第18話 夏休み
一学期が終わった。
生徒達は荷物をまとめている。
「帰省ですわね」
クラリスが言う。
「そうだな」
カイルが頷く。
夏休みである。
実家へ帰る生徒も多い。
そんな中。
リーゼは腕を組んでいた。
「帰りませんわ」
即答だった。
全員がリーゼを見る。
「帰らないの?」
ミーナが聞く。
「帰りませんわ」
「なんで?」
リーゼは遠い目をした。
「防御部門一位でしたもの」
沈黙。
全員納得した。
「なるほど」
「なるほどですわ」
「それは帰りにくいな」
「だな」
味方しかいなかった。
いや違う。
味方ではなかった。
理由を理解されているだけだった。
「お父様が喜びそうですわ」
リーゼは頭を抱えた。
想像できる。
『前衛として才能があるな!』
絶対言う。
間違いなく言う。
「帰りませんわ」
改めて宣言した。
その時だった。
「じゃあ」
クラリスが微笑む。
「わたくしも残りますわ」
「え?」
「魔法の勉強がありますもの」
ミーナも頷く。
「私も残ろうかな」
「わたくしもですの?」
「討伐の練習したいし」
カイルも肩を竦める。
「暇だから残る」
ゴードンも頷いた。
「訓練する」
結果。
全員残ることになった。
「なんですのこれ」
リーゼは首を傾げた。
夏休みなのにいつも通りだった。
そして翌日。
リーゼ達は王都の冒険者ギルドへ来ていた。
「おお……」
リーゼは目を輝かせる。
冒険者達が行き交う。
依頼掲示板。
受付。
全てが新鮮だった。
「登録しますわ!」
やる気満々である。
その時だった。
「リーゼ?」
聞き覚えのある声がした。
振り返る。
そこには。
「ルーク!」
幼なじみだった。
騎士学校の制服を着ている。
「久しぶりだな」
「久しぶりですわ!」
二人は再会を喜んだ。
ルークは苦笑する。
「魔法学院どうだ?」
「順調ですわ」
リーゼは胸を張った。
「筆記一位でしたもの」
「へぇ」
「班も一位ですわ」
「凄いな」
ルークは素直に感心した。
そして。
視線が下へ移動する。
盾だった。
数秒の沈黙。
「なんで盾持ってるの?」
リーゼは固まった。
聞かれたくなかった。
一番聞かれたくなかった。
「聞かないでくださいまし」
「いや気になるだろ」
「気にしないでくださいまし」
「無理だろ」
正論だった。
するとミーナが口を開く。
「シールドバッシュ覚えたんだよ」
ルークが固まる。
「シールドバッシュ?」
「そうですわ」
クラリスが頷く。
ルークはリーゼを見る。
盾を見る。
もう一度リーゼを見る。
「魔法学院だよな?」
「そうですわ!」
リーゼは元気よく答えた。
「火属性だよな?」
「そうですわ!」
「なんでシールドバッシュ?」
リーゼは天を仰いだ。
「わたくしも知りたいですわーーー!!」
ギルドに悲鳴が響いた。
受付嬢が吹き出していた。




