第2話 当たりスキルですわよね?
神殿を出ると、ルークが待っていた。
「終わったか」
「終わりました」
「で、どんなスキルだった?」
リーゼは胸を張った。
「二十倍で成長するスキルです」
「二十倍?」
「二十倍です」
「それは凄そうだな」
ルークは素直に頷いた。
リーゼも満足そうに頷く。
そうなのだ。
凄そうなのだ。
「ですわよね?」
「まあ、そうだな」
「当たりスキルですわよね?」
「かもしれないな」
リーゼの表情が明るくなる。
やはりそうだ。
普通に考えれば当たりスキルである。
「ただ」
ルークが言った。
「説明文の続きは分からないんだろ?」
「そこは些細な問題です」
「些細か?」
「二十倍ですのよ?」
「便利な言葉だな、それ」
ルークは苦笑した。
だがリーゼは気にしない。
当たりスキル。
レアスキル。
王都。
魔法学院。
未来は明るい。
「決めました」
「何を?」
「王都へ行きます」
「早いな」
「早くありません」
「入学試験あるだろ」
「受かります」
「まだ魔法系スキルかも分からないぞ」
「二十倍です」
「会話にならないな」
ルークは呆れた。
リーゼは満面の笑みを浮かべる。
王都の魔法学院。
寮生活。
一人暮らし。
そして。
父親のいない生活。
最高だった。
「顔に出てるぞ」
「何がですか?」
「おじさんから逃げたいって」
「気のせいです」
少しだけ本当だった。
家が見えてくる。
その瞬間。
「リーゼーーー!!」
大声が響いた。
ガイアスである。
店の前で待ち構えていた。
「お帰り!」
「ただいま戻りました」
「どうだった!?」
「スキルですか?」
「それ以外に何がある!」
リーゼは咳払いした。
そして胸を張る。
「二十倍で成長するスキルです」
「おおっ!?」
ガイアスの目が見開かれる。
「本当か!?」
「説明文に書いてありました」
「凄いじゃないか!」
ルークも頷いた。
やはりそうなのだ。
凄いのだ。
リーゼはさらに胸を張った。
「スキル名はX-Twentyです」
「聞いたことないな」
「神官様も知りませんでした」
「レアスキルか!」
「その可能性が高いです」
ガイアスは感動した顔になる。
「さすが俺の娘だ!」
「当然です」
リーゼは満足そうに頷いた。
するとルークがぼそりと言う。
「説明文は途中で切れてたけどな」
ガイアスが固まる。
「……途中で?」
「途中でです」
「どういうことだ?」
「文字数オーバーだそうです」
「なんだそれ!?」
ガイアスが叫んだ。
リーゼも同意見だった。
「わたくしもそう思います」
二人は力強く頷き合った。
そして。
リーゼは改めて宣言する。
「お父様」
「なんだ?」
「わたくし、王都の魔法学院へ進学します」
ガイアスが固まった。
「……今なんて?」
「王都の魔法学院へ進学します」
「駄目だ」
即答だった。
「なぜですか!?」
「危険だからだ!」
「王都です!」
「知らない男がいっぱいいる!」
「町にもおります!」
「同じじゃない!」
店の前で親子喧嘩が始まる。
ルークは少し離れた。
巻き込まれたくない。
「わたくしは行きます!」
「行かせん!」
「行きます!」
「行かせん!」
二人が睨み合っていると。
「あなた」
店の中からエレノアの声が聞こえた。
「はい」
ガイアスは黙った。
リーゼは勝利を確信する。
「というわけで王都へ行きます」
「まだ決まってないからな!?」
ガイアスの叫びが町に響いた。
だがリーゼの頭の中は既に魔法学院でいっぱいだった。
入学試験のことなど、まだ何も考えていなかった。




