第21話 かばう
オーク討伐は予想外の成果だった。
初心者が倒す相手ではない。
だが倒してしまった。
そして。
オークが倒れた瞬間。
リーゼの体が光に包まれる。
「あっ」
見覚えしかない光だった。
【レベルが7になりました】
全員の視線が集まる。
リーゼは嫌な予感しかしなかった。
【VIT+20】
「ですよね」
もはや驚かなかった。
少し慣れてしまっている自分が悲しい。
現在のVITは125。
もはや考えたくなかった。
さらに文字が浮かぶ。
【かばうを習得しました】
「…………」
リーゼは固まった。
ルークが首を傾げる。
「どうした?」
「新しいスキルですわ」
「おお」
「かばうですわ」
沈黙。
「かばう?」
「かばうですわ」
全員が嫌な顔をした。
非常に嫌な顔だった。
リーゼも同じ顔だった。
説明を確認する。
【かばう】
パーティメンバーが攻撃された際、自動的に庇うことがある
「自動?」
ミーナが聞く。
「自動ですわ」
「勝手に?」
カイルが聞く。
「勝手にですわ」
「嫌だな」
「嫌ですわ」
全員の意見が一致した。
その後。
ギルドへ戻る。
受付へオークの牙と肉を提出した瞬間だった。
「オークですか?」
受付嬢が固まった。
「オークですわ」
リーゼは頷く。
受付嬢は牙を見る。
リーゼ達を見る。
もう一度牙を見る。
「学生ですよね?」
「学生ですわ」
「どうやって?」
全員の視線がリーゼへ向く。
「なんでですの?」
リーゼは抗議した。
だが誰も逸らさない。
ルークまで見ている。
「リーゼだから」
ミーナが言った。
「リーゼですわね」
クラリスも頷く。
「リーゼだな」
ゴードンも頷く。
「リーゼだ」
ルークまで頷いた。
「説明になっておりませんわ!」
リーゼは叫んだ。
すると受付嬢が真面目な顔になる。
「怪我はありませんか?」
「ありませんわ」
「オークですよ?」
「そうですわね」
「棍棒ですよ?」
「そうですわね」
「本当に?」
「本当ですわ」
受付嬢は頭を抱えた。
近くにいたベテラン冒険者まで寄ってくる。
「嬢ちゃんが受けたのか?」
「受けましたわ」
「無傷?」
「ほぼ無傷ですわ」
ベテランは固まった。
「なんで?」
「わたくしも知りたいですわ」
リーゼは遠い目をした。
その後も質問攻めだった。
ようやく解放された頃には夕方になっていた。
「疲れましたわ」
「有名人だな」
カイルが笑う。
「嬉しくありませんわ」
リーゼは即答した。
するとクラリスが依頼書を一枚持ってくる。
「もう一件だけ行きません?」
ホーンウルフ討伐。
近場の依頼だった。
「行きますわ」
リーゼは即答した。
魔法の練習がしたい。
それだけだった。
森へ入る。
しばらく歩くとホーンウルフが現れた。
二匹。
「任せてくださいまし!」
リーゼは杖を構える。
「ファイア!」
火球が飛ぶ。
一匹へ命中。
だが倒し切れない。
ホーンウルフが走る。
狙いは。
クラリスだった。
「来ますわ!」
クラリスが杖を構える。
その瞬間だった。
リーゼの体が勝手に動いた。
「え?」
自分でも分からない。
気付けば。
クラリスの前へ立っていた。
「え?」
クラリスも固まる。
ガブッ!
ホーンウルフがリーゼへ噛み付く。
「痛いですわ!」
リーゼが叫ぶ。
だが。
少し痛いだけだった。
「どういうことですの?」
リーゼは混乱する。
すると目の前に文字が浮かんだ。
【かばうが発動しました】
「…………」
リーゼは固まった。
「どうした?」
ルークが聞く。
リーゼは震える声で答えた。
「かばうですわ」
「ああ」
「発動しましたわ」
「ああ」
「勝手にですわ」
「ああ」
ルークは頷いた。
リーゼは天を仰ぐ。
「勝手に飛び出しましたわーーー!!」
森に悲鳴が響く。
その隙に残りのホーンウルフも倒された。
戦闘終了。
そして。
リーゼの体が再び光る。
「またですの?」
【レベルが8になりました】
全員が見守る。
リーゼは諦めた顔だった。
【VIT+20】
「ですよね」
現在VIT145。
もう笑うしかなかった。
ルークが肩を叩く。
「頑張れ」
「何をですの?」
「タンク」
「魔法ですわーーーーーー!!」




