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第16話 盾

 翌日。


 リーゼは朝から呼び出されていた。


 場所は学院の倉庫。


「なんですの?」


 目の前には教師がいる。


 非常に嫌な予感がした。


「これだ」


 教師が指差す。


 壁に立て掛けられた盾だった。


 丸い鉄の盾。


 決して豪華ではない。


 だが実用品としては十分な物だった。


 リーゼは嫌な予感が確信へ変わった。


「まさか」


「やる」


 即答だった。


「いりませんわ」


 即答した。


「持っていけ」


「いりませんわ」


「シールドバッシュだぞ」


「覚えましたわ」


「なら必要だな」


「必要ありませんわ!」


 教師は深いため息を吐いた。


「リーゼ」


「なんですの?」


「シールドバッシュとは何だ?」


 リーゼは黙った。


 知らない。


 名前で何となく分かるが認めたくない。


「盾を使う技だな」


「聞きたくありませんわ」


「盾が必要だな」


「聞きたくありませんわ!」


 教師は盾を持ち上げた。


 そして。


 リーゼへ押し付けた。


「はい」


「はいではありませんわ!」


 ずしりと重い。


 リーゼは泣きそうになった。


 魔法学院へ入学したはずだった。


 なぜ盾を持っているのだろう。


「似合うな」


 教師が言った。


「似合いませんわ」


「そうか?」


「そうですわ」


 その時だった。


「おはようございます」


 クラリス達がやって来た。


 そして。


 全員が止まる。


「……」


「……」


「……」


「……」


 嫌な予感しかしなかった。


 最初に口を開いたのはミーナだった。


「似合うね」


「似合いませんわ!」


 即座に否定する。


 だが。


 カイルも頷いた。


「意外と似合うな」


「似合いませんわ!」


 ゴードンも頷く。


「良い盾だ」


「そこではありませんわ!」


 クラリスまで微笑む。


「素敵ですわ」


「クラリスさんまでーーー!!」


 誰も味方してくれなかった。


 本当にしてくれなかった。


 教師は満足そうに頷く。


「よし」


「よくありませんわ」


「試してみるか」


 盾を構えさせられる。


 リーゼは嫌々従った。


「シールドバッシュを意識しろ」


「嫌ですわ」


「やれ」


「嫌ですわ」


「やれ」


 逃げられなかった。


 リーゼは盾を前へ突き出す。


 その瞬間。


 体が熱くなった。


「え?」


 盾が淡く光る。


 次の瞬間。


 ドゴン!


 訓練用の木人形が吹き飛んだ。


 数メートル先まで転がる。


 沈黙。


「…………」


「…………」


「…………」


 リーゼは固まった。


 クラリス達も固まった。


 教師だけが満足そうだった。


「使えたな」


「使えましたわね」


「強いな」


「強いですわね」


「才能あるぞ」


「やめてくださいまし」


 リーゼは真顔だった。


 教師は笑っている。


 最悪だった。


 その時。


 クラリスがぽつりと言った。


「リーゼさん」


「なんですの?」


「本当に魔法使いになりたいんですの?」


 リーゼは即答した。


「当然ですわ!」


 すると。


 ミーナが肩を叩く。


「頑張れ」


「何をですの?」


「魔法」


 カイルも頷く。


「応援してる」


「だから何をですの?」


 ゴードンまで頷いた。


「諦めるな」


「だから何をですのーーー!!」


 リーゼの悲鳴が倉庫に響き渡った。

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