう。


 魔法学院は王国最高峰の教育機関だ。


 むしろ行かせたがる親の方が多いはずである。


「お父様」


「なんだ」


「魔法学院ですよ?」


「だからなんだ」


「名門ですよ?」


「だからなんだ」


「将来有望ですよ?」


「家から遠い」


 駄目だった。


 会話にならない。


 リーゼは母へ視線を向けた。


 エレノアは優雅にお茶を飲んでいる。


「お母様」


「なあに?」


「何か言ってください」


「そうねぇ」


 エレノアは少し考える。


 そして。


「リーゼが行きたいなら挑戦してみれば?」


 あっさり言った。


「エレノア!?」


 ガイアスが叫ぶ。


「だって本人の人生でしょう?」


「そうだが!」


「まだ合格するかも分からないし」


「それはそうだが!」


 ガイアスが苦しそうな顔になる。


 リーゼは勝利を確信した。


「ほら」


「まだだ!」


 ガイアスは諦めなかった。


「条件がある!」


「条件ですか?」


「ああ!」


 ガイアスは腕を組む。


 そして真剣な顔になった。


「一人では駄目だ」


「はい?」


「知り合いが一緒なら考える」


 リーゼは首を傾げた。


 王都へ行く知り合いなどいるだろうか。


 その時だった。


「俺なら行くぞ」


 ルークが手を挙げた。


 全員の視線が集まる。


「え?」


 リーゼは固まった。


「お前も王都へ行くのか?」


 ガイアスが聞く。


「騎士学校受ける予定だったし」


 ルークは肩を竦めた。


「王都の方が強くなれそうだろ」


「そうなのか!?」


 ガイアスの顔が明るくなる。


「まあな」


「本当か!?」


「本当だ」


「そうか!」


 さっきまでの反対はどこへ行ったのか。


 ガイアスは何度も頷いている。


 リーゼは呆れた。


「ちょっと待ってください」


「なんだ?」


「なぜそんなに嬉しそうなんですか」


「ルークがいるからな!」


「意味が分かりません」


「困ったら助けてくれるだろう!」


 ルークは苦笑した。


「まあ、近くにいたらな」


「頼んだぞ!」


「まだ受かるかも分からないんだけど」


「頼んだぞ!」


 聞いていない。


 完全に聞いていない。


 リーゼは額を押さえた。


「わたくし一人でも大丈夫です」


「大丈夫じゃない」


「大丈夫です」


「大丈夫じゃない」


「大丈夫です!」


「ルーク!」


「なんでそこでルークなんですか!?」


 リーゼの叫びが響いた。


 エレノアは楽しそうに微笑んでいる。


 そしてルークも少し笑っていた。


 どうやら味方はいないらしい。


 だが。


 王都への道は確実に近付いていた。


 リーゼは拳を握る。


 魔法学院。


 大魔法使い。


 そして自由な一人暮らし。


 絶対に手に入れてみせる。


 もちろん。


 入学試験のことは、まだ全く考えていなかった。

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